岩絵具を作ろう! 練馬区立美術館
練馬区立美術館の主催で、「岩絵具を作ろう!」というワークショップが開催されました。 小学生対象で募集して、出かけてみれば、妙齢のご婦人方がメインという参加者。当然、語り口もそちらに合わせてのものとなりましたが、二人だけ参加の小学生も、「絵具」などという年齢にあまり左右されない内容で、しだいに楽しんでくれました。 「懸濁液」「水簸」「濾過」などというテキスト言葉に、担当の学芸員のお姉さんがルビをふり、脇で噛み砕いた説明を加えてくれたのも、おおいに役立ったことでしょう。 まず、現在当美術館で開催されている日本画家・高山辰雄展の会場を見学。 作品に近づいて、絵がどのようにできているかを観察しました。 次に、アズライト、マラカイトといった、日本画の岩絵具の代表的原料や、練馬の土を使って顔料作りです。 大学のように道具の揃っていない環境。でも、顔料なんてどんなことをしてでもできます。 金床がなければ、ハンマーを二つ使って鉱物を粉砕。 作業が始まると、年を忘れて夢中になれます。 できあがった岩絵具は、顕微鏡で観察。ひとつひとつの粒子が、ちいさな色として画面から語りかけてきます。高山辰雄先生の作品を直接顕微鏡で見たのと同じであることが判ると、自らの手で作り出した岩絵具が、とてもいとおしくなります。 午前中のには、一般論として顔料の講義をしました。 顔料がほぼできあがった午後には、絵具の元になる展色剤の話。午前と午後で、絵具に関する基礎的な概念を身につけました。 さあ、こんどは、ニカワを展色剤として、自分たちの手で作った岩絵具で作品作りです。 「わたしの岩絵具」が、ニカワ液を媒介に画面に次々と置かれ、イメージがしだいに出来上がってきます。やや、通常の絵具からすると粗い粒子も、独特の味になって画面に自らの存在を主張します。また、夢中になれる時間になりました。 展色剤の講義において触れた絵具の併用性ということから、テンペラなどへ興味を持った方が、下地から彩色技法などの質問。自分の行っている日本画という伝統的技法の範疇を広げるには、周辺の他の技法に目を向けることも大切であると感じてくれたのでしょう。 グローバル化は、国家間のみではなく、絵画表現においても可能な部分があります。 大人と小学生と、どちらに焦点を置くかで最初悩んだ今回のワークショップ。終わってみれば、どちらも「楽しかった」「役に立った」との感想。難しい専門用語も日本画のしきいの高さも関係ありません。 体験することが、理解を深めるこの世界。本という伝達手段ではなかなか伝わらない内容も、目の前でチョッとやってみせれば「なるほど」の納得。 工房における徒弟制度は、きっと優れた養成システムだったろうと、改めて考えさせられました。 ハンマーも画箱に添えて聞く講義