「何より貴重な財産は、どんな純度の高いダイヤモンドにも増して誠実で強靱な民衆なのだ」(注)これは、南アフリカの人権の闘志マンデラの、信念の言葉である。
学会が「社会の年」と定めた一九七四年(昭和四十九年)は第四次中東戦争、石油危機に始まった世界経済の激動の中で幕を開けた。
元日の午前十時、全国各地の会館などで、新春恒例の新年勤行会が、一斉に開催された。
この年の勤行会は「世界平和祈願広布勤行会」を兼ねて行われ、「仏法即社会」の原理のうえから、社会で勝利の実証を打ち立て、貢献していくことを誓うとともに、世界平和への深い祈りを捧げる集いとなった。
どの会場でも、参加者の顔は、決意に燃え輝いていた。”今こそ、私たちが立ち上がるのだ。試練の時代だからこそ、仏法を持った私たちが、希望を、勇気を、活力を、社会に発信していくのだ!”
多くの同志は、そう誓って、喜々として勤行会に集ってきたのである。学会本部での勤行会に出席した山本伸一は、マイクに向かうと、「減劫御書」の一節を拝した。
「大悪は大善の来るべき瑞相なり、一閻浮提うちみだすならば閻浮提内広令流布はよも疑い候はじ」(一四六七ページ)
そして、確信のこもった声で語っていった。
「大聖人御在世当時、社会は、大地震や同士打ち、また、蒙古襲来と、乱れに乱れ、激動しておりました。しかし、大聖人は『決して、悲観すべきではない。むしろ、こういう時代こそ、仏法の広宣流布という大善が到来するのである』と宣言されているのであります。私ともは今、戦後最大といわれる経済の激動のなかで、日夜、広宣流布に邁進しております。筆舌に尽くしがたい困難もあるでしょう。だが、どんな障害があろうが、『大悪は大善の来るべき瑞相』であると、強く、強く確信し、いよいよ意気盛んに大飛躍を遂げてまいろうではありませんか!」
伸一の呼びかけに、「はい!」という明るい声がはね返った。
すべての逆境を前進のバネへと転じていくのが、信心の一念なのだ。
引用文献 注 『自由への長い道 ネルソン・マンデラ自伝』東江一紀訳、日本放送出版協会