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カテゴリ:親不知
せんだって、大学病院内の口腔外科に1回目の通院をし、手術の説明を受けた。
病院に行く2回目は、もう親知らずの抜歯手術だ。 予約の時間というよりも指定の時間なので、診察券を出したらすぐに呼び出された。もう少し、覚悟を固める時間が欲しいものだ。 手術の助手らしい女の子に下顎智歯抜歯同意書を渡し、拷問器具に座る。 そこにはすでに局部麻酔用の注射器やメスなどが用意されていた。 歯医者の注射器は、ふつうにイメージする物と違って、針が曲がってついていたり、シリンダーを押すところに親指を入れる穴が開いてたりと、少しばかり凶々しいデザインになっている。医療器具に装飾性は無いので、完全に機能に由来したかたちなのだ。 機能美という言葉がある。道具のカタチは使う目的を示し、それが純粋であるほど美しい。 この注射器のカタチから受ける印象は、苦痛そのもの。 苦痛というタイトルの現代美術オブジェである。 白髪の担当医師は、あいさつもそこそこに注射器を手にとった。 親知らずの抜歯はわりと大きなオペレーションだと思っていたので、もっといろいろ話すことがあったり、確認作業があったりするものと思っていたが、まるで朝飯前といった感じで始まってしまうようだ。場所も普通の歯科にある拷問器具の椅子だし、すこし拍子抜けする。 歯ぐきの何回かに分けて麻酔を注射されると、じんわりと感覚が遠ざかる。 麻酔の効きを待つ時間があって、白髪の医師が笑顔で戻ってきた。 この笑顔が誰かに似ていると思っていたが、この時に思い出した。 映画『リトルショップオブホラーズ』のスティーブ・マーティンだ。 患者に苦痛を与えることを悦びとし、歌いながら施術する、サディスト歯科医の役だ。 その事実に気が遠くなる。 拷問器具に仰向けに寝かされた私の視界に、輝くメスが現われた。 イヤなモノを見た。 私は目を閉じた。 歯科医の歌う「coz I'm a dentist」が聞こえてきた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.09.03 15:49:52
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