Mr. Hot Cakeさんのブログで、ある経済学のサイトが紹介されていました。
さまざまな点について具体的に問題提起が行われており大変興味深いものでしたが、「北欧型の所得の再分配」を行うことが方向性として大切だ、という観点は『国家と文明』をめぐる拙ブログ記事と共通しているようです。
この記事をめぐって私は次のようにコメントいたしました。
>ただ、「豊富な財源を土台とした所得の手厚い再分配」の前提として、社会の「中流階層」が分厚くなければならない(例えばフィンランドの場合採用5年目の看護士の月給自体が日本円で32万円)と思いますね。
>そうすると、今の労働分配率を変えていくためにも(「同一労働・同一賃金」に近づけていくためにも)労働運動の立て直しがポイントになるでしょう。
>非正規労働者を中心とする組合の活動にも刺激を受けながら、有力な労組・労働団体が「社会性を取り戻していく」方向で再生を目指すことが重要な実践課題だと思います。
その後のコメントのやりとり(ブログのコメント欄)のなかで、Mr. Hot Cakeさんから、貴重な問題提起をいくつもいただきました。分量だけでもかなりのものですが、それを少しずつ引用しながら私なりに考えを述べてみたいと思います。
>で、貧困問題を本当に解決していくには、私は北欧型の福祉国家体制(日本型に変容は必要ですが)にもっていくしかないと思っています。それには制度の大幅な改革が必要になる。制度を今のままにしていて豊富ではない限られた政府財源の分配に争っていても、必ず予算を削られた部門から犠牲者が出ます。
ここまでは、私のコメントの趣旨にそった応答ですが、「(労働分配率を変えて)中間層を分厚くする」ために直面する現実の困難をMr. Hot Cakeさんは次のように指摘されます。
>日本の企業の99.7%が中小企業でそのうち小企業が87%、大企業の比率は0.3%でしかないのに常用雇用者・従業員数比率はその大企業に30パーセントが集中して残り70%が中小企業(総務省2006年調査)。
いわゆる「二重構造」の問題ですが、仮に正規労働者同士を比べても、企業規模による大きな賃金格差があり、特にここ数年来中小企業の正規労働者も、「中間層」から「低所得層」へシフトしてきているのが実態だと思います。
>そしてGDPのほとんどが大企業によってなされている現状。そのような前提で大企業に就職できるかどうかは「自己責任」で語られる。企業別労組制で(せっかく手にした)大企業の労組である恵まれた労働条件を非正規労働者のために手放すはずがない。
確かに従来、大企業の労組中心に組織された労働団体が上記のような傾向を強く持っていたことは間違いありません。しかし、「反貧困ネットワーク」などの草の根運動が、そのような傾向を揺り動かしつつあること もまた事実です。
というのは、このネットワークには各種NPO、弁護士、フリーター労組全般労働組合、首都圏青年ユニオン等だけでなく、ナショナルセンターである連合・全労連の代表も参加しているからです。例えば連合が「非正規労働センター」をつくったり「外国人労働者に関する当面の考え方」をまとめていることと、反貧困ネットワークに参加していることとは決して無関係ではないでしょう。
湯浅誠が『反貧困』の中で述べている以下の言葉は、既成労組の組合員にとっても強い説得力を持つにいたったと考えられるのです。
(「野宿者」、「非正規労働者」など)先駆けて警告を発する者たちを自己責任論で切り捨てているうちに、日本社会には貧困が蔓延してしまった。(・・・)野宿者が次々に生み出されるような社会状況を放置しておくと、自分たち自身の生活も苦しくなっていく。労働者の非正規化を放置し続ければ正規労働者自身の立場が危うくなる、(・・・)
手近に悪者を仕立てあげて、(・・・)結果的にはどちらの利益にもならない「底辺への競争」を行う。もうこうした現象はたくさんだ。また同じことを繰り返すのだとしたら、私たちはこの10年でいったい何を学んだのか。
反貧困ネットワークの運動や、非正規労働者の組合活動から刺激を受けること、そのような運動から生まれた「現実的な問題提起」を受け止めていくこと、それは「労働運動が社会性を取り戻していく第一歩」であろうと考えるのです。 続く
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