カテゴリ:ヒラメキ
ここしばらくの間、京極夏彦の京極堂シリーズを読み耽っていたせいか、
ふとページ数の少ない小説を読みたくなった。 ちょうど手に入れていない京極堂シリーズがあったので、 ことのついでに町田の古本屋へと足を運ぶ。 店内を物色したところ前から気になっていた 「殺竜事件」という新書が棚に置かれているのを発見した。 値段も100円と、かなりのリーズナブルさだ。 ページ数も200数十ページと軽い。 何も考えず書籍を手に取って、 陰摩羅鬼と共にレジで清算を済ませる。 日曜日と月曜日に時間を取って「殺竜事件」を読み終わった。 作者は「ブギーポップは笑わない」で第4回電撃ゲーム小説大賞を受賞した上遠野浩平さん。 「ブギーポップは笑わない」自体は割と良く聞くタイトルだ。 代表作といえるこの作品を読まないで、いろいろと書いてしまうけどもご容赦願いたい。 なぜ僕がこの作品を気にしていたかというと、ひとえにシチュエーションに魅力があったからだ。 密室状態で至高の存在である竜が殺される。 ミステリの代名詞ともいえる「密室」で、 ファンタジーの顔役である「竜」が、 不可能状況で殺される。。 要するに「ミステリ」と「ファンタジー」の融合ということだ。 なんて甘美な設定なのだろう。 思わず目がとろんとなってしまいそうだ。 ・・・。 さて、この小説では「竜」が登場するので、 もちろん世界のベースはファンタジーとなる。 魔法が出てきてしまう時点で 良質なミステリーと成りうる要素が ガクンと下がってしまうのだけども、 最終的には頑張ったほうだと思う。 ただし、ミステリ読みとしては中途半端感がいなめない。 たしかにキャラクター設定は良いと思う。 シチュエーション作りも大丈夫だと思う。 でもねー、魔法とか世界の設定とかの説明があまりにもおざなりなんだなぁ。 とかく説明が足りないように感じた。 とあるシーンで主人公たちが重要人物探していた。 重要人物の名前は登場するが、 姿はまるで見せない。 どこかで登場しているのかなぁ、 と見せ掛け、重要人物は主人公のひとりによって、 突然暴かれてしまう。 そう、突然暴かれてしまうのである。 何の前触れもなく、読者が予想する暇もなく。 この物語の世界が、 登場人物を中心に回っているのを痛感させられた。 ミステリに限らず上質なエンタテインメント作品は、 複線作りに趣向を凝らす。 ミステリのように推理に重点を置く話であれば、 すべて(はいいすぎだけどある程度は)の情報を 読者の前に提示しておかないと、 やれアンフェアだ卑怯だと言われかねない。 その点、この作品は「ファンタジー」だから とつっぱねてしまえばいいのかもしれないけども。 良い部分はたくさんあるのだけども、 ミステリとして、爪が甘かったかなぁ。 ちなみに、このシリーズの第2作はミステリとファンタジーのバランスが絶妙らしい。 機会があったら読んでみよう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 22, 2004 02:38:53 AM
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