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2025.01.04
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​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​真逆の方向性を向いている「技術」と「科学・純粋数学」

昨年は、自分自身の研究活動や私生活等、個人的な環境においても、また世界情勢の主立った動きが展開される舞台においても、本来常識的な機能を果たすはずの様々な仕組みが、幾多もの不具合や露骨な矛盾を起こし、次第に機能不全に陥っていく様子が取り立てて印象的だったように感じます。そういった現象の背景を探っていくと、ここ数十年大きな注目を集め、全世界の人民の生活に多大な影響を及ぼしてきた、IT技術や人工知能等、様々な新技術が果たしている役割、特にその技術と、多種多様な形の「偽装」や「虚偽」、平たく言うと、「ウソ」との、抜群の相性の良さが目立ちます。

そもそも「技術」というものの発展は、思えば本来あり得ないはずの事象を、仮想的に実現する「技」であり、即ち「ウソ」の創出とは切っても切れない関係にあるものです。例えば、古くは文字の発明によって、ある言葉を発した人間が物理的に遠く離れたところにいたり、何十年、何百年も前に死亡していたりしていても、その言葉や、その言葉が内包する知見や文化を忠実に再現する力を有していて、人類に多大な利益を齎してきた「良質」なものであるとされるが故に、「ウソ」といったような批判的な響きのある呼び方は通常、文字の発明の解説ではお目に掛からないわけです。しかし、多くの人間が偶々持ち合わせている主観的な、恣意的な判断基準からして「良質」なのか、「悪質」なのか、という「色眼鏡」を外して眺めてみれば、文字の発明にしても、近年の、IT技術や人工知能にしても、巧妙な形で、仮想的な現実、即ち、平たく言うと「ウソ」を創出する技であることに変わりありません。

誤解がないように言っておきますと、私は決して技術の発展を批判しているわけではなく、この文脈では指摘するまでもないことですが、私自身も、皆さんと同様、無数の技術の恩恵を受けてこれまで生きてきた人間の一人です。問題は、

「技術」やそれへの科学や数学の「応用」と、
純粋数学を含む自然科学

が、多くの文脈では同一の方向性を向いている取り組みであるかのように語られる傾向があり、実際、純粋数学を含む自然科学の発展によって「応用」という形で新しい技術が開発されたり、逆に、IT技術を含む様々な技術の進歩によって純粋数学を含む自然科学の研究が進展する、といったような場面は少なくないわけですが、もう少し深いところまで掘り下げて、丁寧に繙いていくと、

 「ウソの創出」 対 究極的な真実の解明

という面においては、「技術」と純粋数学を含む「自然科学」はむしろほぼ真逆の方向性を向いているものであるという実態に、否応なく遭遇してしまいます。


​人工知能の発展と、学問、特に純粋数学の研究への影響​

昨年、人工知能等の新技術の発展が齎しつつある、学問、特に純粋数学の研究への脅威を強く意識させられる場面が何回もありました。大学生が提出したレポートの作成にChatGPT等の人工知能が不適切な形で使用されたことが話題になったり、私自身が編集に関わっている数学雑誌関連の仕事でも、人工知能で作成された原稿の扱いを巡って議論が交わされました。もちろん、コンピュータそのものは、今となっては、論文の作成や組版に当たり前に使用されており、数学の研究においては技術的な計算や、近年では、証明の点検にも使用されております。そのような業務では、人間が「主」で、計算機や人工知能が「従」=「補助」、あるいは別の言い方をすれば「知的な肉体労働」という形で、役割分担が明確に示されている場合は、特に問題ないわけですが、問題は、「主従関係」が逆転し、人間が内容を事実上余り理解あるいは認識していない形で、機械が実質的に論文を作成してしまう場合ということになります。

もちろん数学の研究においては、不適切な内容の論文の作成は、人工知能がなくても、人間が実行することは十分に可能であり、残念ながら宇宙際タイヒミューラー理論の場合、実際の宇宙際タイヒミューラー理論との論理的関係性がない「理論の改造版」が、​解説論文[EssLgc]​ §1.8, §1.10や本ブログの​記事​、それから昨年公開した​報告書​でも詳しく解説している通り、既に何年も前から、理論の数学的知財権に対する露骨かつ重大な侵害という形で、数学界において大変な混乱誤解を生じております。

このような不適切な内容の論文については、きちんとした数学雑誌の査読によって適切に処理するという、数学界の本来の枠組が用意されているわけですが、近年では、人間の数学者が執筆する論文だけでも、この本来の枠組の対応容量を超過していて枠組の不具合や綻びが既に少なからず現れているわけです。一方で、不適切な内容の論文は人工知能によって想像を絶する勢いで量産することが技術的に可能になり、数学界の従来の、数学雑誌の査読を柱とする体制にとっては大変な脅威となりつつあるように私は捉えており、この脅威については先ほど言及した​報告書​の中でも警鐘を鳴らしております。


世界情勢への影響

昨年と言えば、世界の舞台では、米国の大統領選挙に関連した話題が、報道全体の中でも大きな比重を占め、SNSや人工知能の使用が絡む情報操作によって生じた様々な歪みや矛盾が注目されました。昨年(2024年)1月の​ブログ記事​では、理性や論理的思考による真実の追求と対峙するものとして、

「権力構造と癒着する信仰」や、それに伴って発生する
「法の支配・秩序」といったような基本的民主主義的原理の放棄

について論じましたが、昨年の大統領選挙を巡る報道等を観察して強く印象に残ったもう一つの主立った側面は、理性による真実の追求とのもう一つの大きな対立軸としての、ネットや人工知能等の新しい技術による「ウソの創出・拡散」、つまり、そういった「技術」と「ウソ」の抜群の相性の良さでした。もちろん、キリスト教系ナショナリズムや、大統領の絶対免責権を巡る議論等、昨年1月のブログ記事で取り上げた「権力と信仰」や「法の支配」の放棄といったようなテーマは昨年の大統領選挙でも今でも顕著な流れの一つにはなっていますが、一方で、

・技術的発展を支える豊富かつ安価な労働力を追求する技術系の大富豪たち=いわゆる「テク・ブローたち」の影響力の拡大や、
異文化・異民族に対する拒絶反応から、それらに対して適度の距離を維持することを声高に主張し、それによって生じる(「同一政治勢力の仲間」であるはずの)「テク・ブローたち」との対立

も、中核的なテーマの一つとして認識されるようになったようです。

​​​​​​​​​​​宇宙際タイヒミューラー理論を巡る、つまらない理由による混乱の分析においては、
​​​​​
・理性や論理的思考の放棄に繋がる、「信仰」と「権力」の癒着や、
・理性や論理的思考を阻害するものとしての、「法の支配・秩序」等の基本的民主主義的原理の放棄、それから
・ネットやIT技術の使用によって拍車が掛かりがちな「偽情報(=つまり、ウソ)の創出と拡散」

というテーマについてこれまで度々​本ブログ​でも指摘しているわけですが、余りにも完璧な相似形のような形で、同一のテーマたちによって必然的に発生する社会的・政治的力学が、米国の大統領選挙でも勢いよく無意味な混乱や激しい矛盾を量産している実態がとても印象的でした。


純粋数学の研究の重要性

先ほどは様々な関連したテーマについて論じましたが、世界情勢を見渡すと、(欧米、特に米国の社会・政治においてもそうですが、別に欧米、あるいは米国に限った現象ではなく、世界的に見てもそうですが)異文化・異民族に対する拒絶反応や、それによってあの手この手(=具体的には、国境や移民制度あるいは、場合によっては軍事行動)で、異文化・異民族に対して適度の距離を維持しようとする試みは、上述の諸々のテーマの中でも、かなり中核的な存在であるように感じます。以前の「心壁論」に関する​ブログ記事​では、この現象と、宇宙際タイヒミューラー理論における

フロベニウス的構造(=越境することが定義上不可能な、境界・壁越しにある数学的構造・情報)と、
エタール的構造(=フロベニウス的構造と比べて情報量は多少落ちるものの、境界・壁越しの共有が可能な数学的構造・情報)

という現象の間にある、深い構造的類似性について解説しております。つまり、この現象に対する最も建設的な対応は、

・境界線の必要性の否定にあるわけでもなく、また
・憎悪や残虐な暴力行為・軍事行動にあるのでもなく、

むしろ、実態の丁寧な分析・研究の上に立脚し、実態の内在的論理構造からして適切な概念的な仕組みを構築することにあるということです。

上で取り上げた諸々のテーマの中でも、異文化・異民族に対する適度の距離の模索が特に中核的なテーマであるということですが、一方で、

理性や論理的思考の放棄・阻害
「信仰」と「権力」の癒着
「法の支配・秩序」等の基本的民主主義的原理の放棄、それから
・先進技術を駆使した「偽情報(=つまり、ウソ)の創出と拡散」

といったようなテーマ・不具合は、「異文化・異民族に対する適度の距離の模索」の失敗に起因する副次的なものであるという側面が濃厚であり、それらのテーマ・不具合には、他の側面が完全に存在しないわけではない(=例えば、経済的な要因もあったりする)かもしれませんが、一般に認知されているより大きな比重を占めているような印象があります。

いずれにしても、近年のITや人工知能のような技術は、人類に多くの利益を齎す面もある一方で、虚偽の創出・拡散や、様々な政治的力学と癒着しがちであるという特性・危険性も秘めています。一般社会の喧噪や時間感覚と一線を画した上で、性急を排し丁寧にじっくり、完全に独立・別系統の環境と時間の流れの下で、偶々とある特定の時代や社会において発生している政治的力学や判断基準=「色眼鏡」からして不都合とされるもの​​​​​​​​​​​​​​​​に対しても、


  究極的な真実力強く向き合う「科学」、
  そして中でも如何なる​​物理的制約にも束縛
  されない「純粋数学の研究」が、人類社会
  の​精神衛生にとって如何に(それこそ食料
  や空気に迫る位の重みをもって)重要で
  あるか、

昨年は改めて意識させられた一年でした。

近年は、世界的にもそうですが、特に日本国内において、大学や研究機関の財政状況等の経営難によって、大学の新しいビジネスモデルを模索する中で、純粋数学の研究の重要性を十分に認識できずに、人工知能のような応用に繋がる研究を重視する傾向が目立ちます。しかし、応用と結び付かない純粋数学の研究は、「応用と結び付かないから事実上不要である」わけではなく、むしろ

 結び付かないが故に、「虚偽」との相性が抜群
 な、人工知能等の技術​​には本質的に果たし得ない
 役割、即ち、人類社会の諸々の有害な政治的力学
 に縛られない貴重な道標となり得る
が故に、人類
 社会の精神
衛生にとって必要不可欠なものとして
 理解されるべきである

ことと、そしてその理解の延長線上で、

  特に数理解析研究所が、日本国内において
  も、世界の舞台においても、​​如何にかけがえ
  のない、戦略的な価値が飛び抜けて高い、
  重要な施設であるか、

ということも、昨年、年中報道を騒がせた上述の諸々の事象を振り返り、改めて痛感させられた次第です。​​​​​

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Last updated  2025.01.04 01:04:17


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