小寺啓章氏 講演会
2010年2月25日 10:30~12:30文教大学越谷図書館 地下会議室にて主催 あいのみ文庫図書ボランティアのための講座 Part4本物の読み手を育てるために「子どもがよい物語にであうとき」講師 小寺啓章氏小寺氏は兵庫県太子町にお住まいで、元太子町立図書館館長。小学生が約2000人、覚えようと思ったら全員の顔を覚えられる。名前は忘れるけれど、顔と好きな絵本(本)はセットで覚えられますよ、と笑っていらっしゃいました。「最近の子どもは本を読まない。活字離れだ」という偉い人たちの決まり文句について、石井桃子さんの著書「子どもの読書の導きかた」の中でこのことについて疑問を投げかけている部分を紹介。この本が書かれたのは1960年。さらに言えば、石井桃子さんがこの本を書く元になった対象(小学生)は、現在60歳から70歳、といいます。更に、こういうことをいう人たちはほとんど図書館を利用していない、とも。つまり、「最近の子は本を読まない」と言う人こそ、本を読んでいないのだ!つまり、読書離れとは大人の現象である。*原因は大人の誤解1「読書」の意味を取り違えている。(読書の「書」は四書五経のこと)2「読む」ことの強制(10歳までに)3本を選ばないこと(良い本を選んで与える。乱読させない与え方)「子どもたちは常に大きくなりたい、成長したい。と感じている」「10歳くらいまでの子どもは、文字は読めても本は読めない」「絵本だけの時期をあまり長くしない」(どんどん物語の本を読んであげたい)「学校で文章題が解けないのは読書量が足りないから、というのは間違い」ということから「自分で読む本」と「読んでもらう本」について、いろいろお話しくださいました。文字の大きさで決めると大変な誤りがあるということ。読んであげるなら「いやいやえん」「チム・ラビットの冒険」「エルマーのぼうけん」などは4歳から楽しめる。「クマのプーさんプー横丁にたった家」「たのしい川べ」「町かどのジム」「大きな森の小さな家」などは4~6歳から楽しめる。つまり、このあたりの本は文字が小さく、小学3~4年とか高学年になってからと思われがちだが、主人公たちの年齢や内容を考えると、成長したい子どもたちにはそぐわない。子どもたちは驚くほど鋭敏な視力と聴力を以って読んでもらった物語を楽しめるのだ。これらの本を大人が読むと、その楽しみを見出す前にすぐに眠くなってしまう。もし、その楽しさを味わおうと思ったら、誰かに読んでもらうことだ。印象的なエピソードとしてローズマリ・サトクリフとアーサー・ランサムの自伝からの引用がある。「母は素晴らしい読み手で、疲れるということがありませんでした。そして最初から自分が楽しむことのできないものは決して読みませんでした。…質の良くない読み物は切り捨てられ…私は、ビクトリクス・ポター、AAミルン、ディッケンズ、スティーブンソン、ハンス・アンデルセン、ケネス・グレアム、キップリングなどの混合体で養い育てられたのでした」ローズマリ・サトクリフ「思い出の青い丘」岩波書店。「母は自分で読んでおもしろくなかった本はぜったいに読んで聞かせなかった。…おかげで、私たちはたくさんの駄作を読まずにすんだ。…人々はいう。子どもには「自由選択」の権利があると。しかし、子どもの側にはよい本を読んだ経験がなく、わるい本を否定できるだけきたえられた審美眼がない場合、どれもみな似ている本の違いがどうしてわかるだろう?」アーサー・ランサム自伝 白水社。我が家の子どもたちは10歳と9歳。ようやく本が読める域に達してきたところだろうか。私が子どもたちの就寝前に読み聞かせてきた本たちは、どれも私が楽しんだものばかり。長女はそれらの本を今、自分で図書館で借りなおして読みまくっている。次女は毎晩私が読み進めるのを何よりも楽しみにしている。もうしばらく寝る前のお楽しみは続けていくことになりそうだ。