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カテゴリ:Japanese Music
この夏は長い間、実家の青森市で過ごした。
やることもないのでロックバーを飲み歩く日々だったが、いい話があったので。 ROCK BAR ATORANで知り合ったベーシストのナミさんと青森駅前にあるTHEATER BEYONDという店に入り浸るようになった。この店はバーだが、ちょっとしたライブハウスの規模で、アンプ、ドラム、楽器が常備されており、バンド演奏を含め多目的に使用出来るというコンセプト。店主の計らいで、お客が少なければ勝手に楽器演奏しても大丈夫ってことで、僕とナミさんはギター&ペースで遊びまくっていた。楽器が出来るお客さんが来れば店のスタッフのような顔でセッションといったノリで。 ある日、店主から店に常備するエレクトリックギターを一本買ってきてと頼まれたので、ナミさんとリサイクルショップに行った。ナミさんが以前から目をつけていたギターがあるらしい。そのギターはバーニーの黒いレスポール・カスタムだった。値段も安く確かにカッコいい。薄くて軽いのもいい。で、試奏をしようとしたら、一人の少年がずっと我々を見ていることに気付いた。少年は申し訳なさそうに「あの~、そのギター買われるんですか?」と話しかけてきた。訳を訊くと、彼も以前からこのギターが欲しくて、しかしお金が無くバイトをしてお金を貯めている最中、毎日のように店に眺めに通っているのだという。まるで、ショーウインドウのトランペットを眺める後に有名になる黒人の少年といった話。 この話を聞いて心を打たれたナミさんはこう言った。「わかった、若い才能の芽を摘んじゃいかん!このギターはある店に頼まれて店用に我々が買う。でもバイト代が貯まったら、その店に来れば君に売ってあげるように話をつけてやる。そのときはまた新しいギターを買うから。」ナミさん、やるなあ。 我々はギターを買って、その足で少年を店に連れていった。店主に訳を話したら当然了承。店主は地元のサブカルチャーの発掘、活性化に真剣な男なのだ。ぜひとも、青森市のサブカル界のゴッドファーザーになって欲しいね。 我々はビールを注文し少年にはコーヒーを奢って、さっそくアンプに繋いで音出し。少年も嬉しそうに弾いていた。なんだ、ギターを始めて間もないとか言ってたけど全然弾けるじゃないか。将来有望、有名になったら我々のエピソードを語ってくれよ。 なお、後日談が。 その日、我々が帰った後、遅い時間に少年が父親と店にやってきたという。店主は一瞬、「息子を怪しいバーに連れてきやがって!」というクレームかと思ったらしいが、父親は店に興味を持って、しかもお礼を言いにきたそうだ。結局、父親も店が気に入って常連客になり、しばしば親子で店に来るようになった。少年の弟も参加するようになり、父親も数十年ぶりにギターを触り、先日は「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のリフを弾いていた。親子三人で楽器を弾いている姿は微笑ましい限り。 冬にはバイト代も貯まりギターは少年の手元に。また次のギターを買わないと。何買おうかな。 THEATER BEYOND 青森市新町1-8-2 新町藤田ビル3F 017-752-9541 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.10.10 20:25:01
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