はたして、若い力は伸びるのか
今、日本の大学も遅らばせながらの機構改革の真っ最中。福岡の九州大学も、文部科学省が推進する科学技術振興調整費「戦略的研究拠点育成プログラム(通称スーパーCOE)」の事業として、この度「ユーザーサイエンス機構(USI)」が設立された。先週も何度目かのその機構の説明を受けたわけですが、このプログラムも大学機構改革の一環として、ユーザー(説明では=生活者、企業、学校、各種団体、地方自治体、国家)が持っている感覚を基盤とした「感性と技術」の融合する研究機構として取組む組織化と、私は解釈したつもりですが、まだまだこれからいろいろな要素を取り入れて組み立てる必要があると感じた。まずは地元のこのような産学連携の試みをバックアップしなければ。現在、産学連携の大学改革が世界規模で進行している。隣の国、中国のソフトウエアパークと国立大学に関するレポートを一橋大学の関満博教授が書かれているのを少しご紹介したい。『大連は日本語人材が多く、日本企業誘致を当初から視野に入れていた。個別の土地の分譲も行うが、大半は貸しビルを企業の要望に応じて建てている。すでに第一期の3平方キロは満杯。第二期として、さらに郊外の西側の旅順に近いところに第一期の3倍を超える11平方キロの計画を進めていた。第二期は自然環境を活かした「緑のシリコンバレー」を目指していた。億達総公司が全額出資する大連ソフトウエアパーク株式有限公司が事業主体である。この大連ソフトウエアパークの中心的な施設が東軟情報技術学院(正式には、大学の東北大学東軟信息技術学院と、専門学校の大連東軟信息技術職業学院のふたつから構成されている)という私立大学である。この間の事情を振り返ると、以下のようなことになる。中国は80年代末は中央の財政が苦しくなり、大学の予算を半分に削減し、資金が必要ならば自分で稼ぐということになった。ここから中国の産学官連携、大学発ベンチャーが活性化する。その頃、日本のアルパインが瀋陽の東北大学を訪問。コンピュータ・エンジニアリング研究室のレベルの高さに驚いたアルパインが91年に合弁に踏み出した。それが、その後、96年に日系企業として初めて上海証券市場に上場した東大アルパインである。これをきっかけに東北大学は世界の有力企業との合弁を重ね、97年、瀋陽郊外に東大ソフトウエアパーク(NEU SOFT PARK,約50ヘクタール)を建設している。全面芝生を張った超モダンなソフトウエアパークであった。そして、全体の組織を東方軟件(東方ソフトウエア)という持ち株会社の下に編成し直す。世界の有力企業は東方軟件と合弁し、ソフトウエアパークに立地する形となった。超モダンな研究施設が点在する東大ソフトウエアパークを初めて見た時(99年)には、正直、目が眩んだ。この東方軟件の出資者は東北大学(3分の1)、従業員持ち株(3分の1)、そして、残り3分の1は、東北大学と出身母体(国家冶金部)が同じ上海の宝山製鉄所(宝鋼集団)となっていた。なお、この東大ソフトウエアパークには東芝、オラクルなどの合弁の会社が設立されており、約4000人のソフト技術者が働いている。事業をリードするのは、かってのコンピュータ・エンジニアリング研究室長で現東北大学副学長の劉積仁氏(55年生まれ)である。‥‥その後、約370キロ南の中国東北部の玄関口である大連に関心を寄せ、ソフトウエア技術と日本語に注目する先の東軟情報技術学院を大連ソフトウエアパークの中に開学(2002年)している。出資者は東方軟件(60%)、大連ソフトウエアパーク(40%)である。4年制私立大学の東北大学東軟信息技術学院と3年制の専門学校である大連東軟信息技術職業学院から構成されている。在校生はおよそ8000人、05年6月(先月ですね)から、ソフト技術と日本語を学習した卒業生が社会に出てくる。‥‥以上のように、中国大連では、民間企業が壮大なソフトウエアパーク事業に乗り出し、また、国立大学が民間企業を経営し、さらにソフトウエアパーク技術と日本語に特化する情報系の私立大学を設立しているのであった。日本の大学は足元にも及ばない。‥‥』といった、日本の現状を知るものとしては頭の痛い内容です。ちなみに、他の資料から、日本の大学の分布をみると約700の大学の内、200大学は首都圏に集中しており、500が他の県で分け合っていて、中には国立、県立、そして私立1~2校というところもある。それに対して中国は全国1000大学の内、首都北京には70大学、上海も50大学あり、地方の省都でもいずれも20~30大学が、総合大学、理工系大学、医科大学、師範大学、経済大学、芸術大学、外国語大学、体育大学などの大体フルセットで設置されているとのこと。読売の特集によると、スイスの調査研究機関「国際経営開発研究所」(IMD)が発表した世界競争力ランキング(2004年度板)の「大学教育が経済のニーズに合っているか」という項目で、60カ国中日本は58番目という恐ろしいデータがある。IBMの新入社員教育で、韓国は3ヵ月、中国は2ヵ月、そして日本は5~7ヵ月研修期間がかかるという。「日本では高等教育を通じて、プログラミング言語やソフトウエア・エンジニアリング技法など、会社で使用できる知識を習得する仕組みになっていないので、基礎から取り組む必要がある」というような企業の評価になっている。これは日本の大学だけの話しではけっしてない。根本的なところから、我々は取り組まなければならない時期に来ている。