栃木の仙人 古本と温泉の日記

2011/10/05(水)18:51

関曠野さんの大震災への考察

思想(9)

 あいづライナーです。必要があって三ヶ月に一度、会津若松へと行く機会があります。東山温泉の千代滝が常宿です。新撰組の土方歳三が傷を癒したといわれる良質の温泉宿。郷土料理もおいしい。ここへも時代状況を反映して福島原発の被災者の方たちが大勢避難されていました。本日の歌 サイボーグ009 戦い終わってサイボーグ009 「戦い終わって」 ED Full今聴いても格調の高い感動的なアニメソングの名曲であります。ちなみに最初のオープニングはこんな感じだった。これもすばらしい。サイボーグ009オープニング さて本日のテーマ大震災を経過して、大方の論者は、 日本回帰とも称すべき動きの渦中にあるようです。バブル期の、異様に自己肥大した日本でなく、国家と民族が黄昏れるかのようにして様々な宿痾が集約しつつあった時期、最後の止めを刺すかのようにして、千年に一度あるかないかといわれる未曾有の大震災が襲いかかってきた。日本の産業社会システムに関し、過去、批判的であった人たちも、念頭に想定していたのは、「ジヤパンアズナンバーワン」などに記述されたエコノミックアニマルとしての日本、第二次世界大戦で完敗したにもかかわらず、短期間で荒廃から立ち上がり叩いても踏んでも決して死なない、怪物めいた世界第二位の経済大国日本の姿であった。典型的な事例では、カレル・ウオルフレン氏のような論客でありまして基本は日本が好きであるが故、日本を批判する、批判することで、「人間を幸福にしない日本というシステム」の問題点・改善点を指摘し、日本型イエ社会の組織の重圧に呻吟するリーマン階級たちに闘いとリハビリの論拠を提出し社会を再生させようとしていた。同時に、社会の主流をなすシステムから弾き飛ばされた不運なアウトロー、満身創痍の異端者たちに、緊急避難場所として手作りからなる独自のアジールを提供していた。ダグラス・ラミス氏や関曠野氏などもその表層的言説ーーその辛辣な日本社会の産業組織システム・イエ社会批判とは裏腹に(注意深くじっくり読み込むと良く解るのですが) この流れであって、元々は日本が大好きな人たちでありました。しかし、最も手厳しい目の角度からなされ、徹底した批判的検証の濾過装置をくぐり抜け最後に生き残った「愛国心」「郷土愛」「自民族への郷愁的愛着」といった視線があったとしたならば、それこそが、最も信頼するに値する日本型ナショナリズムの創発的ヒントと言えるのかもしれません。とりわけ自衛隊に関しては、第二次世界大戦の悲惨な敗北という旧帝国陸海軍の歴史的教訓遺産から謙虚に学び取り、災害派遣をメインとした、国民と世界から尊敬される平和時の軍隊として「どうあるべきか」と共に「どうあってはならないか」を明晰に語りうる、権力に媚びない真の語り部が必要とされてくるのであります。その意味で関曠野氏の最近の言説は大震災以降の日本ーー日本人・日本国ーーの進路を考える上で多くの蓄積深い示唆に富んでおります。 関曠野著「フクシマ以降ーーエネルギー・通貨・主権ーー」 (青土社) ちなみに反原発の神様とまで言われた故高木仁三郎氏と関曠野氏との対談「科学の世紀末」が近々復刻されるそうです。今回の福島原発の事件のみならず高度に機械化された現代文明全般にわたる反省的考察に興味ある向きには必読。

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