手繋ぎ鬼 その5
敦也君と離れ離れになって数年。私は春から大学生になった。勉強よりスポーツが好きだった私は、あまり勉強が得意ではなくて。それでも必死に勉強して、今に至る。大学自体はすごく楽しい。友達も出来たし、色々と見聞も広がる。部活動だって充実していた。それでも、敦也君との思い出は心の奥で綺麗なまま残っていた。ある日、偶然その日は部活動が長引いて帰りが遅かった。親が心配しているからと、普段は通らない近道を通る。その近道は電気が薄暗く、人通りも殆どない。殆ど無い…はずなのに。その日に限って人が居た。しかも、よりによってあまり係わり合いを持ちたくない人達だ。無視して通ろうとしたら呼び止められて跡をつけられる。「おーい、おねえさん。ちょーっと俺達と遊んで行こうよ。」「こんな場所通るって事はさぁ、それなりにこっちの世界に興味あるって事?」「痛くしないからさぁ、あ そ ぼ う よ っ!」腕をつかまれたので、必死に抵抗して振り払う。「何するんですか!先を急ぐんで、失礼します!」つかつかと歩いて行こうとしたら、また止められた。「どこ行くのかな?そっちは…地獄だぜ?」にやりと笑って腕をグッと掴まれた。あっと言う間に周りを囲まれて、逃げ場がなくなる。 絶対絶命。そんな時、誰かが声をかけてきた。「おい、そんな所で何やってんだ?」誰だ!とお決まりの声をかけたと思ったら、派手な音を立てて男達が吹き飛んだ。月あかりしかない中、その男性はポンポンと小気味良く人を投げる。まるで魔法のようだ。そして、最後の一人を軽く捻り上げて投げ、こちらに近づいてきた。「立てるか?」手を伸ばしてきたので頷いてその手に掴まって起きる。近くに寄って初めて顔が分かった。「良かった…。」その笑顔は少し話し方と違って幼く感じた。