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僕とポケットの中の遺書は、波間を漂う

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October 9, 2006
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カテゴリ:カテゴリ未分類









次の日、起きたら、貴女はやっぱりメールの返事をくれていた、私がメールを送った、

その19分後の、5時30分に。題名が、おはよ~ってなってたから、やっぱり後で考えると

貴女の事を起こしてしまった可能性は限りなく高いとおもった。貴女は、私が送った

メールの内容の、私の恋愛の話にはまだ触れずに、“私、FOMAになったから、

長文の送信・受信が出来るようになったんだけど、響ちゃんのケータイ長文送れる?”という

返事をくれた、これは、きっと貴女が長文の送信をしようと思っていたことを意味すると思う、

思えばいつも、電話が照れくさかった私達は、こうやって、何かあるとお互い、驚愕するほどの

長いメールにて、相談をし合った。ドコモが500文字しか受信できない頃は、例えば

私が5つに分けて相談のメールをすると、貴女は7つの返事メールをくれたりしたよね

貴女はそうやって、いつも熱心に相談に乗ってくれて、私達は本当に様々の話をした。

お互い、精神不安定になり易い性質だから、そういう自分の話も沢山したね。

私は、あんなに沢山のメールをお互い送り合ったのって貴女が初めてだったし、

他に居なかった。貴方の手紙はいつも

丁寧で、嘘が無くて、冷静で、でも暖かくて、不器用な優しさが滲み出ていて、

届いているとゆっくりと私はまるで本でも読んでいるかの心持で、貴女の沢山のメールを読んだ。

今思うと、貴方もそうやって、吐き出したい事がたくさんあったんだと思う。誰かに聞いて欲しい

気持ちが、沢山あったんだと思う。私も、同じ様に沢山あったから、貴女に、誰にも言えない様な

心の弱さだとか、狡さだとか、汚い部分だとか、曝け出した。貴女に手紙を書いている内に、

まるで自分に言い聞かせているようになってきて、そうして貴女に長い手紙を書く事で、私は

気付かなかった自分の心に気付いたりもした。貴女はどうだっただろうか。でも兎に角

私がひとつ相談をすると、何度も何度も其れについて自分なりの考えを伝えてくれたよね。

其れはいつだって、暖かくて優しい言葉だった。一時、そうやって貴女と私は、他の誰にも

言えないような話を、延々とした。手紙を通して。あの頃、私は貴女の苦しさがすごく共感できて、

また、私の苦しさも、貴女が一番良くわかってくれるような気がして、暗い話ばかりしていたけど、

でも何処かで心強かったんだ。私はあの頃、貴女が私にとってどれだけ大切な友人かって

意識的に気付くべきだったんだ。だって、こうやって貴女といつしか、連絡を取らなくなって、

それは始まりはとても小さな勘違いだったのに、そのまま私も気付かないで擦れ違って、

そうしたら途端に、今の貴女が何を考えているか、どうやって日々過ごしているか、わからなく

なっていったんだから。貴女は、いつか千葉に越して行った、千葉は本当に何も無くて厭だ、

気が狂いそうだよ、貴女はそう言って笑っていた。そうして東京に来ることも

少なくなって、いつか遊びに行くから、行くから、と言い乍ら、結局そんな日が実現

する事もなくなっていたんだ。近いうちにお茶しよう、と何度、言ったか分からない。

でもいつの間にか、其れも現実の話じゃなくって、例えばお決まりの文句の様になっていったんだ。

近いうちに、近いうちにだったら、例えば明日だってよかったんだ。そうなんだ。いつだって。

私は、自分が使った言葉に、いつの間にか自分で騙されていた。近いうちにお茶しよう。







“響ちゃんのケータイ長文送れる?”

貴女が、夜中のあんな非常識な時間に私が送ったメールに対して、やっぱり直ぐに返事を

くれたのに、私はその頃、すでに眠っていた。自分は、相手を起こしてしまったかも知れないのに。

それどころか、次の日、起きて、そのメールを見た私は、すぐに返事を送らなかった。

後で、後で、ゆっくり、そう思っていた。思えば、怠けていた。怠慢以外の何者でもない。

自分から、あんな時間にメールをしておいて、直ぐに返事をくれた優しい貴女の返事を、

放っておいた、貴女は、私に呼びかけをしているのに、私は暫くの間、それを放っておいた。

ついに、その日は返事をしなかった、あの日、あの一週間雨の続いた日、あの日は特に

雨と風が酷くって、窓の外でびゅうびゅう、ざぁざぁと音がしていた。私は頭が痛くなって、

何もしたくなくなって、本ばかり読んでいた。メールを打つことすら、億劫だった。

あの日、何度も、ああ、貴女に返事をしていない、貴女の呼び掛けに返事をしていない、

そう思い出したのだけれど、私はどうしてもメールを打つのが億劫だった。

あんな夜中に、自分からメールをした癖に、その後、実に無責任な放置の仕方をしていた。

そうして、丸一日、怠けた私だったけど、次の日はどうやら雨も上がって、一週間振りに

気持ちの良いお天気になる、との予報だったので、私はすべてを、明日に任せた。

明日、落ち着いたら改めて返事を返そう、そう思った、でも、結局、私がメールの返事を貴女に

送る事は、もう二度と出来なくなってしまったし、また、貴女が私に送ろうとしていたであろう、

長い手紙、貴女が私に届けようとしていた、沢山の言葉、貴女が私に伝えたかった事、それら全て

私が受け取る事は。もう二度と叶わなくなってしまった。送らなかった、私の返事と、

届かなかった、貴女が伝えたかった事。言葉。







次の日は、本当に気持ちの良い、晴れだった。

雨が、全てを洗い流してくれた様だった。全ての汚いものを。少し低くなった太陽、

秋の陽が、眩しく全てを照らしていた。

貴女が自殺した知らせを聞いたのは、そんな朝だった。

余りに美しい朝だったから、まだ夢の続きを見ているようだった。

貴女があの時、私に伝えたかった事。

それはもう二度と、知る事が出来ない。







終わってしまった、すべては。

もう二度と、もう二度と、貴女に伝える事は出来ない、たくさんの事。

私は一番大切な友人を、失ってしまった。

直前で、貴女が差し伸べた手に気付かずに、残酷にも見殺してしまった。

貴女が言いさしていた、長い長い話、

私に聞いて欲しかった、長い長い話、

私に伝えたかったこと

私は結局、貴女に何一つ、言わせる事もできなかった。

涙は、もう枯れてしまったけれど、私は貴女が居なくなってしまった事が

寂しくて仕方ないです

貴女は、あんなにも優しい人だった

私は貴女に何ひとつも返せずに、見殺してしまった







出来る事なら、許されない方がずっといい

私がこんな罪を背負って生きていくくらい、

貴女があの朝に、ひとりぼっちで震えた暗い暗い闇を思うと

あの朝、貴女を襲った、暗い暗い闇を思うと

こんなこと、何が辛いっていうんだよ







寂しいよ。会いたいです。話したい。もう貴女が居ない事が、酷く悲しいよ。怖いよ。

ひとりぽっちにさせた。

闇と戦っている貴女を知ってい乍ら、私はひとりぽっちにさせた。

もう絶対そうしないから、貴女が居なくなるのがとても辛いです

ねぇなんで、貴女の様な優しい、美しい人が死ななきゃならないんだろう

ねぇなんで、図太くて浅ましくて愚鈍な人ばかりが生きて行けるんだろう

そんな世界なんか、嘘だ

貴女が居なくなった日の、空の色は本当に

怖いくらいの青だった、全部が嘘の様な気だってしたんだ、そう全部が嘘だって、

夕焼けのグラデーションは、息を呑む綺麗さだったよ、そして月は、恐ろしく照らしていた。














Last updated  October 10, 2006 05:21:19 AM


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眠れない眠れない眠れない眠れない眠れない

こうやって狂った様に貴女のブログや記事を探してみたけれど、何やってるんだろうっておもった

貴女の使っていた名前で、楽天中を検索して何らかの手掛りを探していた。私は。

貴女はとても人気だったから、貴女の名前はたくさん見つけられて、でもどの頁に飛んでも

すでにそのブログは消失していて、あんなに一時ブログで幾つもの文章を書いていた貴女だけど

そのどれもが消えていた。私は貴女に、ブログも面白いよ、なかなか、と薦めた事があって

それから貴女は、全くパソコンを触った事が無かったのに、悠悠とその中でコミュニケーションを

広げていって、私が知らない瞬く間に、とっても人気者になっていたよね

そんな貴女がたくさん書いていた筈の記事は、もうどれも残っていなかったんだ

そんな事に今、やっと今頃気付いたんだよ、私は貴女にたくさんのネット友達が出来ていたから

少し安心していたんだ、だからもう大丈夫だろうと思って、暫くの間、貴女が何のブログを

やっていて、日々どんな生活をしていて、どんなことを思っているって、把握が全く出来て

いなかったんだ、だから、こんなことになって、改めて、私は貴女がとても恋しくなって、

少しでも貴女を、貴女の残した記事を、読んでみようと今更思って、

それで今日は彼是と探してみたんだけど、

愕然としたんだ、もう随分と前から、貴女はネットの中の全てを消去してしまっていて、

すでに何も残っていなかった、貴女ととても親しくしていた他のブログを書いている人の所も、

縋るような気持ちで辿って行ったけど、貴女の周りにいた人達、殆どの人達が、

すでにネットの中から居なくなっていて、まるで

最初から何も無かったような、そんなとても悲しい気分にさせられて、そうしているうちに

私は一体何をしているんだろうか、と虚しさに襲われた。

貴女に友達が沢山出来たと思っていた私は本当に莫迦だったと思う、だって、こんな風に

記号が全て無くなってしまったら、ネット上での繋がりなんて何も無かった事になって

きっと貴女はその事を良く知っていたんだね、本当に私は莫迦だよ、何も気付かなかったんだ

だって、ブログをやっていなかったとしたら、一体、貴女はあの、誰も居ない恐ろしい部屋で

ひとりきり、何をしていて、何を思っていたんだろうかって考えると、私は強い強い悲しさに

襲われて、たまらなくなるんだ、だから今だってこうやって、届く筈の無い手紙を書いているんだ

貴女の事をとても慕っていた、ネットの上の沢山の友達に、貴女の事を知らせようかと思ったんだ

よっぽど知らせようかと思ったんだよ、でもね、そんな事に一体何の意味があるんだって

思ったんだ

だって現実に、貴女はあの部屋でひとりきりだったじゃないか

結局、誰も友達じゃなかったんだ、友達になったような気がしていたんだ、それだけだったんだ

私はそれを忘れてしまっていたんだ、最初は覚えていたのに、それをすっかり忘れちまった

結局、貴女はたったひとりきりだったんじゃないか、そして、私はちっともそれに気付かないで、

大切な貴女を放っておいたんじゃないか、私だってそれに気付かなかったんじゃないか

ああ本当に私はとても愚かだと思うんだよ、気が狂いそうになるんだ

私にとって貴女がどれ程大切な人だったか、ちっとも気付いていなかったんだから

否、本当は気付いていた筈だったんだ、気付いていない振りをしていただけだったんだ

だって未だに私は友達に、大切な友達に、自分以外の誰かに、どうしていいかわからなくて

困ってしまうんだ、接し方がちっともわからないんだ、困ったものだよね

ずっと孤独と戦ってきたつもりになって、自分以外の誰かに触れるのがとても怖かったんだ

優しさが、嬉しくっても、それをどうやって相手に伝えていいのかわからなかったんだ

否、わからない振りをしていたんだ、自分の事で精一杯で、そうして精一杯だと言い訳して

自分以外の人との接触を、疎かにしていたんだ、貴女は、違った

貴女は、本当に優しくて、打算の無い人だった、狡さも、厚かましさも、微塵も無く不器用だった

私が何処かで苦しい、と弱音を吐くと、何時だって心配してくれて、でもきっと貴女も

他人と触れる事にはとても臆病だった。私と同じ、でも、貴女は私みたいに其処から逃げなかった

臆病だけど、決して逃げなかった、そして、いつも不器用なメールをくれた、

何気無いメールだったけど

そこからはいつも貴女の優しさが染み出ていて、私は自分でも気付かなかったんだけど

そんな貴女が居てくれる事がとても心強かったし、嬉しかったんだ。本当に、自分からは滅多に

他人にメールなどしないし、メールを誰かがくれても殆ど返事も出来ない私だったのに、貴女は、

貴女から、何度でも、心配のメールをくれたんだ、あの日もそうだった、一週間前だよね、あれは

携帯電話のメールに大分前に送ったら、送れなかったから、アドレス変えたかと思って、その後

貴女は私に遠慮して連絡をよこさなかったって、でも私はそんな事に全く気付いていなくって

便りの無いのは元気の証拠だと思って疑わなかったんだ、しかし貴女はアドレスを変えた私が

その知らせをくれなかったんだときっと勘違いして、遠慮していたんだね、そんな所もとても

貴女らしかった、だからつまり、其処から私が貴女に連絡をしていたら、そんな勘違いは即座に

解決してしまうところなんだけど、私が、何しろ私が、自分から誰かにメールを打つことなんて

本当に無くって、だから貴女と、気付けばずっと連絡を取っていなかったんだね

でも貴女は、そんな私に、久し振りにパソコンのメールボックスに手紙をくれて、その内容も

きっとずっと私の日記を読んでくれていたのであろう貴女が、私が余りに弱っている所を見て

堪り兼ねてくれたメールだったんだと思う、私は驚愕したんだ、貴女が、こうやっていつも

私の日記を読んでくれていて、何かを思ってくれていて、そうして最後はわざわざパソコンの

メールボックスにメールをくれたんだものね。貴女が久し振りにくれた手紙は、やっぱり

私が書いた日記についての、貴方なりの意見や考えで、貴女の特徴だったとても冷静な視線と

嘘の無い言葉と、そして貴女らしい優しさが滲み出ている日記だった、私は嬉しかったんだ、

とても嬉しかったんだ、だって、貴女はきっと私がメルアドを教えなかったと勘違いして、

少なからず傷ついていた筈なのに、またこうやって貴女の方から手紙をくれるんだものね

暖かいメールだった、とても、私は貴女は矢張りとても優しい人だと思った、

でもそれにきっと甘えていたんだと思う、貴女が私にしてくれている事がどんなに私の支えに

なっているか、どんなに尊い事なのか、其れにすら気付かないくらい、鈍感になっていたんだろう

いつだって、まるで自分の事のように親身になって相談に乗ってくれる貴女に、完全に

甘えきっていたんだと思う、怠慢だと思う、そして其の事にすら気付かなかった

でもずっとパソコンなんて開いていなかった私が、そのメールに気付いたのが、一週間も後の事で

さらに気付いて2日も経ってから、しかもあんなに非常識な時間にメールの返事をした。

携帯で。アドレスが変わっていなかった事と、貴女が私へのメールで触れていた、

私の至極下らない恋愛の相談への返事を、そう、それは本当に自分の事しか書いていない、

とても一方的なメールだった、私は本当に貴女に甘えていたんだね、

貴女が今、どうなのかなんてちっとも聞かなかったし、

私は完全にその事が頭から抜け落ちていて、本当に笑っちゃうよね、いつも、

自分の事で精一杯、自分の事で、って他人に言い訳しているうちに、いつの間にか、本当に

自分の事しか考えられない、とても傲慢な人間になっていたんだよ、夜中の5時11分だった、

普通の人になら、絶対にこんな時間にメールをしない、しかし、不眠症だった貴女だったら

或いは起きているかも知れない、ただ、そう思ってメールを送信した、その時の私は、

貴女がいつもの不眠症で苦しんでいて、やっとなんとか睡眠し始めた、そんな頃だったなら

メールの音で起きてしまう、そして折角手に入れた睡眠の妨害をしてしまうかも知れないのに、

そうなったら、貴女はまた長い事眠れなくなって、苦しむ事になるのに、そんな、よく考えたら

判る事を、全く考えられなかった。自分の事ばかりで、思いやりが欠けていた。

否、違う、私は嘘を吐いている、私がその件でこんなに今、苦しんでいるのは、きっと

心の何処かでその可能性が過ったりしていた筈なのに、

それでもいいや、と送信してしまったからで、

優しい貴女はきっと、その事で怒ったりはしないだろうと甘えていたんだ

全く何処まで自惚れていたんだろうと思うと吐き気がする、しかも、最低な事に私は、

自分の伝えたい事だけ伝えたら、そのままとっとと眠ってしまった、例えば私の夜中のメールで

起きてしまっても、眠たい中、私にメールを打ってくれるような、貴女はそんな人だった

貴女がそれくらい優しい人だって、私は知っていたくせに、そのままとっとと眠ってしまった。














Last updated  October 10, 2006 05:22:29 AM
June 25, 2006
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心が死んでしまう直前の様な気持ちが、ずっと続いている感じである

感情が特に揺さぶられる事も無く、泣くような事も無いし、怒るような事も無い

嬉しい事も、なにも。

死んだように生きているこの感情、ただ、心の奥底に、

冷たい水が、ひたひたと、流れているのだけは判るのだ

何かに耐える様に、只管沈黙して暮す毎日、過ぎ去ってゆく日常、

老いてゆく身体、鈍っていく五感。

ジッとしていると、この身体の置き場所に困ってしまい

途方に暮れるしかない








自分の着ている、着物の、鮮やかな赤色をずっと見ていたら

いい色だなぁとおもった

ふと、色の判別の付かない、あの子の事を思い出して

何故だかとても哀しく、いとおしくなった

あの子と一緒に見た虹ほど、哀しいものも無かったと思う。

でも一番美しく鮮明に脳裏に残っているのも、あの虹なのだ

あの時、私はあの子の眼になってやろうと思ったものだ

美しいものを、一緒に沢山見てやろうと思ったものだ








そんなあの子を裏切って、私は今、此処にいる

弱音を吐いて、懺悔して、全てを許してもらいたい訳ではないのだ。

只、時々、そんな自分に対して嫌悪感が拭えなくなって、きまってその時私は

『・・・・・たい』

と呟いている

しかしそれも許されず、今日もやり場の無いこの身体の置き場所に困っているのだ。













Last updated  June 26, 2006 04:14:16 AM
May 1, 2006
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その日は、眠りにつく前からおかしくって、

理由も無いのに肺臓の辺りがずきずきと苦しくって苦しくって

勝手に涙が流れて止まらないのです、治め様としても治まってくれず

それでも近頃では随分と、そんな感情だって何処かへ行ってしまって

一時に比べれば、そりゃ回数は減ってきたのですが

突然襲ってくるのに私にも仕様がないのです。





それで、泣き疲れてとうとう眠ってしまったのですが、

其処で出てきた娘さんが、『貴方、近くに、死ぬのよ』

そう教えてくれたのです、其れを聞いて、私は、ほう。そうか。道理で。

合点して全てが繋がった様な気がしました、しかし、死ぬるならば

直前まで其れを知らん方がどんなにか楽だろう、そんな事を思いました





死の兆候かはたまた何かは存じ上げないのですが、そこで

私の下顎の歯が、一本、とてもむず痒いのでした

痛い、痛いと呻いて、余りに疼くので、その歯を摘まんで

ぎしぎしと前後に動かして居りましたら、歯、ぐらぐらと歯茎から外れだして

まさか、まさかと思ううちにぽろりと落ちてしまいました

床に落ち、かたんとぶつかる音

口の中に、血液がいっぱい溜って、鉄の味がしました

あらどうしよう、此れは確か、永久歯という歯ではなかったのか、此れが抜け落ちたら

もう永久に其処には歯は生えないのではなかったか

兎に角、あのむず痒い感じが何とも厭な感じで





気付くと、私はえすかれーたの下に立って居ったのですが、

上から、老夫婦がふたり、ゆっくりと運ばれてきて

白髪頭の、眼の中まで白い、肌の色も白い、真っ白なお爺さんが

私の見ている目の前で突然、死んでしまいました

顔面は硬直し、口を開けたままお爺さんは倒れ、

其のままえすかれーたの一番下で、かたん、かたんと何度も

床に吸い込まれてゆく階段のりずむに合わせて、揺れて居りました

お爺さんの死体が、かたん、かたんと揺れている様が

とても滑稽で寂しかったので、私は暫く其れを見て居りましたが

連れのお婆さんはもうすっかり呆けてしまっているので

何が起こっているのか、解らない様子でぼうっとしています

其処に、スーパーの店員らしき人がずかずかと歩いてきて

お爺さんの死体を、ひょいと掴んで、入り口のドアからぽいと捨ててしまって

私は大変驚愕したので、慌てて外に出て見ると

入り口の所に、お爺さんの死体が転がっているのに、誰も、気に止めません

私は、救急車を呼ぶべきなんじゃないだろうか、どきどきしましたが

ようく考えましたら、お爺さんは既に死体になってしまっているので

救急車を呼ばんとしている自分が、ちょっぴり恥ずかしくなったのです

外は、暑い暑い真夏の様でした

噎せ返る程の湿った空気が、風が、びゅうと吹いた様な気がしました

夏だ、ああ夏だ、

私はそう思ったのでした













Last updated  May 2, 2006 01:33:06 AM
April 20, 2006
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私の初恋の相手は、やっぱりかっちゃんだったと此処に告白する。

初めて異性を意識したのも、かっちゃんだった。

かっちゃんは、私と良く似ていた。

お調子者で、ひょうきんで、いつもみんなを笑わせていたし、

しかし本当は照れ屋で、そして寂しがりだった。






かっちゃんは従兄弟である。

年は私より4つ上で、

面白いお兄ちゃんといった感じであった。私は、親戚もみんな九州に居るので、

幼い頃は毎年、夏休みを利用して九州に里帰りしていた。

幼い頃の夏の思い出は、みんな九州での思い出である。

私は夏の間だけ、かっちゃんに会えるのだ。

そうして、従兄弟とみんなで、海に行ったり、花火をした。

九州の夏はとても暑かった。耳を劈く程煩いクマゼミの鳴き声。

じりじりと肌を焼く日差し。雲ひとつ無い、貫ける様な青い空。

私が感じる夏というものは、やっぱり九州の夏で、他に無い。






かっちゃんとの一番古い記憶は、私がまだ小学校にあがったばかりの頃だった。

かっちゃんの事が気になっていた私は、でもその感情が何であるかもまだわからず、

或る日、従兄弟同士で話している時、当時流行っていた

ビックリマンのシールの話題になり、その頃とても貴重だった

ヘッドと呼ばれるキラキラシールの一つを私が持っている、という話を

兄が皆に話した。

それはそれで終わったのだけれど、後で、畳の上に坐っていた私に、

かっちゃんが初めて話しかけてきて、

『○○のシール、見して。』

という事だった。私は、とても照れてしまって、男の子とどうやって話していいかも

解らずに、只、つっけんどんに『リュックの中に入っているから、勝手に見ていいよ。』

と言ったのを記憶している。

私は話しかけられて、気がすっかり動転していて、どぎまぎしていた。







何分か経って、かっちゃんは私のリュックの中のシールを見てきたらしく、

『ありがとう』と、顔も見ずに言った後、さっさとどこかに行ってしまった。

私は、なんだろう?と思って、はっと気付いて自分のリュックを見に行った。

そして、リュックを開けて、恥ずかしさで顔が熱くなってゆくのが解った。

私は、リュックの一番上に、着替えのパンツを入れていたのだった。

その時の、なんともいえない感情を今も覚えているが、同時に、かっちゃんに対しても

恥ずかしさでドキドキしてしまった。

かっちゃんは、何も言わなかったけれど、さっきの素っ気無い態度は。

きっとこのパンツを見たに違いないのだなぁと考えると、時間を戻したい気持ちでいっぱいに

なった。小学生になったばかりの私でも、ちゃんと女の子の恥じらいみたいなものを

持っていたのだなぁと、今になっても思う。






小学校3年にあがって、久々にかっちゃんに会ったら、

かっちゃんはもう中学生になっていた。2年会っていなかっただけなのに、

いつの間にかとてもお兄さんになってしまったような気がした。

『かっちゃん、いくつになったの?』という、母の答に『もう中学生になりました!』

と人懐っこい笑顔で嬉しそうに言っていた、かっちゃんを思い出す。

私は、かっちゃんの顔が余り見れなかったし、話しかける事なんてとてもじゃないけど無理だった。

かっちゃんは、いつの間にかとても力持ちになっていて、それを誇示する様に、

久々に会った従兄弟の私と妹を、持ち上げて、

左肩に私を、右肩に妹を一辺に担いで、部屋を歩いた。

私はとても恥ずかしくって、どうして良いかわからなくなった。

しかし、私が淡い恋心を抱いていた、2年前、その時より、きっとかっちゃんは

大人になってしまって、もう私の事を幼い妹の様にしか見ていないのだなぁと

少し複雑な気分になった。

かっちゃんは、面白い事を言っていたかと思うと、突然、其処に在るピアノを開けて、

猫踏んじゃった、と真剣に弾きだしたり、其れを私は大人しく、じっと見ていた。

ピアノも弾けるんだなぁ、と思った。私、9つの頃の記憶だが、その

ピアノを弾いているかっちゃんの姿を、今も覚えている。






私は、誰にも言っていなかったのだけれど、夏になって、そうして九州に帰って、

其処でかっちゃんに会えるのを何より楽しみにしていたのだ。

否、当時の私には、楽しみだという認識は無いのだけれど、夏に帰る、となると、

きまって一年に一度だけ会える、かっちゃんの人懐っこい笑顔を思い出し、

胸をドキドキさせていたのだ。







そして、あの夏の日もそうだった。

私が10さいになった、その夏休み、いつもの様に九州に帰ると、

其処に、かっちゃんはいなかった。

大人が、ひそひそと話していて、其れは大人の事情だから、当時小学校4年の私には

解らなかったのだけれど、かっちゃんの両親、つまり私の叔母は、

その年の初めに、離婚をした。

かっちゃんの妹は、叔母に引き取られたのだけれど、

かっちゃんと、かっちゃんの兄は、叔父さんの所に引き取られた。

叔母は、私の父の妹だったから、その場所に、かっちゃんの妹は居た。けれど、

かっちゃんは、私の知らない叔父さんの所にいってしまった、という事だった。






私は、離婚がどんなものなのか、よく解らなかったけれど、

とても寂しいことだって事だけは解ったんだ。

叔父さんは、自分の息子達を、叔母さんに会わすのをとても嫌がっていて、

だからかっちゃんも、かっちゃんのお兄さんも、その夏はこっちに来れなかったのだ。

かっちゃんが、何処か遠くに行っちゃった事はなんとなくわかったし、

今までのように、夏に九州に帰っても、もうかっちゃんに会うのはなかなか出来ないんだなぁと

少し思って、寂しくなった。かっちゃんは、私の従兄弟じゃなくなっちゃったのだろうか。

かっちゃんは、もう違う人になっちゃったのだろうか。

私の知らない人に。






あんなに人懐っこく、笑って、

一緒に花火やバーベキューをして遊んだ、かっちゃんと、その夏は

会えなくって、とても寂しかった。夏が来たのに。いつもの様に。

そして、私は今年も、九州で夏を過ごすのに。でも、其処にかっちゃんは居ないんだ。

夏なのに。寂しいな。夏が来たのになぁ。






母は、そんなかっちゃん達に、その場で電話をした。

今年は、会えんかったねぇ、と、電話をしていた。

電話で、母が話している姿をじっと見ていた私は、私も、私も、私も

かっちゃんと話したいんだよ、話したいよ、そんな事を思いながら、

でもその気持ちを、自分の中にぎゅっと閉じ込めた。

電話の向こうのかっちゃんの声は、聞こえなかったけれど、

母が話している、その向こうには、かっちゃんが居るんだなぁと思って、

なんだかとても羨ましく、懐かしくなったのだ。

電話の向こうのかっちゃんは、元気がなかった、と母が言っていた。

いつもの明るい、ひょうきん者のかっちゃんじゃなかった、と母が言っていた。
















かっちゃんに会えなかった夏が終わって、

その年の冬のある日、

かっちゃんは死んだ。

電車に轢かれて、死んだ。















当時、かっちゃんは、引取られた叔父さんと、喧嘩ばかりしていたそうだ。

叔父さんは、博打が好きで、お酒も大好きで、

毎日、実家で夜遅くまで、親戚中と博打を打っていて、

ろくに働きもしなかった。

お酒に酔うと、度々、かっちゃんを怒鳴りつけて、殴っていた。

明るくって、ひょうきん者で、人懐っこかったかっちゃんは、

いつの間にか、とても暗く、元気が無くなっていて、






冬の或る日、塾に行く途中の踏み切りで、

死んでしまった。















私の初恋の人は、私の中で、ずっと、中学一年生のままである。

私の中のかっちゃんは、ずっと中学一年生のままで止まっている。

私の夏は、あの夏、かっちゃんに会えなかった夏のままで、止まっている。

私の初恋も、夏も、あの日に、ずっと止まったままなのだ。






今日、仕事から帰る途中、電車が人身事故で止まった。

1時間遅れで、出発した電車の窓から、

つい1時間前に事故が起きたその場所が、ゆっくりと流れていく様を見ていた。

消防車の、赤いランプが、夜の駅前でくるくると回っていた。

ホームには、何人かの作業着姿の大人が、慌しくしていた。

悲しい現場を、私は只朦朧と見ていた。

事故の知らせを聞いて、駆けつける親族は、どんな気持ちなんだろうか。

私は、怖くなって、寂しくなって、涙がにじんだ。

今この時に、悲しい出来事が私の目の前で起きている事実。

悲しい出来事は、ずっと無くならない。












Last updated  April 21, 2006 04:33:15 AM
March 8, 2006
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朝、TVでアメンボの生態についてやっていた。子供向けの教育番組で、

明るいナレーションと共に、アメンボのその名前の由来から、どうして水の上で

歩けるのか、細い足の仕組みは一体どうなっているのか、そういった事を紹介して

いた。モンシロチョウが水面に溺れていて、そこにアメンボが群がり

『ああ!モンシロチョウを助けようとしているよ!』というナレーションの後、

『あれれ・・・?違うようだね』と続いて、実は溺れた蝶はアメンボの

餌になるんだ!とかなんとかとても明るい調子で紹介するので滑稽であった。

そしてその蝶はどう見ても撮影の為に溺れさせられアメンボの餌になった事は

明白であった。








幼い頃は、その全てを生命の不思議として、只受け止めていたのに

歳を取る毎に、生命の営みが恐ろしいものと映ってくるのは何故だろうか

生命を繋ごうとする為の尊い筈の営みすら、残酷に映り、恐ろしくなるのだ

アメンボが、溺れてもがく蝶に群がる姿を見て、ゾッとした。

生きようとして、もがく蝶、生きようとして、群がるアメンボ。

生命を繋ぐものを、其処まで突き動かすものは何なのだろうか

何故、此処までして生命とは生きようとするのだろう

其の本能は一体何処から来ているのか、動物も、植物もだ

そして其の力は余りにも強い









あめんぼが、交尾していた。

昆虫の映像を見ていて、交尾の場面を見ると、いつも決まって変な気分になる。

幼い頃からそうだ。今回も、例にもれずだったが、その正体が

少し解ったような気がした、これも矢張り、恐怖心に近い感情なのだ。

この場面も、またナレーションが努めて明るく、

『オスが、メスに結婚をもうしこんでるんだね!!』といった解説だったのだが、

私は其の映像を見ながら、とても暗鬱な気分になった。其の姿に人間が重なって

淫猥な感じがしたのか、或いは全ての生命が繋がれる瞬間を其処に見た気がして

恐ろしくなったのか、全ての生物の使命とは矢張り結局こうして交尾して

生命を繋いで行く事なのだろうか!と何かガッカリした様な気持ちになったからなのか。

よく解らないけれど、何故いつも交尾の映像を見ると、厭な気持ちになるのだろう

尊い行為だ、なんて、とても言えやしない、言えそうも無い。恐ろしいだけだ。

人間の性行為にも、同じ様な恐怖感や嫌悪感を抱いている。

そして、人間は時に愛などと理由つけて、納得したような顔をして只快楽の為に

性行為を繰り返す。恋人、と定義付けた相手と。時にはコンドームを付け。

生命を繋ぐ為ばかりか、其の殆どが、快楽のみの目的の為に、其れは繰り返され。

性行為が、快楽と繋がっているのは、生命を繋いでゆく為に、より好都合だから

だと勝手に解釈している。が、その快楽ばかりに溺れるのが人間で、

愛情など、時に単なるまやかしの様なものではないかと思ったりするのだ。

愛情って、本当にあるのだろうか








生命を繋ぐ為の、重要な行為を、只、玩ぶだけの人間。

極論を言えば、その行為が本当に尊いと云えるのならば、其れは生命を繋いだ

瞬間だけなのではないか。つまり、子を作った時だけだ。

私は、例えば妊婦を見た時に、とても不思議な気分になる。腹を大きく膨らませて

歩いている人間を見ると、確かに私達は何か、そう、生命を繋ごうとしているし、

其れがきっと使命なのだ、しかし、何の為に、そして、その本能は一体

何処から来ているのか、その一切が解らない事に、恐怖を覚える。








こんな事を考えていても、答えが出る筈も無く、結局は

私もその不思議な流れに只、身を任せ、全てをほんのちょっとの間忘れ、

日常に翻弄されている気に為れば良いだけの事だが、

疑問は尽きない。その一切の疑問よ、得体の知れない恐怖よ。

全てを私は隠して、日常を生きる。













Last updated  March 8, 2006 11:04:05 AM
February 6, 2006
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今日は、じいちゃんの3回忌だった。








雪、雪、雪が降る。

全てを覆い隠すようだ、僕は、このまま願わくば、全ての汚いものも

真っ白に覆い隠してくれればいいのに、そう思ったんだ。

汚い僕の心。汚い、全ての物。じいちゃんは、

よく僕の名前を呼んでくれた。『正太郎、』

僕の名前は、じいちゃんが付けたのだ、と聞いた。僕は、この名前が

とても気に入っていたし、じいちゃんが僕を呼ぶ声が好きだった。

じいちゃんが死んで、僕の名前を呼んでくれる人はいなくなった。







僕の名前は、何処かへ行ってしまった。きっと、じいちゃんが

何処かへ行った時に、一緒に持って行ってしまったんだろう。

じいちゃんは、何処へ行ったのだろう。僕も、其処へ行きたい。

人が死ぬ、とはどういうことなんだろう。僕にはまだ、よくわからない。

僕もいつか、死んでしまうが、じいちゃんとはもう二度と、会えないのだろうか。

死ぬって、寂しい事なんだな。








あれはいつかの夏、じいちゃんが僕に買ってくれた、紙製の飛行機、

よく飛んだ。じいちゃんと一緒に、飛ばした時の風景、まるで

夢の中みたいな奇妙な思い出だ。

オレンジの空、電信柱、噎せ返るような、夏草の匂い。蜻蛉。

僕は、全ての事は、夢なんじゃないかって時々思う。













Last updated  February 7, 2006 03:20:14 AM
October 9, 2005
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その電車は、何処に向かっているのか、私にも全く解らなかったのです。

時は、夕刻、だったのでしょうか、

外には茜が射しており、私は只朦朧と、窓の外を眺めて居たのです。

がたん、ごとん、と電車は音を立てますが、他の乗客はしんとして、

時折、誰かひそひそと、話したりして居ります。







『また、出たぞ。病人が、出たんだ!』

帽子を被った、身体の大きな男の人が、どかどかと、隣の車両から入ってきました。

ああ、また出たのか。

この頃は、兎に角、世間に奇妙な疫病が蔓延って居り、人人も

それには大変に恐れ戦慄いて居たのです。

しかし、名医にも解明出来ぬ、難病であるし、原因も未だはっきりしないのです。








人人の顔は、恐怖に引き攣って居りましたが、

私は立ち上がり、隣の車両へと向かいました。

隣の車両では、通路には、人集りが出来ており、その野次馬の中心に、

其れと思われる女の人が、蹲って居りました。

女の人は、辛子色の、格子の模様の付いた粗末な着物を着ており、

黒髪は綺麗に纏めて、そこから白いうなじには後れ毛が垂れて居りました。

まだ、若い女の人の様です。

透き通るような肌の、しかし痩せた顔は蒼白しているのです。

女の人の、周りには、助けようと集まった何人かの女が坐って居り、

皆深刻そうな顔をして居ります。

女の一人が云いました。

早く、とにかく、この背中の皮を、剥さなくってはならない。

そこで、皆も手伝いながら、女の人の白い背中の皮を剥す事に成りました。

私も、手伝いました。

皮は、思ったよりもとても厚く、皆、梃子摺りました。

ばり、とやっとの思いで剥した途端に、

中の暗い空洞から、どば、と赤黒い大量の血が、流れてきました。

驚く事に、女の人の身体の中は、ぽっかりとがらんどうに為っていて、

其処の半分位の所まで、並並と血液が、溜っているのでした。

女の人の、骨とか、内臓だとか、一体何処へ行ってしまったのでしょう。

私には、不可解な事ばかりだったのです。






大量の血液を流しながら、嗚呼、最早手遅れかもしれない。

そんな暗澹とした気持ちを、其処に居る人人の殆どが持ちました。

実際、私も、此れは駄目かもしれない。

そう思ったのでした。









私は、何時までもその白い項と、其処に映える血液の赤を、

忘れられずに居るのです。












Last updated  October 10, 2005 07:32:52 PM
October 8, 2005
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最近、死体をよく踏みます。





こないだも、私は気付いたら、どうやら葬儀場の広い畳の上に居て、

小学校4年生くらいに成っていた様ですが、

遠くに、親戚やら親やらががやがやと歩き回っていて、

私の周りには、人は居りませんでした





ぐにゃ、と足下に何か軟らかく、そうして骨張ったものを感じたので、

見下ろしてみると、私は麻色の毛布を踏ん付けていたのです。

あら、と思って、その大きな毛布を捲ってみると、

毛布の下には、お爺さんが。

よくよく見ると、お爺さんの顔の上には白い絹の布切れが被せてあったので、

ああ、これは死体だ、と、

何か厭あな気持ちになりました。






しかも、お爺さんの死体は、大層腐っていて、

白くてがりがりに痩せた、その足は所所、紫に変色を起こして居り、

その腐った部分から、緑色の大きな芋虫が、

ひょっこり顔を出しているではありませんか。

そのまわりにも、たくさん穴が空いていて、

黄色い蛆虫もたくさん蠢いています。

脳裏に鮮明に焼付いているのは、その大きな緑色の芋虫は

半透明でぴかぴかに光っており、

とても可愛らしいのでした。






しかし私は幼い頃から、

うごうごと蠢く虫の類があまり得意じゃないものですから、

ちょっと恐ろしいものを見てしまったような

厭な気分に苛まれ、また、毛布を元に戻しました。

見ちゃいけなかったな、

そうか、私は死体を踏ん付けたんだ。厭だなぁ。

そう思ったのです。










その時、死んでいるはずの、その死体が、

ぴくりと動いたのです。

私は、あ!と大変吃驚して、言葉を失いました。

お爺さんは、生きていたんだ。

お爺さんは、寝返りを打ちました。ああ、寝ていただけなのか。

私がまず其処でした事は、側にあった、

葬儀用の道具の色色を、咄嗟に隠したのです。

お爺さんに、まさに今、葬儀が執り行われようとしていた事を、

悟られてはなるまい。そう思ったのです。






私は、慌てて、両親の元に駆け寄り、

今遭った一部始終を知らせなくってはならない、

どきどきしながらそう思っていたのですが、

両親の元に着いて、後ろを振り返った所、

もうすでにお爺さんは忽然と消えていたのです。

そして、両親は、親戚の小母さんと話しに夢中で私の話を聞こうとしません。

私は、一人、呆然と立ち尽くしました。









すると、遠くの方角に、お爺さんの姿を見つけました。

お爺さんは、何事も無かったかのように、

小さな子供に囲まれて、そこで花いちもんめ、をして遊んで居ります。

私は、すっかり混乱して、

今措かれている状態を理解する事が困難に為りました。

だって、お爺さんの足は、やっぱり紫色に腐って居たのです。













Last updated  October 9, 2005 05:57:03 PM
October 7, 2005
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ある雨の日の事だった。

僕は、人殺しを思い付いたのである。







何故この経緯に至ったかという説明は、

何故この世の万物は創られたのか、という問いにも繋がってしまうので

それは僕自身もよく解らない、と言った方が正しい。

僕は兎に角、絶望していたんだ。

長い間、そう、ずっと。全てに、絶望していた。

何か解らない、強大なサークルの中で、僕等は生かされ、命を繋いでいる。

この世の全てを創った、なんらかの力に寄って、僕らは生かされているのだ。

僕等はつまり、最初から個人、など存在しなかったのだし、個人とは

社会という仕組みの中で作られた、まやかしだ。結局僕らは強大な

サークルの中で、生まれ、繋ぎ、死んで行くのだ。何か、に寄って。

しかし、大半の人間共は、それにすら気が付かない、愚かな奴等ばかりだ。

本当に、奴等の頭の中って何で出来ているのかしら?

どうでもいい日々に只翻弄され、悩まされている振りをするし、

全てスタイルだ。本当じゃない。あんなのは嘘だ。

恋も、愛も、正義も、情も、秩序も、あんな物は全部まやかしなのだ。

何故、其の事に気付かないのだろう?全て、莫迦らしくは無いのか。

もがいたって、足掻いたって、結局は、僕等はその強大なサークルの中で

生かされているに過ぎないのだ!嘘吐き!嘘吐き!!

奴等は何故あんなに白痴なのだろう。つくづく、厭に成る。

嘘を吐き、あっさりと欲に惑わされ、悩んでいる振りをする、奴等を見ていると、

吐き気すら覚える。

つまり、僕はもう、限界なのだ。

此れ以上、何かの力に寄って、生かされ、死ぬるのを我慢していられない。

そう、僕は、この世で初めて、僕を持とうと、足掻いてみるのだ。

これは、神、神への挑戦で在り、冒涜で在り、反抗心で在る。

僕は、莫迦じゃない。ならば、僕は神の力に背いて見せよう。

できるだけ、沢山の人がいい。

神、あなたが作ったものを、僕は壊す。僕の力で、次々、貴方の玩具を

壊すのだ。そうして、僕は、僕自身の命の最後までも、自ら・・・!

僕は、繋がない。何も、繋がないし、僕は、生まない。

只、壊す。壊してやる。僕が世界の癌になってやるのだ。

そして、僕を、必ず手に入れてやる。

このサークルから必ず抜け出してやるのだ。







ふと、級友のミソノを思い出した。あいつは、不思議な奴だった。

奴は化石収集が趣味で、偶に僕にも、この石がどんなに素敵なものなのか、

この層に浮かび上がるくるくるの模様は、何千年と前の時代の

浪漫が詰まっているのだ、そう熱く語っていたが、僕にはどう見ても

それは只の石ころにしか見えなかった。

僕のくだらない話も、いつも何を考えているのか全く不可解な表情で聞いていたし、

でも否定する事もしなかった。ミソノは、僕がこんな事を、今、

思いついている事を知ったらどう言うだろうか。しかし、僕の心に引っ掛かったのは

ミソノ只一人、であった。僕には、同級生に、サエキさんという気になる子が

居たのだけど、僕は、自分自身のそんな感情さえ、憎んだし、気持ち悪いと思った。

僕がつまり、誰かに恋焦がれるというのは、それさえもが例の強大な力の

所為であり、結局、全ては、繋ぐ為に用意された感情に過ぎない。

僕は、サークルの中に気付いたら入っていた、なんて莫迦な事には成りたくない。








次の日の午後3時。僕は、駅前のロビーの側の、

噴水の淵に、一人座っていた。

僕の側には、白い紙袋がひとつ、置いてあって、その中には台所から持ち出した

包丁が一本、入っている。僕は、全てをこの凶器に賭けるつもりだし、

この凶器こそが、これから行われる筈の僕の狂気じみた芝居の、小道具となる。

なんて事無い、何処にでもある凶器だが、まぁよい。

殺人と、包丁を安易に結び付る辺り、僕はやはり平凡だなぁと思うが、

それもまぁ、よいのだ。

全ては、今より始まり、そして終わるのだ。終焉。

今日、僕は僕を得る為に、決着を付けるんだ。

くだらない人々、もううんざりだ。

くだらない世界よ、さようなら。

僕は、ここ最近で一番、清清しい気持ちに溢れていた。

全て、終わるんだ、ようやく。しかし、その前に、僕は戦わなくちゃあならない。

僕の気持ちがそのまま映った様な青空だった。

雲が、ゆっくりと流れていっているのが判った。

この全てを作ったもの。全てを作った何か。しかし、結局僕には

僕さえも与えてくれはしなかったのだ。







その時、ロビーの奥の人ごみから、耳を劈くような叫び声がしたんだ。

悲壮に満ちた、女の叫び声が響いたのだ。

声の方角に、振り返る人々。そして、人ごみから、血まみれの女が、

『助けて!!』と叫びながら、よろけて走ってきた。

一瞬にして、辺りはパニックに成ったのだ。

引き攣った顔をして、逃げ惑う人々。

何事だろう、僕は、ゆっくり立ち上がって、

こちらに走ってくる沢山の人にぶつかりながら、反対方向を目指した。

女が逃げてきた先に、何があるのだろう。







人が居なくなった、そのぽっかりと空いた場所に、

5人程の人間が、うずくまったり、仰向けに倒れたりしていた。

皆、血まみれだった。ぴくりとも動かない、腹から多量の血を流している

男も居て、たぶん死んでいるのであろう、白目を剥いていた。

うずくまっている女の、ううう、という呻き声や、

震えて泣きながら、血まみれの男の側で只、座り込んで狼狽している女が居た。






そして、そこに一人、立っている、男がある。

手には、血まみれの、凶器を持っている。

顔にも、作業服にも、返り血らしい鮮血が、べったりとくっついているし、

青っ白い顔に、細い眼は、どこか宙を見ているように焦点が合っていない。

その口元は、少し、笑っている様にも見えた。









瞬間、僕は激しい憎悪に襲われた。

こいつ、やったのだ。

僕が、まさに今、仕様と思っていた事を、僕よりも、先に。

なんという、手落ちだろう、しかし、こいつの眼は完全に狂気に満ちている。

僕は、怒りでガクガクと、震えた。

なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、邪魔するんだ!!!!

僕が、じっと睨みつけていると、男は、僕に向かって、

凶器を振り上げながら、走ってきた。

『おい!!!逃げろ!!!!早く!!!!!』

遠くから、誰かの叫ぶ声が、聞こえてきた様な気がするが、

それを聞くか、聞かないかのうちだった。








ぶすり。

あっという間に、逃げもせず立ち尽くし、只睨んでいた僕に、

男が近付き、

僕の軟らかい腹に、凶器が刺さった。

男の青白い顔に、また、鮮血が飛び散った。

ああ、と僕は思った。何故、逃げなかったのだろう。

否、逃げて堪るか。僕は、こいつを心から憎んでいたのだ。

願わくば、僕の思想の邪魔に入るこいつを、この手で消してやりたい気持ちで

いっぱいになったのだ。しかし、凶器は、噴水の側に置いてきてしまった。

僕は、莫迦だ、最後まで。








ぐら、

全てはゆっくりと、モノクロームの世界に成り、

僕が見ていた景色は、弧を描いて、回った、回った、木々も、ビルも、

くるりと回った。そして、そのまま崩れ落ちた。

否、崩れ落ちたのは、僕自身だった。

僕は、呼吸をする事が困難になって、眼球を動かす事も出来なくなって、

冷たいコンクリートの地面に頭をつけたまま、

只、そこにどんどんと円く溜まっていく、黒い血の水溜りを見ていた。

ああ、これは、なんだ。

これは、僕の、僕の血か。

そうなのか、僕には、血が流れていたなんて。

こんなに、たくさん、血が流れていたなんて。











僕は、僕自身の、血液を、只、美しいと思ったんだ。

そして、全ては、まるでテレビを消すように。

ぷつり。















Last updated  February 27, 2006 08:29:23 PM

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