灰色の空のむこうには…

今回もまぁ、仕事人の定番といえば定番の話だったの
ですが、ストーカーに付きまとわれていた町娘を助けた
同心が今度はその町娘を追い回すという、いわばミイラ
取りがミイラになってしまったようなお話。


こういう男女関係のもつれというのもよくありがちな
話で、同心とその一味は無茶苦茶な狼藉っぷりには若干
ひいてしまいましたが、この町娘を権力や金で手篭めに
しなかったのは時代の流れでしょうか。

おそらく、昔の仕事人シリーズならよいではないかと
帯をぐるぐるして手篭めにすると思うのですが、今回は
監禁して無理矢理祝言を挙げようというオチ、そして
町娘に反抗されて刺されそうになったのを刺し返して
しまい、町娘の恋人が殺された場所にうち捨てるという
冷静な判断が、ただの悪党とは違う狂気さを引き立てて
いるようでより異常さを感じてしまいましたが。


ひさしぶりに経師屋の関係者である如月が登場したの
ですが、オープニングの前説には必ず登場している如月
なのですが、その位置づけはいまだに理解できないもの
です。

経師屋の良心であるのでしょうが、経師屋はほったらかし
だし、目明しには追いかけられるし、助けられた仕立て屋
とはそれ以降は係わり合いがないし、なぜか町娘と知り
合いだしと、言い出したらキリがないのですが、ここで
如月が出てくる必然性がわからないです。

どうせなら、お菊が裏家業をやっているのを知っている
と言った目明しとお菊の対立をもっと深いものにしたほう
が、物語としては面白くなったのではないかと思います。


で、最後の仕事のシーンですが２人がかりで目明しに仕事
をした仕立て屋と経師屋については仕立て屋だけで十分
だったという突っ込みは無粋なのでなしにするとしても、
中村主水と渡辺さんの殺しの鮮やかさが対比されていたと
思います。

というか、さすがは中村主水で危ない橋を渡ることなく
さりげなく的を呼び出しては後ろ手で刺すという鮮やかな
手口に対して、渡辺さんは同心をそれとわかる殺気を放ち
ながら、相手も構えたところで斬るというお粗末ぶり。

渡辺さんのほうが見せ場だと思うのですが、仕事人の殺し
には華やかさなんていらず、ただ的を斬るという仕事へ
徹するところが悪の美徳であるのに、尋常に勝負をすると
いうやり方よりも中村主水のほうが凄まじいというか、いつ
かその渡辺さんのやり口なら自分の身を滅ぼしそうな気が
してしまうのですが。