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カテゴリ:しのびよる貧困 子どもを救えるか
番組(『セーフティネットクライシス しのびよる貧困 子どもを救えるか』)の紹介を続けます。
神野直彦(関西学院教授) 日本ほど教育に(公的な)お金を使っていない国は(OECD諸国では)ない。そもそもヨーロッパでは教育費(授業料)がただの国が多い。家族支援=〔教育費支援〕(グラフ赤の部分)などヨーロッパの半分以下といっていい。 グラフを見ればわかるように、フィンランドは公費による教育支出・家族支援が大きい。大学まで学費無料、しかも2000年はPISAの学力テストで世界一。 司会者 フィンランドではなぜ、教育に多額の支出をしていくという国民的合意が成立したのか。 VTR フィンランドでは、子育ては親だけの責任ではなく社会全体の責任であるとみなされている。 ユーリアちゃんの家はお母さんと二人の母子家庭。しかし、学び育っていく上で経済的な不安はない。 フィンランドでは義務教育にお金がかからない。子どもに平等な教育を保障する義務は親ではなく政府にあると考えられている。ノートや鉛筆をはじめ、学習に必要なものはすべて教室にそろっている。 一クラスの生徒は20人前後。担任以外に大学院の専門課程で学んだ学習支援教員が授業に参加。学習支援教員はその教科が苦手な生徒をとなりの教室で教える。この国に学習塾はない。子どもに授業の内容を理解させるのは学校の責任。 家庭の状況によって子どもたちの未来が閉ざされてしまうことはない。 フィンランド国家の手厚い社会保障政策によって、生活に困ることはないのだ。
家庭環境に関わらず、すべての子どもに平等な機会を保障するフィンランド。その背景には高い税金や社会保険料を出し合いセーフティーネットを支えようという国民の合意がある。〔企業の社会保険料負担 日本の2倍 消費税 基本税率 22%〕 しかしながら、子どもたちに平等な成長の機会を保障するフィンランドの原則が、かつて大きな試練にさらされたことがある。90年代初め、金融危機をきっかけに発生した未曾有の大不況に直面した時期である。 最大の貿易相手国であったソ連の崩壊も背景に失業率18%。不況は教育環境も脅かした。親が失業し、家庭が経済的に困窮する中、家庭内暴力や薬物依存などの問題が噴出したのだ。 不況で税収が落ち込んだ政府はあらゆる予算の削減を迫られたが、教育も例外ではなかった。 しかし、この時、教育大臣に任命された29歳のオリペッカ・ヘイノネンは予算削減に逆行する大胆な政策(高校生への支援策)を打ち出した。当事、すでにフィンランドは高校の授業料は無料だったが、不況で親の収入が減少し、生活費さえもまかなえない状況の中、学び続けることが難しくなっていたのである。 教育大臣の計画した新たな支援策は、月額2万8千円の就学支援金、2万1千円の住宅補助、低利学生ローン。 あらゆる予算を削減した財務省。上記の案には危機感を抱いた。 それに対し、ヘイノネン教育大臣は、子どもが学ぶ機会を奪われ仕事にもつけない場合に国が将来負担することになるコストの試算を財務省に提出。 仕事につけない場合 国の負担 96万円(年間一人当たり) 生涯で2230万円 仕事についた場合 税 収 76万円(年間一人当たり) 生涯で1770万円 経済界からの要請 衰退した造船業などに代わる新しい産業(ITなどの分野で)将来を担う人材を育成してほしいと政府に求めた。 財務省は議論の末、ヘイノネン教育大臣の主張に歩みよった。 教育大臣 「平等と経済の活力は相反するものではなく、教育機会の平等があってこそ活力ある社会が生まれる。」 「教育の主な目的は、若者が社会から脱落していくのを防ぐことであり、一人ひとりが社会に参加しその可能性が最大限発揮できるようにしていくことだ」 平等な機会を保障するための努力は、この国では子どもが生まれる前から始められている。出産を控えた家庭には政府から「赤ちゃんパック」という贈り物(子育てに必要な基本的なもの)が届けられる。 この贈り物には、子どもが育つ環境を誕生の瞬間から平等に保障するという社会からのメッセージが込められている。 〔コメント〕 フィンランドといえば、高福祉・高負担の国として特別視してしまいがちですが、ここから何を汲み取るべきでしょうか。 大変な経済危機の中で、教育支援に巨額の予算をつぎ込んでいった「フィンランドの決断」、「根本的な発想」にこそ多くを学ぶべきではないか、と考えるのです。 (続き) 日本ブログ村と人気ブログランキングに参加しています 教育問題に関する特集も含めてHPしょうのページに お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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