「次は会見の内容だよな？　一応みんなそれらしいこと言ってけど、本当かどうかは分かったもんじゃないけどな」
「一応、まとめてくれるかな？」
「まあ、いいよ。まずオレは主賓の一人として祝辞の打ち合わせをしたよ。まあ言っても、『これで頼む』って紙切れ一枚渡されただけだけどな。後は簡単な式の流れと雑談だよ。次の試合の相手はどうだとか、コンディションはどうだとか。それだけ。で、土琉井さんは保険金の受け取り人の相談だっけ？　ウソウソ、土琉井さんは次期役員についての相談らしいね。本当はあしたのセレモニーで大規模な人事異動の発表があるはずだったんだよね。花月ちゃんは、もちろんフラワーアレンジメントの相談で、具体的な色や最終的な飾り場所などの確認だってさ。子烏さんはセレモニーで発表する新プロジェクトの技術的サポートで、テクニカルなアドバイスを求められたと。最後の洋子ちゃんは、もろもろあしたのセレモニーの進行についての最終確認つーわけだ」

「完璧だね。みなさん、他に補足するようなことは？」
「詳しく言うと語弊がかなりあるがね・・・」と土琉井さん。
「概要ですから、詳しい話は割愛させてください」
ボクの言葉に土琉井さんがモゴモゴと口を動かしていたが、ボクはおかまいなしに話を続けることにした。
「金剛寺さんの死亡時刻は午後七時五分。最後の北野さんが部屋を出た直後です。死因はコーヒーに混入された毒物による毒死です。コーヒーを一口飲んだ金剛寺さんは、そのまま机の上に突っ伏して死亡しました。各自の会見後に、一度全員で話をしようということで、ボクらはこの部屋で待っていましたが、金剛寺さんは一向に姿をあらわしません。北野さんの話ではすぐにこの部屋に来るという話でしたが、三十分たっても金剛寺さんがいらっしゃらないため、北野さんが金剛寺さんを呼びにいったところ死体を発見したというわけです。そして、金剛寺さんは、何者かに命を狙われているのを知っていたのか、事前に自分の部屋に隠しカメラをセットしていました。後からカメラの内容を確認したところ、一番はじめの武木くんの会合から、警察がカメラを発見した時間までの丸々二時間の映像がカメラには記憶されていました。このカメラに映し出された映像がこの事件の重要な鍵を握っています」
息継ぎもそこそこにボクは一気に言葉をまくし立てた。乾いた下唇を舌なめずりすると微かな鉄の味がした。