「Ｃａｓｔ ｏｆｆ　～小さな君のその手を抱きしめるために～」

「ねぇ、千蔵」

「何？」

「私そろそろ帰らないと旦那が帰ってくるから」

「そうか」

「もっと一緒にいたいけどゴメンね」

「しかたないよ。家庭は大切だから」

「シャワー借りるね」

そう言い残して彼女は裸のままシャワールームに姿を消した。

気怠さを友としてシーツの中で微睡みを１人楽しむ千蔵に

インターフォンがその微睡みをかき消した。

「はい。どちら様ですか？」

「あ・た・し」

「はぁ？あ・た・しを注文した覚えはありません。出前先を間違っていますよ」

「ひどい。あたしよ。浩子よ」

「へぇ？ねーちゃんか」

「久しぶりね。遊びにきちゃった」

おいおい。

なにもこんな時に遊びに来なくてもいいじゃない。

こっちは人妻さんと仲良くやっているのだから

てか、あらから何年経ったのよ？

その前にいきなり訪ねてくるのじゃなくてさ

事前に携帯鳴らしなよ。

そんな事が頭を駆け巡っている間にも浩子は入れてと言ってくる。

入れてやってもいいんだけどね。

もちろんおティンティンではありますが（笑）

そ～じゃなくて

今は人妻さんがシャワー浴びているし

こんなんでバッティングされてもバツが悪いし

てか、人妻さんに言い訳も出来ないよ。

彼女いないって言っていたからね。

いや、ホントに彼女いないんだけどね。

この状況なら下手に説明したらややこしい事になるよ。

でも、人妻さんとお付き合いしている訳でもないし

突然の訪問に懐かしいやら。。。

じゃなくて、なんとかしなくちゃと

ちょっとパニックになってました（笑）

こんな時は何て言ったらいいのやら

時計の針はいつもより早く進んでいる気がするし

もうまんまを伝えたらいいやとね。

もう開き直りですよ。

これで人妻さんとも終わりだなと覚悟しましたよ。

積極的な人妻さんで楽しかったのになと

感傷に浸る。。。

場合じゃないってね（笑）

「悪い。さっきまでＳＥＸしてたから３０分経ったらまた来てね」

じゃなくて

「悪い。取り込み中だから３０分経ったらまた来てね」

あまりにもバカ正直な言いように我ながら苦笑いですよ。

怒るんだろうなと思ったら

「３０分でいいのね。わかったは」

おろ。。。

拍子抜けです。

これが付き合っている当時なら

「なんで私が３０分も待たなくちゃいけないのよ」

とメチャメチャ怒って喧嘩になるところですよ。

３年の歳月は彼女を少し大人にさせたようです（笑）

とりあえずは人妻さんと彼女とのバッティングは

ギリギリのところで回避されました。

てかね。

人妻さんとも彼女とも付き合っていた訳じゃないから

こんなにあたふたする事はないんだよね。

後で気が付きました（笑）

すみません。

まだ続きます（笑）

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