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新英語教育研究会神奈川支部HP

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2001.5 会報87:oral C、10年間まとめ

2001年5月春の1日研修会(会報87)
●実践報告:「高校生の知的欲求に応えるオーラルコミュニケーションの授業」
萩原 一郎さん(県立白山高校)
この3月まで教えていた前任校・県立港北高校での10年間をまとめていたきました。ペアワークで「高校生が携帯電話を使うのはよいと思う(または、よいとは思わない)、なぜなら~。あなたはどう思う?」とディベートをしたり、参加者もactivitiesを楽しみました。

(1)港北高校
●【港北高校の現行カリキュラム】
・ 1年次…英語I(3)、オーラルコミュニケーションB(2)
・ 2年次…英語II(3)、ライティング(2)
・ 3年次…リーディング(3)、ライティング(1)
・ 自由選択…読解(2)、文法(3)、英作文(2)、オーラルA(英会話)(2)
・ 「オーラルA」の基本的な考え方:選択する生徒は大体10~15人程度。2クラス分割、日本人教師が1人or2人で担当。2時間連続授業(1時間はコンピュータ室でビデオ[テキストOnly in America, Oxford]を使ってのリスニング中心の授業。もう1時間はAETとのteam teaching、handoutを使用してスピーキング中心の授業。
・ 実態:選択する生徒は年によってかなり異なる。選択の動機は「実際に使える英語を学びたい」「英語が話せるようになりたい」「外人の先生もいて楽しそう」「面白そう」など。

(2)10年間
●【この10年間の授業づくりの変遷】「オーラルA」の授業担当は、赴任して2年目。前任者の実践はあまり参考にならず、ほとんどゼロからのスタート。
1) 前期5~6年間
・ その場しのぎの授業…授業前日に何をやるか悩む
・ 年間の到達目標が不明確
・ AETの作成教材も多用する
・ リスニングもテープを使った「答え合わせ中心」の授業で単調
2) 後期4年間
・ 文化祭での英語劇上演
・ リスニングテキストをテープを用いたものからビデオを用いたもの
・ ハンドアウトの固定化→年間シラバスの作成
・ あくまで日本人教師主体で、AETの教材を穴埋め的に使う
●この頃になると、生徒の授業の様子やアンケート結果などから、「使える」教材がいくつか固定されてくる。4年前から文化祭で英語劇を上演、英語劇が年間の授業の核になる。
●リスニング用テキストのOnly in America (Oxford)は内容面では物足りないものの、各エピソードにおちがあり、プロの俳優が出演していて楽しめる。テキストのexercisesも多彩で、ペアワーク、story tellingに結びつけられたり飽きがこない。
・ リスニングの授業はコンピュータ室で行い、生徒個別の画面で映像を見られる。
●年間のシラバスもほぼ固定し、冊子にしたhandoutを前もって生徒に渡し、余裕をもって授業ができるようになってきた。また、いくつか課題予定のない時間を作り、そこで授業時間の調整をしたり、JTL、AET投げ込みの教材を入れられる余地を残した。

(3)構成と狙い
●【年間の授業の構成と狙い】
・ 場面別の表現は扱わない…基本的に「サバイバル・イングリッシュ」を否定
・ 様々な活動で英語を話すことに慣れることを目標…授業は年間20回しかない
・ 「オーラルA」(日常会話)よりも「オーラルC」的な内容を目指す
=発展(recitation, speech, debate, discussionなど)
●【年間の活動の柱を5分類】drama/speech/discussion, debate/story telling/others
★年間の活動の柱に合わせて年間の活動を散りばめる
1)《drama》感情を込めた表現発表を通して、声を出す楽しさを味わう
・ Expressive reading, Expressive reading(skit)[4月~5月]→Recitation[6月末]→文化祭での英語劇上演[9月]
2)《speech》 個人的な話題から、自分の意見を言えるスピーチに
・ My Name [5月]→Show and Tell [6月]→Recitation [6月末]→Speech and discussion [1月]
3)《discussion, debate》賛成/不賛成の表示と理由づけから意見交換、debateのまねごとへ
・ Asking and Giving Opinions [6月]→ Decision at Sea [10月]→Debate[11月]→Speech and discussion [1月]
★Decision at Sea [10月]は、7人が沈没船にいて、4人だけが救命ボートに乗れる状況。それぞれの人となりを英文で読み、誰を助けるか決めるという教材。
[会報担当より:実際に教室でやってみると、日本語で話し合いも取り入れ、安易な結論がでないところが興味深かった。「結婚していないから(助けなくて)いいかな」「いやいや、そんなことはない」という感じでbecauseで突き詰めても結論が出せない。そう聞いて、ホッとしました…、人を裁く、人を選ぶというのは大きな問題ですから。]
4)《story telling》ビデオテキストOnly in Americaを使っての日常的練習→さまざまな写真を使ってのstory making
5)《その他》Circumlocution, Project (Making TV Commercials)
・ 「言えてから、書ける」が大切!=日本固有のもの(納豆/扇子など)を英語(言い換えの手法 Circumlocution)で言う+書いてまとめる活動へ
・ AETのMr. Brandonと日誌のやりとり:ブランドンさんのみが内容をチェック。
・ Brandon will be the only one reading your journals, so please be as frank as possible.
★Circumlocutionは、言い換えの手法。日本文化を紹介する際にも有効
すきやき:Sukiyaki is a kind of beef stew. We use soy sauce, sugar and sake for flavoring.
★Making TV Commercialsは(例えば菓子のリッツの)宣伝コピーを考えてビデオ撮り。

(4)評価
●【評価】
・ 出席日数
・ 授業での発言回数(とその内容)
・ 定期テスト(年2回)…リスニングテスト(40分)とライティングテスト(10分)
・ 課題(AETとの交換ジャーナルなど)の提出回数
・ 授業での活動内容(スピーチなど)
●1クラス8人程度なので、授業をやっていれば、生徒の話す力は自然と見えてくる。定期テストで、聞く力と、10分間で英語の説明を書く力(rapid writing)をみるようにした。
実践例 【Asking & Giving Opinions】
1) B4版プリントで:モデル文を学習=自分の賛成・反対を表明+その理由に付け加える
・ Useful Expressions
1. Agree
I think Kyoto is a wonderful place. ? I think so, too.
I don't think she's a good singer. ? I don't think so, either.
In my opinion, we need to learn math. ? I agree (with you).
2. Disagree
I think American football is boring. ? I don't think so.
I think Japan should import more cars from the United States ?I don't agree (with you).
3. Asking opinions
What's your opinion of nuclear energy? ? -I think it's necessary. Oil and gas supplies are running out. Nuclear energy is cheap and clean.
What do you think of nuclear energy? ? It's too dangerous. We can do without nuclear energy.
2) B6版プリントで:ペアワーク(テーマについて「尋ね方」「答え方」の型に合わせ練習)
・ テーマ例:I ( think / don’t think ) it is all right for high school students to use cellular phones.
I ( think / don’t think ) men should equally share the housework with their wives.
I ( think / don’t think ) city life is better than country life.
・ (4つのテーマを別々にプリントで与えられたのでインフォメーションギャップがあり、実際にやってみた参加者は「緊張感を持って相手の言うことを注意深く聞けたのでよい」という感想があった)
・  尋ね方: I ( think / don’t think )…, because …. What do you think?
・  答え方: Well, I ( agree / don’t agree ) with you, because …
【AET提案のstory tellingの授業】
《procedure》
1. AETがカードの両面に雑誌から切り抜いた絵を貼りつけたものを多数用意する。
2. AETが数枚のカードを引き、それを使ってモデルとなるストーリーを提示する。
3. ストーリーを作るときの注意点を説明する。
a. 過去形を使う b. link wordsを使う(First, Next, Then, Finallyなど)
4. 各ペアにカードを数枚ずつ配る。
5. 各ペアでストーリーを作る際に、JTL, AETはペアを回り、アドバイスを与える。
(単語などのメモをとることはよいが、ストーリーを書くことは厳禁)
6. ペアごとにストーリーを発表する。
《生徒作品の例》(口頭で言ったものをそのままtranscribeしたもの)
1. First, there was a giraffe and a monkey. They can use computer very well. They e-mailed each other. Then, they make a promise to meet. Finally, they met in Oregon.
2. First, his name is Nick. He works in German bank. One day, Nick was in a car. He meets a panda. Panda said, “I'm hungry. Do you have any food?” Nick said, “No.” Then, Nick thought I was killed by a panda. The panda was very angry. Then he ran away by airplane and ship.

■レポーターの感想
本当は3~4回分にもなる報告を1回でまとめてやり、急ぎ足で分かりにくかったと思います。ワークショップとビデオを入れて、多少バリエーションを出したつもりですが。今後は転勤先の白山高校で生徒のレベルに合った教材開発を時間をかけてやるつもりです。

■参加者から出された感想
□ 萩原先生の前任校での集大成が伺えて良かったです。多くの試行錯誤の中からエッセンスがまとめられていました。順序立てた取り組みで、生徒たちの達成感が得られていました。
□ 先生の熱心な取り組みの数々をご発表下さり、ありがとうございます。参考にさせていただきます。
□ 10年間の積み上げた成果の豊かさを感じました。
□ 10年間の実践の中でベストのものをそろえた今回のレポートは(まねできないし、まねをしても私の生徒には合わないと思いますが)素晴らしい。私も「見通しを持った授業」をしたいと思います。
□ 以前もワークショップで感情表現とか部分的な練習活どに参加しただけで面白かったですが、今日は会話というかディベートだったので、つい夢中になってしまいました。同じように生徒をのせられると良いなあと思います。
□ 萩原さんの語り口に魅せられました。日常会話では多弁とはいえない萩原さんですが、プレゼンはわかりやすく、ワークショップも織りまぜて楽しませていただきました。アイディアやオーラルコミュニケーションの計画の立て方など、盗ませていただく内容がたくさんありました。
□ ぜひ萩原先生にオーラルコミュニケーションの教科書を作ってほしいです。
□ 実際に現在オーラルコミュニケーションBを1年生でやっているため大変参考になりました。ディベートなどは「高嶺の花」と思っておりましたが、先生の提示で「できるかもしれない」と希望がもてました。
□ 書く活動の中の準備に工夫されているところが参考になりました。生徒が自分の考えをまとめ、表現する機会は日本語ですらなかなかないのではないかと思うこともあります。ですから英語で表現する前段階として、準備する必要を感じています。ありがとうございました。
□ 中学の授業や英語部の活動で活用できる教材づくりのヒントをいただきました。ありがとうございました。またディスカッション・ディベートについては生徒たちが自分自身の考えを持ち、人の考えにも耳を傾け、結論を出すことが出来ないと感じたという点について、まさしく英語教育では人間(関係)教育を扱っていくことができるということを再確認でき、とてもすばらしい結果につながる授業をしていると痛感しました。


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