Shionの部屋

2008/07/10(木)22:27

■文科省小冊子『 生きる力 』■

▲▽ 教育 ▽▲(15)

画像は、文部科学省が最近、小中学生の子供を持つ全世帯に配った「生きる力」という小冊子です。 ここ数年間の削減プログラムは将来、「もっとも悪しき暗黒の数年間」として日本の教育史上に名を残すと思いますので、方針転換を告知する政府発信のこの小冊子の画像を、記念に貼っておきます。 (記念ってのも自虐的な表現ですが。)   リョウ(17歳):「この表紙、『かかかかか・・・』って読めるな。」 私 (=母) :「『か』じゃなくて、『力(ちから)』だよ~。」 リョウ(17歳):「わかってるよ。何か笑えるな、この軽い表紙。」    ★   ★   ★ この小冊子が配られた趣旨は、 「3割削減プログラムっていうのを試しにやってみたら子供たちの学力が国際的な水準から見て低い状態になってしまいました。色々問題があるみたいだから、改善してみます。時間数とか演習とか、増やしてみます。」 という内容を、保護者に伝えることだろうと思っていました。 そのつもりで、 「こんな火をみるより明らかな悪政に子供や現場の教師を巻き込んでおいて・・ 詫びのひと言でも書かれているだろうか。」 と思いつつ、表紙を開いたのです・・・が。 表紙をめくったとたん、一行目に大きく 「生きる力」をはぐくむ という理念は これまでも、これからも大切 と強気のひと言が書かれていて、唖然。 貴重な1ページを、このたった3行の言葉で消費・・ この冊子を全国に配るのに、どれだけ税金がかかっているんだろう。 かけがえのない血税対比、もっと真剣に紙面を構成して欲しい。 ページごとに背景のベタ塗りカラーを変えるなんて、お金をかける必要は無いのでは・・ 空間だらけの構成。15ページも要らないよ~。 脱力しつつ読み進みましたが・・・ その後も最終ページまで続く、強気というか、終始平静を装いながらこれまでの責任を認めない、 それでいて言い訳がましい調子に、ウンザリ。 一番大切なことなのに、たったのひと言も言及されていませんが、 この削減の一番の問題点(=もうすでに卒業した子供、適齢期に学習機会が与えられなかった子供へのフォローが一切無い)にかんしては、「この時代のツケ(=政府の失敗)は全額子供本人が支払え」ってことなのでしょうね。 この小冊子は、在学期間がもう長く残っていない子や、悪政の犠牲となった卒業生に対しては 言外に「あとは野となれ山となれ」と言っているようなものです。 政府によるフォローは期待はしていなかったけど、このみごとな責任者不在っぷりには、ため息が出ました。 削減期間中のわずかな数年間に在学した子供たちが一生涯、ことあるごとに 「削減世代」と呼ばれ、差別され続けるかも知れないことに、 政府関係者は、ほんのちょっぴりでも心が痛んだりするのでしょうか。 ・・痛むわけないか。自分たちはありえないくらいの大金を貰って辞めていく、輝かしい未来しか無いもんね。 せめてこれに関わった官僚には、責任を感じて天下りを自粛して欲しいものだと思います。    ★   ★   ★ この3割削減プログラムが、そう遠くない日に中止されるだろうということは、 実施以前から専門家によって指摘されていたことです。 ですから 現在子供を持つ親で この小冊子の存在自体に驚いている人はいないと思います。 実際の話、政府が「これからこうするから。」と書面を放ってくれば、親は黙って受け取るしかありません。 でも、と私は思います。 この一大事の当事者である、限られた数の子供たちの親は、この失態に対し、 もっともっと怒っていいんじゃないか、って思うんです。 小冊子に書かれた、「生きる力」という、時代の人気者の、7人のサイン。 それを全ページにサブリミナルのように繰り返し散りばめ、最後のページで 『(有名人7人の方に)「生きる力」の趣旨にご賛同いただき、「生きる力」のサインをいただきました』 と締めくくる。 これは「非常に狡猾なすり替え」だ、と私は感じました。 素直で努力家でアクのない、今をときめく時代の人気者の有名人ばかりを集め、 直筆のサインを繰り返し見せ、「尊敬」の気持ちを思い浮かべさせる。 そして 「運命に対し真摯で従順であった人は、このように偉大になるのだ」 と連想させることで、 そもそもこの冊子が存在するという大問題への集中力を削ぎ、 政府の失敗に対する怒りや責任問題への疑いが心に浮かばないようにする作戦・・ まるで催眠商法か、巧みなマインドコントロールのようです。 人間は、努力を重ね成功した人や、他者ために身を削っている人には反射的に頭を下げ、 その人の言葉に 尊敬の念を抱き、素直に聞き入れるようにできています。 そういった人間心理の特徴を、この小冊子はたくみに利用しているように見えます。 今回、多くの人が、こういう狡猾なやり方をされたことで、 この小冊子が持つ重大な、問題の本質が見えにくくなってしまったはずです。 有名人のサインによって、本来心に浮かぶはずの疑問や怒りが封じられ、 うまく誤魔化され大人しく納得してしまった人は多いのではないでしょうか? (※参考までに・・私の日記から、『3割削減の問題の一端が実感できるデータ』を載せた記事へ、リンクを貼っておきます(↓) 「■ 3割削減が4年生から奪ったもの ■」)    ★   ★   ★ 第二次世界大戦に突入する前、政府は何年もかけてじわじわと国民から思考力を奪っていき、 国民を戦争に駆り出すことに成功しました。 それは、「言いたい事を言う人を社会から抹殺する」という方法と平行して、 「政府に疑問を持たない国民を育てたこと」で達成されたものです。 国の運営に疑問を持たずただ従順であった結果、ある日、 やっと育て上げた息子や、夫の命が・・そして自宅で暮らす、罪の無い小さな子供の命さえも・・戦争によって奪われていったのです。 多くの母親は我が子に対し、膝小僧の小さなすり傷にも心を痛め、ちょっと熱を出しただけでも大病の危険に怯え、この子の命に代わるならば自分の命など喜んで差し出そうと思いながら子育てをしていると思います。 そんな我が子が、ある日、戦争に連れて行かれ・・そのまま死んでしまったら? そんな政府を止められなかった自分を「後悔」なんて軽いものを背負うだけで許せますか? 私は母親になった今、遠くの世界の出来事だったあの大戦を近くに引き寄せ、 未来への責任とは何なのか、考えています。 もちろんさきの大戦を、当時の親達が声をあげただけで防げたとは言いません。 言いたいことを言えば、特高警察の私刑によって殺される人も出た時代ですから。 しかし未来を変えるカードは、いくばくかは親たちの手の中にあったはずです。 私はあの当時の母親たちの、胸をえぐられるような・・まさに生き地獄のような後悔を、 同じ国に住む母親として けっして忘れてはいけないと思います。 このやり方に、政府の今のありかたに、賛同するのか?NOと意思表示するのか? 大切な子供たちの未来を真剣に考えると、私は黙っていられない。 人間の一生には限りがあります。 学ぶことに適した子供時代は、人生にとって貴重な、短い、黄金の日々です。 本来学べるはずだった教育を奪われ育ったことは、 子供たちにとっては「可能性」という命の一部を 知らぬ間に奪われたも同然です。 あれほど危険が叫ばれ、教師や有識者からの疑問の声が多かったのに、 3割削減を強行し、子供たちと家庭と現場の教師に悪政を押し付けた政府に、 まるで学生の実験のようにアクションを起こして「やっぱり訂正」とのうのうと変更し・・ 自分達は何ら痛むところのない、政府の当事者意識の無さや、 子供たちの未来への責任感の無さに、 私はこの小さなブログで、NOと言いたいです。 子供たちの未来は、私たち母親の手の中にあります。 あの忌まわしい大戦の前にも、母親たちの手の中にあったように。 私は、私たち母親は、もっとも賢くもっとも真摯な、未来の監視者であるべきだと思います。    ★   ★   ★ 【追記】 そうそう、この冊子、皆さんはどんなふうに学校側から配られたでしょうか。 我が子の学校では、夏休み前の最後の参観日の、たくさんの配り物のうちの1つに紛れ込み、 実に何気なく、さらりと手渡されてしまいました。 クラスでは懇談会の際、重要書類は父母全員の前で先生が読んでいきましたが、 ことこれに関しては 「文科省から配られた新しい学習指導要領の冊子ですので、あとで読んでおいてください。」 と、ひと言、あっただけです。 多くの親を揃えて座らせ、教師が親たちに向けて読んだりしたら、 誰かがこの冊子が本来持つ意味に気付き、不安や不満、疑問や批判を口にするかも知れません。 もしそうなってしまったら、この冊子に仕掛けてある「7人のサインの魔法」・・・催眠術が解けてしまう。 この催眠術の効果は、個人個人を分断した状態で読んでもらうのが、いちばん効果があがるから 配り物が多く余計なものはスルーさせられる「夏休み前の参観日」にターゲットをあわせ、 多くの書類に紛れ込ませて、この冊子を配った。 深読みしすぎでしょうか。 いずれにしても、この重要な告知を、親からの批判を最小限にして、文部科学省はうまくやり抜けたものだ、と苦々しく思います。 【 追記 】 3割削減によって人生の舵取りを大きく変えざるを得なかった、当時の我が家の選択については、以下の日記に詳細が書いてあります。 2007年1月25日の日記 『■我が家が中学受験を選んだわけ■』

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