Vol.80 97 鈴木重子チャリティーコンサート2007~Love~ 2007年7月19日(木)/アクトシティ浜松 中ホール(静岡)
Personnel:Shigeko Suzuki(vo) Aska Kaneko(vln,voice) Febian Reza Pane(p,pianica) Norihito Nagasawa(g,chor) Ryo Watanabe(per) 毎年恒例のふるさとコンサート。昨年は1月にアルバムがリリースされた関係で春先に開催されたが、今年は6月のリリースということで夏の開催となった。じっとしているだけで汗が噴き出してくる、暑い浜松。しかし、風通しの良い場所に立てば、遠州灘の潮風が心地よく体温を下げてくれる。 夕方、歴代のアルバムのポスターが貼り出された会場に、涼を求めるように客が続々やってくる。空調の効いたロビーで、後援会スタッフがCDの販売ブースを出している。大きくなったひなちゃん・かほちゃんもお手伝いをして、売り上げに貢献している。なかでも「Love」には直筆サインが入り、さらに後援会イメージキャラクターでお馴染みの、森みき子画伯のポストカードのオマケまでついてくる、お得な内容であった。 本公演はチャリティーコンサートということで、開演に先立ち鈴木順一後援会会長による贈呈式が行われ、収益金の一部が浜松市森林環境基金、NPOプレンティアの森、いのちの電話の三団体へ寄付された。 18時34分、静まり返った場内に、ピアノの調べが水滴の滴り落ちる水面にできた波紋のように、ひろがる。鈴木が“Your Song”を歌う。帆を掛けた船が、風を受けてゆっくりとすべり出るかのように、静かに、滑らかに。続く白熱したプレイの“Every Breath You Take”を終える。 「さて皆様、こんばんは。ちょっと客電(客席の照明)を明るくして下さい。どうぞごゆっくり席にお着き下さい」と、遅れてやって来たオーディエンスに気遣いを見せる鈴木。また、チャリティーの趣旨にも触れ、「今日演奏することで、人や緑を助け、思い、役に立つということを嬉しく思います」と語る。 「Love」にどうしても入れたかったという“Luka”で、人の心や身体の大切さを訴える。彼女のこの歌には、間違った個人主義が横行する荒れた現代社会から、大切なものを守ろうと必死に踏ん張っている姿が見えるから、説得力がある。 間奏のヴァイオリンが切なくこだまする“True Colors”のあと「浜松に帰ると、とても安心して歌うことができます。他の場所では絶対に味わえない安心感です。続いてはブラジルの曲をお送りします」というMCで、「お花畑のように美しい」“O Circo Mistico”、そして“Mais Que Nada”とブラジル音楽を続けてプレイ。およそ2分に及ぶビリンバウのソロは相変わらず圧巻。そして鈴木は一旦舞台袖へ。 サウタージなピアノのイントロに疾走感溢れるギター、艶やかなヴァイオリン、腹に響くパーカッションとくれば、ナシメントの“Vera Cruz”だ。僕が大好きな個人技の応酬に、身震いがする。 前半に着ていた、イスラム圏の民族衣装・カフタンから、上記写真の衣装に着替えた鈴木はメンバーを紹介する。金子はなんと、自身が参加しているバンド・GAIA CUATROのイタリア・ツアーから今朝帰国したばかりで、それを知ったオーディエンスがどよめく。鈴木「時差ボケはないんですか?」金子「・・・(平気そうな顔で)わかりません」 鈴木「(笑)・・・演奏中は寝ているみたいなもんですからね」鉄人とは、この人のためにある言葉なのか! 8曲目は、電車に乗っている時に、窓からさし込む、やわらかな陽光にインスパイアを受けたというナンバー、“ひかり ふる”を「バリのガムラン風」で、南の島を漂うように演奏し、まるで同じ曲が続いているかのように“風をあつめて”になる。照明が当たるたび、背後にある巨大なパイプオルガンの麓の木壁面に、5人の影が踊る。 “Raindrops Keep Fallin' On My Head”は、“Luka”同様、パネがピアニカを持ち出して演奏した。そして映画「レオン」の解説をしつつ“Shape Of My Heart”を演奏。 12曲目は、遠く離れて暮らす、愛する人への想い、そしてその距離に負けない強い想いを込めて“So Far Away”を、パネとデュオでしっとりと歌い上げる。 13曲目“The Rose”が、本編ラストのナンバーである。歌う前に、オーディエンス、後援会、関係者に対して礼を述べる。 カーテンコールに応えて戻ってきた鈴木たちは、“Love”をプレイ。鈴木は言う。「愛について考えるんじゃなくて、空気中に身を漂わせてみれたらいいなと、考えています」と。僕は何も考えず、身を寄せて、その感触を感じてみる。 終演後、幸運にもホール2階のホワイエで行われた、打ち上げに参加させていただいた。鈴木重子のことを大切に想う人々(社会的地位の高い、立派な方々である)が集う、その場に身を置いているだけで幸せ感に包まれるような、たのしいひとときを味わった。その輪の中心は、言うまでもなく鈴木重子である。肌触りの良い、淡い色のフランス製の衣装がかわいらしい。側にはひなちゃん。BGMで流れる“’Cause I Love you”を、二人してハミングする姿は、微笑ましい限りであった。 浜松という街は、この日の人々は、重子が重子であり続けるために必要不可欠な存在なのだ。と、僕はホテルの部屋から夜景をぼんやり眺めながら、ひとりごちた。■■SET LIST1.Your Song 2.Every Breath You Take 3.Luka 4.True Colors 5.O Circo Mistico 6.Mais Que Nada 7.Vera Cruz 8.ひかり ふる 9.風をあつめて 10.Raindrops Keep Fallin' On My Head 11.Shape Of My Heart 12.So Far Away 13.The Rose EN.Loveシンプルで心のこもった手作りプログラム。