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カテゴリ:地球環境、エコロジー
広瀬隆、『二酸化炭素温暖化説の崩壊』も含めて「人為的温暖化懐疑論」にはどのような実害があるのでしょうか。言うまでもなく、温暖化によるリスクや問題点を拡大してしまうことにつながる、ということです。 とりわけ、これまでの二酸化炭素排出に責任のない次世代や、植民地支配などで押さえつけられてきた途上国に多くのリスクと被害が集中していくことは、大変な問題である と考えます。 それでは地球温暖化によるリスクというのは、具体的にどのようなものでしょうか。 例えば、台風の巨大化です。今年、日本を襲った大型の台風は大変な被害をもたらしたのですが、温暖化によって海水温が上がることは、さらに強い台風発生の可能性を高めていきます。 IPCCは第4次報告でも「極端な高温や熱波、大雨の頻度は引き続き増加する可能性がかなり高い」「熱帯域の海面水温上昇に伴って、将来の熱帯低気圧(台風およびハリケーン)の強度は増大し、最大風速や降水強度は増加する可能性が高い」としています。 それだけでなく、以下の点も複数の研究者によって予測されているのですが、問題なのは、一人当たりで途上国の何倍にもなる「日本もふくむ先進国」の二酸化炭素排出が原因で、途上国に住む多くの貧しい人々が大変なリスクに直面することです。 1、1℃以上の温暖化は、毎年新たに数百万人のレベルで沿岸の洪水被害に苦しむ人々を生み出し、世界の生物種の30%以上が絶滅するリスクを高める。 2、2℃以上の温暖化は、毎年新たに数億人の水不足で苦しむ人々を生み出す。 温暖化による被害がより懸念されている地域。(IPCC第4次報告書) アジア 例えば1mの海面上昇で、沿岸のデルタ地域(ベトナムの紅河流域では400万人が影響を受け、メコン川流域では350~400万人)が影響を受ける。 アフリカ 2020年までに、7500万~2億5000万人が気候変動にともなう水不足および洪水の増加にさらされる。2020年までに、いくつかの国で天水農業における収穫が最大で50%減少する。 南米 飢餓のリスクにさらされる人が、気候変動によって2020年に500万人増加する。 〔なお、IPCCにも関わったイギリスの研究者の一部は「クライメートゲート事件」を起こしており、信用できないという人もいるかもしれませんが、公的機関による調査の結果、不正の事実は何も見あたらなかったということです。ウィキペディアは玉石混交ですが、この事件に関する記述は出典も明記されており、よく調べてあるため、かなり信頼できると考えています。〕 その他、IPCCではありませんが、熱帯アンデスの氷河の後退によって、農業用水などに甚大な影響がある、という研究結果もあります。 なお、このようなリスクを可能なかぎり回避・軽減するための二酸化炭素削減の取り組みが、広い意味での自然の循環を回復させることや、ゆったりした落ち着きのある生活と両立可能であることを私は2007年にHP「『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』について考える」で述べました。 一部引用しておきますね。 〈引用〉 そもそも二酸化炭素削減の「数値目標」をたてて取り組みを進めていくことと、武田氏の言う「人生にとって大切なこと」は両立不可能なのだろうか。私は両立可能ではないか、と考える。 環境保全や二酸化炭素削減を目指して真剣に取り組んでいるNPOは、全国で数千は存在するといわれる。活動の中心になっている人たちの多くが共有していると思われる考え方は、いわゆる「スローライフ」の大切さである。 「環境運動」を行う多くの人たちは必ずしも眉を吊り上げて自分を駆り立てているのではなく、そもそも人生や生活にとって大切なことは何か、という原点に立ち返りつつ「自然との関わり方」や「生活仕方」の見直しを進めているようにみえる。 (・・・)『NHK地球だい好き 環境新時代』(日本放送出版協会)のなかに具体的な取り組みが数多く紹介されている。 私自身も、今は自家用車をほとんど使わず、暑い夏にはなるべく扇風機を用い冷房をつける場合にも設定温度は29℃から30℃、水を含んだ生ごみは庭に浅く埋める等々、できることは取り組んでおり二酸化炭素排出量は一般家庭の3分の2程度かもしれない、と思う。しかし、子どもと一緒にバスを待ったり家庭菜園を作ったり、JRのなかで本を読んだりと、以前よりもゆったりした気分で生活している。 高い数値目標をあげて取り組むことと、いわゆるスローライフが両立するかどうかは、EU諸国、特にドイツの事例が参考になるだろう。 ドイツでは「古いものに価値がある」ということでおもちゃや古着を販売するフリーマーケットは大人気、海外旅行よりも国内旅行が奨励されグリーンツーリズムが盛んである。また、農業政策であるが「(ドイツの)州政府はあらゆる方法で農村を支援し、八〇年代の始めには現在のEU(ヨーロッパ連合)の農業政策に先駆けて、環境保全型の農業経営に補償金を支払う制度を実施した。
(『ドイツの分かち合い原理による日本再生論』 関口博之著 より)
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