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新英語教育研究会神奈川支部HP

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黒川泰男先生を偲ぶ(2) 追悼集に寄稿

『黒川泰男さんを偲ぶ詞集』に寄稿

●黒川先生と私
2006年8月31日の朝、朝食を終えたあとのテーブルの上のガラス皿が何も力を加えないのに2つに割れた夜、黒川先生が79歳で亡くなられたことを新英研のメーリングリストで知りました。全国大会が先生のご自宅の近くの大津で開かれたとき、「君は買っていないでしょう…」(すばらしい洞察力!)、「いいよ、あげるよ」とおっしゃって、その年に書かれた『ある英語教師 エッセイ・ライティングの試み』(三友社出版、2001年)を私に下さいました。そのとき神奈川支部の先生方数名がその場にいて、「和田さんは黒川先生のお弟子さんですね」と皆に言われたときから、先生と親しくさせていただくようになりました。
 8月初旬にあった愛知県蒲郡・西浦温泉の全国大会でお会いしたとき、車椅子で奥様とご一緒に参加されていましたが、以前の先生のお顔とは違っていて、最初お見かけしたときは驚きました。他の先生方も同じ思いだったようで、みなさん代わる代わる挨拶にいらっしゃっていました。文法分科会に私の隣に座られて2日間参加され、一緒にお茶を飲んだり、先生がお持ちになった冠詞の本を見せていただいたりしたことが思い出されます。2日目にはお声も少し出るようになって調子を取り戻されたご様子でホッとしていたのですが、最後にお話ししたのは8月11日の先生からのお電話でした。「東京でお会いしましょう」とおっしゃっていたことがかないませんでした。
先生は「雑誌に書きなさい」「早く本にしなさい」「文法は任せたよ」と文法好きな私を励まし、視点を認めてくださったので、どれだけ励まされたことでしょうか。東京でお会いしたときにはお茶の水の丸善で待ち合わせし、近くでランチを食べた後、書店を案内してくださったり、三友社の平田さんや東京の柏村先生に引き合わせてくださったり、先生の著書を貸してくださったり、2年前には段ボール2箱分の蔵書(その中にはQuirkの本も入っています)を譲ってくださったり…、どれだけ視野が広がったことでしょう。これからは魂となって私を見守ってくださると確信すると同時に、今までは私がサボっていても「あなたはよく勉強している」と言ってくださっていたのですが、魂となられた今では先生に「勉強した振り」が通用しないので、嘆かれたり呆れられたりしないようにしたいと思っています。
 最後に、先生から受け継いでいきたいことを3つのキーワードで書きたいと思います。

●ことばとリズム
「春の苑 紅におう 桃の花 下照(したで)る道に 出て立つ乙女(家持)」のような可憐な歌を先生は好まれ、この歌を暗唱なさっていました。万葉集を愛読されていた先生は、いくつか諳んじて日本語のリズムを整えたあとに原稿などを書く、とおっしゃっていました。声に出して読む、ということを英語だけでなく日本語でも先生がなさったように倣っていきたいです。
●ライティング+自己研修
かつてブリティッシュ・カウンシルのアカデミックライティング・コースでネイティブの添削指導を受け、進んで研修された先生は「新英研では自己表現と言うが、まず教師自身が書けなければならない」とおっしゃって、実践されていました。「あなたも通うといいですよ」と勧めてくださいましたので私も2006年に通いました。つねに学徒でありつづけた先生の姿勢を見習っていきたいと思います。
●ロマンチシズム
 先生から譲っていただいた本のなかにはジョージ・エリオット『サイラス・マーナー(Silas Marner)』の簡易版、また友情や愛に関する絵本や名言集があります。心に残る詩やことば、物語を授業で取り上げたいと思っています。
雑誌『新英語教育』2007年2月号に「黒川泰男先生の英文法を受け継いで」という文章を寄稿しました。この文章と合わせてご覧いただけたら幸いです。



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