|
カテゴリ:地球環境、エコロジー
広瀬隆の上記著書が注目をあび、よく読まれているようです。 それでは、「二酸化炭素温暖化説が崩壊している」という主張のポイントだけを抜き出して、その問題点を列挙しておきましょう。(常体で) 温室効果ガスによる気候変動を問題にする場合、少なくとも50年以上の傾向を見る必要がある。短期的には様々な要因で気温は上下に変動する。例えば2008年は今世紀に入って最低の気温を記録したなどと騒がれたが、観測史上で言えば10番目の高温だった。(2008年現在で10番、その後の気温はさらに上昇。) 論文の書き方に不備はないか、論理展開や計算などが間違っていないか、過去の関連研究をきちんと踏まえているか、新しい重要な知見が書かれているか、などの観点から、査読者が論文を評価する。 IPCC報告書は政策決定の参考になる情報を総合的にまとめたもの(政策提言は行わないが・・・)。 (例)ブッシュ政権を支えた懐疑論者 そのような温室効果ガスが増加する結果、地球が宇宙空間に放出するエネルギーが低下し、太陽から受け取るエネルギーが放出を上回ることで、地表面の温度が上昇していくのである。 そして、20世紀後半以降の気温上昇傾向を説明するためには「温室効果ガスの増加を組み入れた気候モデル」が有効で、温室効果ガスの増加を考慮せずにそれを説明することが不可能だということについても、ほぼ100%の科学的合意が成立している。 太陽光線はほとんどが可視光線と紫外線という形で地球に届き、地球の表面からは赤外線という形で放出される。温室効果ガスによる赤外線の吸収がなければ(赤外線がそのまま宇宙空間に放出されれば)地表面の温度は計算上 零下19度になる。 4、「(水面に浮かぶ)氷が融けて水になっても海面は上昇しない」について これは当たり前のことで、地球温暖化を問題にする科学者は一人たりともそれを否定しない。しかし、気温上昇による山岳氷河やグリーンランドの氷床の融解、大陸上に存在する氷床の崩壊・流出が海面上昇をもたらすことについても否定する学者はいない。ここ100年間では17センチメートルの海面上昇が生じていることが確認されている。海洋面積の広大さを考えれば、すでに大きな変化が生じているのである。 5、「氷河の後退が始まったのは、二酸化炭素大量排出以前の18~19世紀からだ」(92)について 氷河の後退の原因は温室効果ガスによる温暖化だけではない。16世紀~18世紀前半まで、太陽活動の低下が原因と思われる小氷期に入っており、その後この小氷期からの回復によって20世紀前半までの氷河の後退が起こったと考えられる。 気候モデルによる温暖化というのは、気温上昇の原因が「温室効果ガスだけであること」を主張しているわけでは決してない。20世紀後半以降に観測された気温上昇が、「温室効果ガスの増加による温暖化」という仮説抜きにはほぼ説明不可能であることを主張しているに過ぎない。 20世紀後半における太陽放射量は大きく変化しておらず、成層圏(高さ10~50kmの大気層)では温度が低下しているにもかかわらず、地表に近い対流圏では温度が上昇していることも、上記の仮説抜きには説明できない。 6、「温室効果の大部分は水蒸気によるもので、二酸化炭素増加によるものではない」、「(都市化による)ヒートアイランド現象の影響も大きい」(120~)について 水蒸気も赤外線を吸収する(温室効果を持っている)のは事実であるが、その量は自然のバランス=大気と海洋および陸水との間の交換(主に気温・風という二つの条件で決まる蒸発と降水)によって定まるため、人間が直接に増加させたり減少させたりすることはできない。 (人間活動でも水蒸気は排出されているが、それが大気中濃度に与える影響はほとんどない。) ヒートアイランド現象はきちんと補正した上で気温の測定がなされている。また、温暖化の進行が激しいのは北半球の高緯度だが、それらの地域では都市化が進んでいない。 ところで「古気候も含めて今以上の温暖化はしばしば起こっているので現在の温暖化も人間による温室効果ガスの排出が原因ではない」という主張がある。しかし、各時代における「温暖化」の原因はその都度異なる。例えば、地球の公転軌道の変化が原因であったり、太陽活動の活発化が原因であったり。 問題は、現在の温暖化はそのような原因がないにもかかわらず進行していることである。(太陽活動の活発化がないため成層圏では気温が低下しているにもかかわらず地表から10km以内の対流圏では気温上昇が進行している。) それは、人間活動による温室効果ガスの増加を考えなければ説明できないのである。 参考文献 『地球温暖化 ほぼすべての質問に答えます!』(岩波ブックレット) 『地球温暖化の予測は「正しい」か?』(DOJIN選書)
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[地球環境、エコロジー] カテゴリの最新記事
|