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カテゴリ:'70 エーテルのころ
偶然にも、それはバカオスのテリトリーの中心であるチャボ小屋にいちばん近い、竹林の隅っこにあった。周囲よりこんもりと高い竹林の丘の、縁のあたり。傾斜地から伸びた竹は、生えている方向もやや斜めだった。飛びつくと、最初からかしいでいた方向、チャボ小屋に向かってしなる。真上に登るより斜めのほうが力がいらないから、ぐいぐい登れる。そんなに高くまで登る必要はない。
確かな勝算を胸に、私はバカオスの前に仁王立ちになる。 いつも通り、地面を転がるような素晴らしい加速でバカオスが迫ってきた瞬間、私は練習通り、竹に飛びついた。白い塊が風を巻き上げて跳躍するが、私の足先には届かない。二回ほど身体を上にたぐり上げると、もう悠々とバカオスを見下ろす高みに到着する。目標を失って行き過ぎたバカオスはきびすを返し、再び突進してきた。頸まわりの白いタテガミが逆立ち、相当に激昂している様子が見える。いや、今回とくに虫の居所が悪かったとか、思わぬ方法で敵を取り逃がしたことに憤っているとかではなく、いつもこんな調子だったはずだ。単にいつもは逃げ切るのに精一杯で、そこまで観察する余裕がなかっただけ。 しばらくこちらを見上げ、この憤りをどうしたものかと思案するように首をかしげ、竹の周囲を徘徊していたバカオスは、やがてプイと向こうを向くや歩き去った。それきりこちらを気にする様子もなければ、卑怯な逃走を根に持った様子もない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 10, 2014 02:26:43 PM
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