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新英語教育研究会神奈川支部HP

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ダイアナ Diana

授業に歌を
Diana ダイアナ   ♪ポール・アンカ(Paul Anka)


2012年新英研全国大会の記念講演で、秋葉忠利さん(元広島市長)がYou Are My Sunshineを取り上げて、英語の授業に歌を取り入れることを提案してくださいました。「平易でリズムが良く、口ずさめて、ライム(rhyme)の伝統を踏襲し、愛などの人生に関するメッセージがある歌」を扱っていきたいです。
 『ダイアナ』は1957年、ポール・アンカのヒット曲。歌のモデルは「弟のベビーシッター」「Diana Ayoubという高校時代の友人」という説が見つかり、本当なのか、同一人物なのかは不明です。


僕は年下で、君は年上だ
このことを、ねえ、僕は(ずっと)言われている
みんなが言うことなんて 気にしない
だって、永遠に、僕は祈るよ…
君と僕が 自由であるように…
木にいる鳥のように。
ああ、お願い、僕のそばにいて、ダイアナ


ロカビリーの山下敬二郎さんがカバーしましたが、渡舟人(わたるふなんど)さんの訳詞が素晴らしい。


今回のこの歌を4つ展開します。

1)文法で展開:soの使い方
I’m so young and you’re so old
僕は年下で、君は年上だ
ここではsoが重要な役割を果たしています。もしもsoをとって、I’m young and you’re oldにしたら、「僕は若者、君は老人」となり、年上の女性にあこがれる歌が台無しになってしまいます! 
 ソシュールの提案した「統合」「連合」という2つの概念は、soの使い方を理解するに役立ちます。ここでソシュールの「古代建築の柱」のたとえをご紹介します。2002年1月の記事の再掲です。

「ひとつひとつの言語単位は、古代建築の柱のようなものだ。柱は建築物の他の部分、たとえば台輪などと実際に隣り合っている関係にある(統合関係)。しかし、もしこの柱がドリア様式のものだとすれば、それはわれわれの頭の中に、他の建築様式、イオニア式やコリント式との比較を呼び起こす。これが潜在的な置換関係(連合関係)である。」
参考文献:ロラン・バルト『零度のエクリチュール』所収「記号学の原理」みすず書房 1971
以上を私の言葉でまとめますと、
① 連合:説明文向き。対比説明や対句をつくる
② 統合:物語文向き。対比を避ける効果がある。話題を拡散させず、そのものだけに言及できる。

■英語の【形容詞】ではso/too/noなど副詞の有無:
① [副詞がつかない]形容詞:対句的になる。
    ┌I’m young. 「僕は若者だ」
└You’re old.「君は老人だ」
ゆえに、通常、bad(悪い)は、形容詞単独のYou’re bad.(あなたは悪人だ)ではなく、
副詞のnoをつけて、You’re no good.(ダメだ)、
名詞につけて、You are a bad boy.(悪い子だ)のような表現にするのだと思います。
② so+形容詞:絶対的差異ではなく、相対的。
I’m so young and you’re so old.
「僕は年下、君は年上」

■英語の【名詞】ではa/an/someなどの有無:
① 無冠詞:対句的で対比説明に向いている。
数えられる名詞は無冠詞複数形。
I like ┌ apples. 「リンゴ」
├ bananas.「バナナ」
└ pears.「洋梨」
I like ┌ watermelon. 「スイカ」
├ melon.「メロン」
└ pineapple.「パイナップル」
食べ物の好き嫌いは食べるのが前提にあるようで、切り身で食べる場合は無冠詞単数形を用います。(これは2002年1月の記事の訂正です。)
(好き嫌いの話題、小学校英語で扱っていると思いますが、教え方、大丈夫なのかな…。)
② a/an/someなど+名詞:対比を避ける効果がある。
I’ve got an apple. 「リンゴ(1個)」
I’ve got some apples.「リンゴ(2個以上)」
I’ve got some bread. 「パン(ある程度の量)」

■中国語の【形容詞】では「很」の有無:
① 「很」をつけない: 対句を作ることが可能。
「月は東に、日は西に」という語調。
  我矯、他高。「私は背が低く、彼は背が高い」
(私と彼を並列に対比している=対句)
② 対句的に述べないなら、「很」をつける。
  他很高。 「彼は背が高い」(対比していない)
  很好。 「いいね」(英語のso goodに相応)
以上、3つの場合に適用してみました。

2)ライムで展開:
I’m so young and you’re so ( )
This, my darling I’ve been ( )
I don't care just what they ( )
’cause forever I will ( )
You and I will be as ( )
as the birds up in the ( )
語群[free, old, pray, say, told, trees ] 解答省略
リスニングに使えます。英語にはrhyme(押韻)があり、最後の音を揃える脚韻の例としては、Twinkle, twinkle, little star, how I wonder what you are.がわかりやすいでしょう。

3)語法で展開:I’ve been told「言われている」
I’m so young and you’re so old
僕は年下で、君は年上だ
This, my darling I’ve been told
このことを、ねえ、僕は(ずっと)言われている
現在完了の受動態が適切に使われています。I’ve been told this.にしないのはoldとtoldで脚韻を踏むためです。

4)内容で展開
『ダイアナ』と同じく「年上の女性との恋愛」をテーマとした歌では、沢田研二さんの『危険なふたり』(今もって良い歌詞ですので、『ダイアナ』と一緒に紹介したいですね)、キャンディーズの『年下の男の子』がありますが、知っている世代は40代以上でしょうか? 昭和は遠くなりにけり…。
ちなみに英国の女優ジョーン・コリンズ(Joan Collins)さんは5回結婚,2002年に32歳年下のプロデューサーPercy Gibsonさんと結婚に際し,インタビューを受け、“My husband is 32 years younger than I. So what? It saddens me to think that people consider that a problem. It’s trivial.”と語っています。当事者にとっては、年齢は問題(problem)ではなく、些細なこと(trivial)なのですね。
 「愛があれば年の差なんて…」という言い古された言葉もありますが、先日読了した鴻上尚史 さんの『名セリフ! 』(ちくま文庫:お薦めです!)自作の戯曲「恋愛戯曲」のコピー、「恋の始まりに理由はないが、恋の終わりには理由がある」が的確に表しているように、年齢などおかまいなしに恋は始まります。年齢を別れの理由にするかしないかはご当人たちの在り方次第なのでしょう。


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