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   悪夢






 オレが犯してしまったもう一つの禁忌。
 体を持って行かれるよりも、もっと辛い代価。

 後悔した。

 「死にたい」とも思った。


 …でも……

 もう逃れられない。


 オレが犯してしまった禁忌は、

 オレの大切な弟を傷つけてしまったから………



 「…鋼の。30分遅刻だぞ」
 「ゴメン…大佐……」
 今日は大佐とデートだ。
 前回の査定の時に約束した。
 アルにバレないように。
 …こーやって大佐と仕事以外で会うのは半年ぶりだった。
 「行こうか、鋼の」
 手を繋いで歩く。
 …温かい手……。
 アルと居る時には感じることの出来ない人の温もり。
 その温もりを全身で感じたい。
 「…………好き」
 ポツリと呟く。
 「…何か言ったか?」
 大佐はオレを見る。
 目が合い、顔が赤くなる。
 久しぶりに大佐と目が合った。
 「可愛いな、鋼のは」
 大佐はニッコリ笑う。
 やっぱり女性にモテるだけあって、大佐の笑顔は魅力的だった。


 「鋼の。覚えているかね。」
 オレ達は街外れの公園に来ていた。
 夜ということで殆ど人は居なく、辺りは静かだった。
 「……オレと大佐が初めてデートで来た場所だろ…?」
 「そうだ」
 大佐はオレの手を引っぱり、ベンチにオレを座らせた。
 「なぁ、鋼の」
 「ん?」
 「最近、アル君とはどうだ?」
 「…まぁ…ボチボチ……」
 「そうか…」
 何とも微妙な空気。
 ってか、何で大佐がアルのことを聞いてきたのか。
 それが疑問だった。
 せっかくのデートなのに。
 「…オレ、大佐の欲しいな……」
 オレは大佐を見つめる。
 今はアルのことは忘れたい。
 「今日はやたら積極的だな…」
 大佐はオレを抱き上げ、人通りが全くない場所でオレを下ろす。
 「ここなら声を出してもいいぞ」
 「ロイ…っ」
 オレはキスをねだる。
 「ん…」
 ロイの舌が自分の舌に触れる度に気持ちが高ぶる。
 舌を絡ませ、互いに熱を与え合う。
 ロイの舌はオレの舌から離れ、鎖骨をなぞる。
 「はぁ…っ、ロイっ…」
 久しぶりの舌の感覚に、オレは酔いしれる。
 首元辺りを舌で這われ、オレはイきそうになった。
 「…そんなにいいのか、エド」
 「凄くイイよ…っ」
 ロイはフッと鼻で笑い、オレの服を全部脱がせる。
 そして、乳首を舐める。
 「あぁ…っ、ロイっ…もっとしてぇ…っ」
 ロイはもう片方の乳首を指で弄り、空いているもう一方の手で、オレのソレを愛撫した。
 「ひっ…や…っあ…気持ちぃよっ…んっ」
 オレの乳首を舌で押し潰しきつく吸い上げるロイの行為を見ていると、無性に興奮する。
 ピチャピチャと乳首を舐めてくれる行為や、指でクリクリと乳首を回してくれる行為にも
 似たような気持ちを覚える。
 「あっ…やっ…ヤダ……っ!」
 オレの体は小さく震える。
 ロイは、オレがもうすぐでイってしまうのに気付き、下の愛撫を激しくしてくれる。
 「ぅ…っあ…ぁっ……あぁー…っ!」
 オレはロイの手の中に白濁色の液体を吐く。
 「やっ…ロイ…っ」
 ロイの舌はオレのソレを舐め始める。
 さっきイったばかりのオレには、刺激が強すぎた。
 立っているのもギリギリだった。
 「あっ、ぁんっ…んぅ…っあぁ」
 ロイは色々なことをして、オレを攻めてくれる。
 最高に気持ちいい。
 「ふっ…あぅ…あっ、あぁんっ」
 「……………に…兄さん…?」
 オレが二回目の頂点に達する寸前だった。
 「何してんの……」
 オレは頭の中が真っ白になる。
 アルにバレた…。
 「…ゴメッ…アルっ……オレ…っ」
 オレは地面に座り込み、頭を押さえる。
 泣きそうになった。
 何をしたらいいのか分からなくなった。
 「…大佐とっ…大佐と何してたんだよっ!!」
 アルはオレの三つ編みを引っぱり、持ち上げる。
 アルの手は怒りで震えていた。
 「ゴメンナサイ…ッ、ゴメンナサイッ…」
 オレは両手で顔を押さえ泣く。
 「泣けば済むってゆー問題じゃないんだよっ!」
 アルはオレを地面に叩きつける。
 それから腹に2,3発蹴りを入れられる。
 アルの本気の蹴りに、オレは吐血した。
 「っ、やめないかっ!アル君っ!!」
 ロイは慌ててアルを止めようとする。
 「そもそもアンタさえいなければっ」
 アルはロイを殴る。
 「やめてっ、アルっ!大佐は関係ないよっ!」
 「黙れっ!」
 アルはひたすらロイを殴る。
 胸ぐらを掴み上げ、右手で思いっきり。
 何発も。
 …もう、見ていられない……。
 オレのせいだ…。
 「ゴメンナサイ…何でもするから…大佐を傷付けないで……っ」
 オレはアルに泣きつく。
 アルはロイを地面に捨て、オレの顎を指で掴む。
 「…本当に何でもしてくれんの…?」
 オレは小さく頷く。
 アルに許して貰えるなら何でもする。
 最初はそう思っていた。
 でも…………
 「痛っ」
 アルの二本の指がオレの中に入ってくる。
 そして、無理矢理中を探られる。
 「何だ…思ったより解れてないや……」
 アルはオレの前立腺を強く擦る。
 「っあぁ!」
 「……誰がイっていいっていったの?兄さん」
 「ゴメンナサイ…っ」
 アルはオレの前立腺を弄り続ける。
 オレのソレからはトロトロと精液が出続ける。
 「…ねぇ、いつまで出してんの?」
 「ぅ…ゴメンナサイ…っ」
 オレは自分でソレの根元を押さえる。
 「いい子だね…兄さん……」
 アルは指の数を増やす。
 最初は少しキツかったが、時間が経つと共に楽になってくる。
 「…兄さんってさ、誰にでもこーゆー風になるの?」
 「違うよ…アルだけだよ…っ」
 「……嘘付かないでよ」
 「嘘じゃないっ」
 アルはオレの前立腺を指で挟み弄る。
 一気に快感がくる。
 オレは自分のソレをもっとキツく締め付け、イかないようにする。
 「……半年前にした約束覚えてる?」
 アルのこの言葉に、オレの体はビクッと震える。
 「…約束破ったよね、兄さん」
 「やっ、アルっ!オレが悪かったからっ…だから…っ」
 オレはアルを見つめる。
 「オレを独りにしないで……」
 「……バカ兄」
 「ゴメンナサイ…っ」
 アルはオレの頭を撫で、イかせてくれる。
 ただ、アルにしては許してくれるのが早すぎたので、少し気になった。
 いつもはもっとしつこいのに。
 しかし、次のアルの言葉でオレの疑問は消えた。
 「……でも、兄さんは結局約束破りだ。だから僕、もう兄さんにもう優しく出来ないよ?
 側にはいてあげるけど」
 アルは優しい口調でサラリと言った。
 「今日のことは一生をかけて償ってもらうからね、兄さん」
 その声は、どこか楽しんでいるように聞こえた。
 「…大佐邪魔」
 アルは地面に倒れているロイを蹴って退かす。
 「もう二度と兄さんには近づかないでね。次やったら本当に殺すから」
 アルはロイに冷たく言葉をかけ、頭を踏みつける。
 それからアルはオレをお姫様抱っこする。
 「行こう、兄さん」
 「アルっ…服…」
 オレはアルを見ながら服を指差す。
 「いいじゃん、着なくても。どうせ宿に戻ったらヤるんだし」
 「でもっ…他の人に見られたら…っ」
 「いっつも似たようなことやってるんでしょ。人前でさ。」
 アルは冷たく言う。
 「違うっ!そんなコトしてないっ!」
 オレは必死に言う。
 アルに売春してるなんて思われたくない。
 しかし、オレのそんな気持ちをアルは軽々と踏みにじる。
 「兄さんは淫乱だから信用できないよ。さっきも大佐とヤってたしさ」
 オレは言い返せなくなる。
 …どっちも真実だったから。
 「もう言い返せないでしょ。…ま、悪いのは兄さんだし」
 アルはそう言って歩き出す。
 オレはペ二スが見えないように、アルの腕の中で一生懸命体を丸めた。
 

 街に出ると、周囲はオレのことを「変質者」や「変態」と言って罵る。
 アルも否定しない。
 オレは泣きそうになる。
 周りからキツイ言葉を言われ、こんなに辛くなったのは今回で二回目だ。
 一回目の時は、「軍の狗」や「悪魔」と言われ、周りから冷たい目線を浴びた。 でも、その時はアルがかばってくたので、オレはどうにか立ち直れた。
 それなのに今回は………。
 「…なぁ、お嬢ちゃん。何でそんな格好してんだ?」
 オレ達の前に立ちふさがる5,6人の不良。
 オレの体はビクッと震え上がる。
 「鎧の兄ちゃんもなんか訳アリっぽいしな」
 そのうちの一人がニヤニヤしながらオレの髪の毛を引っぱる。
 「痛っ」
 「こっち向けよ」
 オレは恐る恐る不良の方を向く。
 「…お前、本当に男か?」
 オレは小さく頷く。
 不良は少し笑いながら、オレのペ二スを掴もうとする。
 「やめて下さい」
 アルが不良の手を払いのける。
 「何だぁ…この鎧…っ」
 不良はアルを睨み付ける。
 オレはアルが助けてくれたことを嬉しく思った。
 「…兄さんは趣味でこの格好をしているだけですから。露出狂なんで」
 アルは大声でしっかりと言う。
 オレは恥ずかしくなり、アルに抱きつく。
 そんなことを大声で言われるなんて…。
 「これ以上兄さんにセクハラしたらキレますよ」
 「やれるもんならやってみろよっ!」
 不良の一人がアルに襲いかかってくる。
 アルは素早い身のこなしで、その不良を高く蹴り上げる。
 「…まず一人」
 アルは自信満々の声で言う。
 「こんの…っ!」
 次々に襲いかかってくる不良達をアルは確実に仕留めていく。

 「…っと。コレで全部」
 アルはオレの背中に付いた血を指で拭う。
 「仕上げといきますか」
 アルは地面に錬成陣を書く。
 そして、倒れている不良達を一ヶ所にまとめる。
 オレは青ざめた。
 アルはこの不良達を土に還そうとしているのだ。
 「ちょっ…アルっ!やめ…」
 アルは両手を合わせ、錬成陣に手を付く。
 それは、一瞬の出来事だった。
 オレは呆然とする。
 人を分解するなんて…。
 「…どうしたの?兄さん」
 オレはアルを見上げる。
 「お前…何したのか分かってんのか…っ」
 「そんなの分かってるよ」
 「じゃあ何でっ」
 「ウザかったから」
 アルはキッパリと言う。
 …そんな理由で人が殺せるのか……?
 ただウザイだけで人を…
 「…もう僕、いい弟やってるの疲れたからさ。正直言っていい子ちゃんぶってるのって
 色々面倒だから。…飽きたんだよね」
 アルはオレの頭を撫でながら言う。
 「今度は兄さんが僕に従ってよね。今までの分を」





 オレは壊してしまった。


 弟の純粋な心を。



 もう取り戻せない。



 以前の関係には戻れない。  



 優しいアルはもういない…。



 涙が溢れてくる。


 オレが壊してしまった弟…。



 この重い罪を


 オレは一生背負っていかなければいけない。



 一生をかけて償わなくてはいけない。




 オレの犯してしまった


 もう一つの禁忌……………。


















                                        終わり。 

















  後書き
 ぶっちゃけ、大佐可哀相です。
 やられ役かよっ?!!って感じ。
 ロイファンの方々、ゴメンナサイ。
 アルエドのためなら他のキャラなんぞ死んでもいいとか思っててゴメンナサイ。
 …やられ役をウィンリィにしておけばよかった……。
 それだと、ウィンエドになるけど。(死
 クソ~…。
 
 やっぱり今回も、書いてる最中はカナリ精神的にやばくて
 もう………アレです…アレ……。(分からん
 マジ医者行き一歩手前って感じです。
 危ない危ない。

 次回は黒アルで…。



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