前へ進もう。
黒いスーツ姿のサラリーマン風の男性が、早足で歩いていた。いや、サラリーマン風ではなく、明らかにサラリーマンである。片手には重そうなビジネスバッグ、もう片方には花束を持っていた。白い花たちが 黒いスーツとは対照的に、やけに輝いて見えた。仕事をサボってどこに行くのだろう? 誰かに会いに行くのだろうか?いや、違う。確実に私のいる場所に近づいているではないか! 私に会いに来てくれるんだ!11月中旬になろうというのに 陽射しはとても柔らかだった。彼の頬に、涙と汗が混じったような いくつもの雫が伝って流れ落ちた。橋を渡り、広々とした畑をしばらく横目で見ながら、彼はなおも歩き続けた。そう、私に会いに来るために・・・。彼の足音が、階段を1歩ずつ上って来た。もうすぐ彼に会えるんだ。私の気持ちは高揚した。ありがとう、会いにきてくれたんだネ。階段を上りきったところにあるお寺が 私のいる場所だ。彼は私のいる場所に歩み寄り、少し涙を流しながら、私に手を合わせた・・・。彼はホントによく涙を流す人だ。私がこちらの世界に来てからというもの、たびたび涙を流しているように思う。私はそんな彼を見て、もう泣かなくていいよと言った。会いに来てくれただけで嬉しいから、泣かなくていいよと言った。彼はやがて涙を拭き、駅前で買ってくれた白い花束を私にくれた。他の仲間達も羨むような 真っ白な花たち。しばらくして彼は私に手を合わせ、ゴメンなと呟いた。もっと可愛がってやればよかったと後悔していると言った。しばらくそのまま佇んでいた彼。やがて決心したのか、私に さようならそしてありがとうと言った・・・。想い出は記憶に残る。想い出はいつもあの時のままだ。会おうと思えば、あの時の姿のままでいつでも会えるのだ。そして彼は考える。私との想い出を胸に大事にしまいながら、前へ進まなければと・・・。この現実をしっかり受け止め、いつまでもくよくよすることなく。それでもまた寂しくなったら、私に会いに来てください。帰って行く彼の背中を追いながら、彼と一緒に過ごした8年間が、決して無駄じゃなかったと思えた。*****面白い日記はしばらく書けないかもしれませんが、頑張って少しずつ書いていきたいと思います。今回のことについて、いろんなコメントをいただき、本当に感謝しています。ブログを通じて、コミュニティが存在し、お互いの気持ちが通じ合っている。今回は特にそう感じた数日間でした。我ながら、本当に涙もろい人間だなとつくづく笑ってしまいます。心にぽっかりと穴が開いた状態。大切な人やペットが亡くなった方しか理解できない感覚だと思います。そうでない人がこの日記を目にしても 何も感じないのかもしれません。でも、できれば、少しでもこの気持ちを理解していただければと思います。少し重い話題かもしれませんが・・・。生は永遠ではなくいつか死が訪れるのです。ぜひ愛するもののために 生きているうちにできる限り愛を注いでください。私のように後悔することがないようにと願うばかりです。コメントをくれた方に対して、あらためて感謝します。ありがとうございました。ちなみに、昨日でまた一つ年をとってしまいました。もうそろそろ若旦那は卒業かもしれませんね。(笑)