“しょう”のブログ

2024/03/10(日)20:29

『朝日新聞「吉田調書報道」は誤報ではない』 彩流社

震災、原発事故(38)

同書は「吉田調書」に関わる朝日新聞報道と、その後の「誤報問題」を証拠資料などを基に検証し、実際は誤報ではなかったことを明らかにしています。   周知のように朝日新聞の「吉田調書」報道は、多くのバッシングにあい、社長が同記事を取り消し謝罪する事態になりました。そのような状況に危機感を抱きながら、『週刊金曜日』も、2014年10月10日号の特集「吉田調書と官邸」の記事を配信しましたが、それを部分的に引用しながら紹介します。  「誤報かどうかを判断するには2011年3月15日の状況を総合的に判断する必要がある」。    東日本壊滅の危機 東日本大震災は2011年3月11日午後2時46分に発生した。福島第一原子力発電所では外部からの電力を運ぶための鉄塔が倒壊したことなどから外部電源を失ってしまう。(・・・)    12日午後3時36分、1号機が水素爆発。そして、14日午前11時1分には3号機が爆発。 14日夜の状況について、福島第一原発の吉田昌郎所長(当時)はどのような危機感を抱いていたのか。(・・・)〔丸カッコ内は筆者注、以下同〕。 〈2号機はだめだと思ったんです、(・・・)水入らないんですもの。(・・・)放射性物質が全部出て、まき散らしてしまうわけですから、我々のイメージは東日本壊滅ですよ。〉  〈減圧もできない、水も入らないという状態が来ましたので、(・・・)ここで本当に死んだと思ったんです。(・・・)〉、〈そうすると、1号、3号の注水も停止しないといけない。(・・・)そうなると、結局、ここから退避しないといけない。たくさん被害者が出てしまう。(・・・)まず、ここにいる人間が、ここというのは免震重要棟の近くにいる人間の命に関わると思っていましたから〉   「要は、事故が進行して放射線量が高まれば被曝で死ぬため、最小限の人員を残して退避させようと考え、準備を進めていたということだ。(・・・)そして、問題の15日朝を迎える。」   東電本店の報道資料 15日午前6時すぎ、2号機で大きな衝撃音が起きた。(・・・) 実は衝撃音後も放射線量が上昇していない。ここがポイントだ。事故を取材してきたベテラン記者はこう語る。「放射線量が上昇していないということは、格納容器が破損したわけではない、という可能性が出てきたことを意味しています。深刻な事態でなければ、わざわざ福島第二まで所員が退避する必要はありません。」(・・・)   原発と東電本店を結んで対策を話し合ったテレビ会議(について)、柏崎刈羽原発(新潟県)で筆記されたメモが東電内部に残されている。吉田所長が「福島第二への移動」から「現場近くでの一時待機」に判断を変えた(・・・)。〈構内の線量の低いエリアで退避すること!〉   だが、実際には所員の大半が福島第二に移動してしまった。一方、東京電力は3月15日午前8時30分過ぎから本店で開いた記者会見で、実態とは符合しない次のような発表をしている。 「午前6時14分頃、福島第一原子力発電所2号機の圧力抑制室付近で異音が発生するとともに、同室内の圧力が低下したことから、同室で何らかの異常が発生した可能性があると判断しました。今後とも、原子炉圧力容器への注水作業を全力で継続してまいりますが、同作業に直接関わりのない協力企業作業員および当社職員を一時的に同発電所の安全な場所などへ移動開始しました」   「同発電所」とは福島第一を指している。この時間はすでに所員が福島第二に到着している時間だ。東電はなぜ福島第二に所員が行ってしまったことを会見で発表しなかったのだろうか。(「所長の命令」に違反する事実が発生したことを、隠していたのだ:引用者)   『朝日新聞「吉田調書報道」は誤報ではない』(彩流社)の検証の流れは週刊金曜日と大きくは違いませんが、上記著書は朝日新聞の記事は誤報や捏造ではなく、会社が「経営を守る」ために、第一線の記者と彼らの調査報道を切り捨てたのだと判断するのです。  そのほか、後半は東京電力の津波対策の根本的な問題点に迫っています。福島第一原発の事故対応において、吉田所長の奮闘ぶりは非常に印象的でしたが、こと津波対策に関しては判断を誤ったとしか思えないことも含めて、明確にしています。 さらに、朝日新聞を叩かせるために官邸(安倍内閣)が吉田調書をほかのメディアにリークしたことなどを指摘するのです。 自由な報道が圧力にさらされ、本格的な「調査報道」が後退し、記者クラブを中心とする「発表報道」が世間の空気を左右している現在、ぜひ多くの人にお読みいただきたいと考えています。(関連:​新聞労連は2015年1月28日、ジャーナリズム大賞の授賞式で、朝日新聞の「吉田調書」報道に特別賞を授与​しました。)  ジャーナリズム大賞受賞については、リンク先の記事が削除されていたので、残っている記事にリンクを張りなおしました。(2024.3.10 付記)      にほんブログ村  教育問題に関する特集も含めて​HPしょうのページ​に (yahoo geocitiesの終了に伴ってHPのアドレスを変更しています。)

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