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新英語教育研究会神奈川支部HP

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2014 田中 茂範さん:英文法

◇ 5月春の1日研修会 5月11日(日) 横浜市技能文化会館 大研修室802

●講演:「英文法にリアリティを与えるエクササイズ-Grammar in Text」
田中 茂範さん(慶応義塾大学環境情報学部教授)
『表現英文法』(コスモピア 2013年)の著者であられる田中先生は、映画、歌、出版物、政治家のことばなど、authenticな英文やspeechの英語を素材に、‘エクササイズ論’の観点から文法学習にリアリティを与えようという話をされました。

1. 田中先生
・ 講演者から:英語力の中核になるのは文法力です。しかし、多くの生徒が文法がわからない、使えないと感じているのも事実です。わかるから使えると橋渡しをするためには、文法のエクササイズが鍵となります。生徒が文法学習にリアリティを感じることができるかどうかがポイントです。理論と実践の両面からよりよい文法学習(指導)について考えていきます。

2. 中学入門期の英語の導入
・ 智学館中等教育学校の中学1年生に授業している。同校のHPによれば、「文法や語彙を機械的に覚えるのではなく、生徒たちが『分かる・使える』英語を身につけることを目的に制作されたオリジナル教材も使用」とありますが、まさに田中氏が作ったPowerPointの教材です。その一部を見せることから講演が始まりました。

3. 1回目の授業
  目的
1 英語の音の感覚をつかもう
2 感情をこめて表現できるようにしよう
3 音と意味のつながりをつけよう

・ 1については <ストレスは母音に>
McDonald’s San Francisco Los Angeles  カタカナ読みとの比較を
・  2については<子音(C)+母音(V)の組み合わせ>
apple アップル / スプラッシュ- CVCVCVCV splash – CCCVC
・ 3についてはまずthud click / flicker glare / blare rumble / chat chirp / crackle rustle / snore sneeze の12単語を2択で日本語訳を選ばせ、CVのつながりの意識化とともに、母音、主な子音の発音の仕方、オノマトピアのおもしろさと3段階で発音させて興味を惹きつけ、一気に12単語を各自発音してみる。さらに<音と身振りから意味を考えよう>ということでGive me a break.(いい加減にしろよ)など2語から4語の16個のフレーズ文の練習を段階を踏んで教え、意味をチェックし、最後は絵や写真を見て、合うフレーズ文を再現する。

4. 2回目の授業
・ 前置詞 in(=空間内), on(=接触), at(=~のところ) のコアな意味を、絵を駆使して示し、つかませる。

5. 3回目の授業
・ 絵を示し、日本語を介さないで、What’s that? It’s a mushroom. Don’t touch it. It’s poisonous. (毒キノコの絵) の一連の表現を理解させ、言えるようにし、下線部だけ替えて、さまざまなものの説明を次々言えるようにする。

6. 田中先生の主張
・ 第2言語学習として日本では練習問題を通して英語を学び、英語力をつけようとしてきたが、「穴埋め」「置き換え」「並べ替え」「和文英訳」「英文和訳」「音読」で達成されるのか、運動選手のエクササイズにはちゃんとした理論がある。だが外国語のエクササイズには理論がない。
・ 文法にリアリティーを!
・ 文法練習問題に狙いを!

●エクササイズ論 
・ Objectives(Why?)- 気づき、関連化、理解、産出、自動化
・ Materials(What)- Authenticity, Meaningfulness, Personalization
・ Media(How?) - 声、文字、音楽、絵、動作、メディアミックスの考え方

7. 文法のリアリティーを与える
Language in Textの視点 ・ テクストの中に文法を見る 
・ 文法がわかることがテクスト理解につながる
・ 文法の実際の使い方がわかる
・ そうしたテクストやマテリアルとして挙げられたものの一例
○would[よく~したものでした]等に注目して→絵本The Giving Tree をグループで翻訳させる。
○前置詞の英語直観を身につけさせる→Obama Speeches, U.S. National Anthem, Imagine, The Grapes of Wrathなどから
○テンス、アスペクトに注目して→サイモン&ガーファンクルWednesday Morning 3 AM she lies here, I watch…, I’ll be leaving, tonight will be…
○テクストを構成する助動詞を見る→ Obama Tokyo Speechに見る助動詞の頻度will 50 / can 30 / must 16 / could 4 etc. 語り手の態度を見る上で最高。
 オバマ大統領の決意の表れ、態度表明をしている
「前置詞やテンスに関して、文法書・参考書はあまり切れ味がよくない」
○仮定法の表現を学ぶwould, could→フランシス・コッポラOutsiders

8. 文法力を身につける練習問題
・ 「日本人は単語知識、文法知識があると言われるが、単語力、文法力がない」
・ 「気づき、理解は大事だが、エクササイズがない」→
○文法問題演習の形式的制約を拡げることが大切
○問題形式の可能性を意識的に探る
○Time とTense とAspectのコアの知識を身につけさせることが必要
present / past / simple / progressive / perfect

9. 質疑応答
・ Q:分詞構文をどう教えるか
A:「分詞」の意味を。知っていれば表現が豊かになる。動的な流れ。
1 When I was shopping in a store,
2 When shopping in a store,
3 Shopping in a store, 意味の違い
Authenticな教材から持ってくる

・ Q:英語だけでの説明どこまで
A:Only Englishだったらおもしろくない。翻訳をはずした授業のやり方を工夫して。しかしトライアルでオルタナティヴないい方法ではある。

・ Q:3P(Presentation, Practice, Production)の教え方が主流な中、先生の位置づけは?
A:本当に教師が魅力的なら日本語があろうと、英語だけでも生徒がついてくる。authentic, meaningful, versatileな教材が。「生徒に活動させる」を旗印にしているような教授法の潮流があるが、かなり教師主導できちんと教えるべきことを教え、モデルを見せてから生徒の活動をやらせるべきだ。
(ただ生徒が動けばいいのではないという、教師の責任というものを教えられ、私にはちょっと耳の痛いお話でした。)


★参加者の感想:
・文法の大切さを改めて感じました。

・本物の素材から英語の語彙(単語)・文法力を身につける良さをあらためて気づかされました。

・とても田中先生が気さくで楽しい方であると知れて本当に楽しかったです。先生のご本「表現英文法」を買わせていただきます。

・大変充実した内容で勉強になりました。文法を使いこなすためにはネイティブ的な感覚が必要だと改めて感じました。この感覚を教えてくださり、とてもうれしく思いました。子どもたちにも納得できる説明ができそうです。ありがとうございます!!田中先生が中学・高校でも教壇に立たれていらっしゃるのはとても身近に感じました。

・この春、先生の『表現英文法』とたたかいまして、まだ頭の中をうずまいていて、クラスに落とし込むところまでいっていません。生教材をどう選び、どう生かすか、課題山積ですが…とても興味深いお話、ほんとうにありがとうございました。

・さまざまな手法を教えていただいた点について、職場で落とし込んで使えるものを教えていただきました。

・文脈の中で文法を教えるというのは大切なことだということがわかりました。画像を見せながら視覚的に理解させることも非常に効果的だと思いました。ぜひ真似してみたいです。

・豊富な例で文法学習を充実させる工夫を紹介いただき大いに参考になりました。Presentation-Practice-Productionの流れ、必要なところでの母語の使用に関しても、理論的な根拠が明確になるお話だったと思います。

・authentic materials(本日ご紹介いただいたspeechや歌など)は確かに惹きつける力があると思います。そういうものを使えるよう、日頃からこちらがアンテナを立てて、よいものを選ぶことができる必要があると思いました。ただ高校の場合は「教科書」があるので、それに加えてauthentic materialsも利用するという形になると思います。日本人は文法力があるのでなく、文法知識があるだけ。そうだと思います。では知識をこえて「使える」ようになるためにはどうすればいいのか。紙面の練習問題をたくさんやればできるようになるのか、それともリアルな場面で使う必要があるのか(EFLの環境でどうやる)など、もっと先生にお話をうかがいたいと思いました。

・ありがとうございました。リアリティをもった授業をしていきたいです!(準備する時間がほしいです~!!)

・内容のある文をとりあげることが大事ということを学び、歌や映画を使うことの有効性がわかりました。ただ、文法については本当に型どおりしか知らなかったので、昔、Grammarの授業でやった事は生徒にとってはつまらなかっただろうと、今思っている。

・いろいろ考える材料をいただきました。今後も導いていただきたいです。先生のご著書のうち、「コミュニティ」とか「対話」とかグローバルな視点で書かれた章もおもしろかったです。「言語とコミュニティ」という点からもお話しください。言語教師には欠かせない視点だと思いました。

・大学の先生という観点から文法のことをお伺いできて良かったです。“生きた英語”から文法を学ぶということは、ときとして難しいですが、それを切り口に生徒にたくさんの英語にふれてもらえたらと思います。

・Authenticな英文に普段あまり触れていなかったが、今日、引用して頂いた部分だけでも感動した。たった一文に込められた背景のイメージや物語が浮かんでくる。各文法の一覧表→私も学校でもらっていたら、生きた英語を身につけることができたと思う。

・自分自身が前置詞は苦手で詳しく教えることを避けていました。文法は感覚なのでいかに納得させるか難しいと思いますが、前置詞の使用はとても多いのでもっとちゃんと向き合おうと思いました。

・初めて講演を聴きました。聴くことができて良かったです。ありがとうございました。

・文法学習にリアリティーを与えるための様々なノウハウを実例を示して紹介していただき、充実したひとときでした。ねらいのあるエクササイズを3つの基準を意識して行うことや、教師自身が一つ一つの文法事項を本質的に理解してわかりやすく提示することが大切だとわかりました。

・学ぶべきところが多くありました。

・現実に即した題材を用いて教えたいと思います(生徒の理解を得られるように)。

・指導者である私たちが全体像を的確に理解し、文法項目を自分たちのものとして気づかせながら提示し、創作させることが大切なのだと感じました。これからの教訓にしたいと思います。

・英語表現IやIIをどう教えたら良いか(例えば、過去形と現在完了形の違いの理解のさせ方など)。英語表現Iの教科書の大きな文法項目にしぼって、「文法学習にリアリティーを与える」実践の仕方をもっと聴きたかったです。

・日本語の翻訳が言葉の気づきになり、本人の総合的な言語能力を高めること、英文法の本質を理解するには日本語で教える方が良いという新鮮かつ、説得力のあるお話でした。


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