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カテゴリ:Story of Red Stone
第1章 出逢い
この街に来て数日がたった。 この街の名前は「ブルンネンシュティグ」というらしい。 しかし、それよりは「古都」という通称の方が、好んで使われている。 街は雑然とした雰囲気で、人も多いようだ。 紫泉には、この街に来る以前の記憶がない。 それでも日常生活に関する知識がないわけではないので、困りはしない。 しかし、生活するには、元手が必要だった。 そこで、街の人たちの悩みを解決して、報酬をもらうことにした。 この街に人たちは困ったことが多いらしく、仕事には事欠かなかった。 中には技術を持っていなければこなせないような仕事もあるにはあったが、そんな技術も教えてくれる人だって居る。 大変だけれど楽しい毎日に、胸がわくわくする。 そうやって過ごしている内に、思い出したこともいくつかある。以前の自分には仲間がいたはずだった。 仲間という言葉では足りない。むしろ自分の一部に近い存在。魂のかけらとも呼ぶべきモノ。 足りない何かを探すように、紫泉は打ち込んだ。 そんなある日。古都の南へ抜ける街道沿いに、1人の老人が立っているのを見つけた。 なにやら困っている様子である。 ちょうど手持ちの仕事を終わらせて暇なところである。 何か手伝えることがあるのなら…と、老人に近づいてみた。 「おじいさん、なにか手伝える?」 「ああ、腰が痛くてね。薬の材料を探しに来たんだが……」 「じゃぁ かわりに私がさがしてきてあげる」 「ありがとう。じゃあ頼むとしよう。必要な物は墓碑につく黄色のコケ、石の上につく緑のコケ、木の建物に生えた赤色のキノコ、木の切り株に生えた黄色のキノコ、つつじの花びら、亀の卵じゃ」 「えっ! そんなにたくさん!!」 「無理かのぉ?」 「で できるよっ!」 紫泉は両のコブシを握りしめて気合いを入れた。 「じゃあ、おじいさんはここでまっててね」 「頼んだよ」 おじいさんに手を振ると元気よく歩き出した。 「えっと 木がこんなにあるんだから切り株だっていっぱいあるはずだよね。あ、みーっけ」 注意深くあたりを見回しながら探してみると、コケやキノコはすぐに見つかった。 しかし……。 「つつじってどれ?」 周りにはたくさん花が咲いてはいるか、花びらをとろうにも、紫泉にはどれがつつじの花なのかがわからない。 途方に暮れてウロウロしてみる。けれど時間が経つばかりで、解決策は思いつかなかった。 そうして数分、結局花を見付けられず、諦めかけた時だった。 橋のたもとに、一人の男の人が座っているのを見付けた。 紫泉はいても立ってもいられずに駆け寄ると、 「あ あのっ! つつじの花ってどれですか!?」 「ぇ?」 急に話しかけられた相手も、驚いたようでじっと紫泉を見つめている。 しかし、紫泉も必死だった。今にも泣き出しそうな気持ちをぐっと堪えていたのだ。 誰にも頼れずに心細かった気持ちが、溢れ出してしまいそうだった。 「えっと、つつじの花? ちょっとまって」 その人は暫く考えると、紫泉を振り返って手招きした。 「こっちだよ。おいで」 そう言って、紫泉をつつじの花の前まで、案内してくれたのだ。 そして、 「まだ何か探している?」 「ぇっと 亀の卵…」 「それは、こっち」 と、後の仕事も手伝ってくれたのだった。 「おじいさんっ、探してきたよ~」 「おお、ありがとう。じゃあお礼に薬の正しい飲み方を教えてやろう」 「は~い」 すべての材料をもって老人の元に戻ると、彼は報酬として薬に関する知識を教えてくれた。 「そっちの御仁は? さっきはおらんかっただろう?」 「うん。途中であって、いろいろ教えてもらったの」 「じゃあね、おじいさんお大事に……」 老人に手を振ると、街に向かって歩き出した。 その間も森で出会った彼は、一緒につきあってくれていた。 「ありがとう。とってもとってもたすかりました。私は紫泉だよ」 「MILKだよ。よろしく。何か手伝えることがあったら、連絡して」 「ありがとう」 これが、紫泉とたくさんの仲間達との出逢いのきっかけとなるのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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