2020/02/26(水)16:47
ヨーロッパの行方はどうなる(1/8)
1500年前のローマ帝国滅亡の再来の始まりか
シリアでは2011年以来の内紛で多くの国民が避難民となった。その数は1100万人、シリアの人口2200万人半数にのぼる。国外に脱出したシリア避難民のうち360万人を受け入れているのがトルコである。トルコには25か所の難民キャンプがあり、約25万3千人の難民が生活している。
避難民はトルコやギリシャを経て、ヨーロッパに向かうことを望んでいる。現状では彼らは正式に難民として認定されているわけではない。難民認定を受けて受け入れに寛容なドイツなどのEU諸国へ入国することが彼らの最終目的だ。
ドイツではメルケル首相が労働力不足を理由に難民受け入れに前向きだった。しかし、現在ヨーロッパ諸国の間で難民受け入れに反対の動きが高まってきている。異文化の衝突も起こり、イスラム教徒の難民をターゲットにしたテロも増えている。
このままの勢いで行けば、2050年にはヨーロッパではイスラム教徒がキリスト教徒より多くなると推定されている。ローマ帝国以来の長い伝統と文化を持ち、16世紀以降世界各地を植民地にして繁栄してきたヨーロッパの終焉が近づいているのか。
この動きは、5世紀のローマ帝国(西ローマ帝国)滅亡の経緯と似ているという。
「ローマ帝国の滅亡は、難民問題から始まった。ローマ帝国の国境の一つであっ
たドナウ川の北方には、ゲルマン系のゴート族が広く居住していたが、ゴート族
は370年ごろから遊牧騎馬民族のフン族の攻撃を受け、一部は征服され、一部は
征服を免れたものの、フン族の攻勢を支えることができず、郷里を捨ててローマ
帝国内への移住を求めてきた。376年夏のことである。時の皇帝ウァレンスは、
ゴート族の求めに応じ、彼らを帝国領内に受け入れた。
ウァレンス帝には、折からの兵力不足を新米のゴート族で補なおうという魂胆
があった。現在のドイツが難民を受け入れた思惑に労働力の確保があったと指摘
されていることが想起される。」 井上文則 早稲田大学文学学術院教授
「世界史の新常識」 文芸春秋社(2019)
結局、ローマ帝国はその後続々と南下してくるゲルマン民族の扱いを誤った。そしてゲルマン民族の大移動開始から100年後の476年に滅びてしまう。
現在ヨーロッパはイギリスのEUからの離脱、各国で移民の流入に反対する国家主義的政党が力を伸ばしている。大きくとらえると、イスラム教とキリスト教の文化的な対立ともいえるだろう。
西ローマ帝国の滅亡は、ゲルマン民族の大移動(侵入)によって起こった。ヨーロッパでは今、同じ歴史が繰り返されようとしているのか。
あるいは、1500年後の人類は、異文化共生の知恵をもってこの問題を解決できるのか。ヨーロッパで起きていることを、傍観するのではなく全人類の課題として受け止め、解決への道を求めていくことが試されている。
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