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空想俳人日記手塚治虫作品限定版

2007年09月08日
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カテゴリ:ハ行
和の歴史 名を表さぬ 平なる願い  


 古墳時代のお話。今回の再読のテキストには「異形編」が併載されています。文庫版です。最近の単行本も同じみたいです。でも、私が始めて読んだのは、虫プロ商事版コム名作コミックス。それには「宇宙編」が併載です。どっちでもいいのですが「黎明編」「未来編」という流れからの、ライフワーク的な制作で言うなれば、過去と未来が一番遠いところから交互に現代へ、そう思っております。しかも手塚氏の制作年順からしても「ヤマト編」の次は「宇宙編」。ですので、これ書いた後は「宇宙編」の再読かな。
 そんなこともあり、一編ずつの感想文にします。併読作品は別の機会に、ここでは「ヤマト編」オンリー。
 さて、この「ヤマト編」、ボリューム的には「黎明編」「未来編」の半分。内容も、ヤマト国の王子オグナとクマソ国王の妹カジカとの ロミオとジュリエットではないけど、許されぬ愛の物語。そんなふうに簡単に言い切ってしまうだけでは不十分なので、奈良の明日香にある石舞台、あれが前方後円墳でもない、何故にあんな無骨な格好なの、あれって誰かの墓なの、などという疑問を空想的推理を働かせて纏め上げた、エピソード的短編。なんですね、これは。
 でも、そんな小品として読むだけでは面白くないのは、「黎明編」を読んでられれば納得されましょう。続編的な配役が為されています。「黎明編」のラスト、火の鳥から励まされながら断崖絶壁を登る日本的アダムとイヴの間に生まれた第一子のチャレンジ。思い出すついでに、名前も思い出してね。
 さて、この作品では、古事記というデタラメな歴史を記し残そうとするヤマトの国の王。末っ子オグナの親父さん。読んでいるうちに、現代の誰かに置き換えたくなりますよ。それはさておき、クマソ国王の川上タケル。彼は、真実の歴史を記録することを自らの生きがい、ライフワークとしていますね。このライフワークと手塚氏の「火の鳥」制作がかぶりますけど、そればかりか、最近の教科書問題、政府が史実を伏せたがること、もうここでも如実に分かります。さらに、川上タケルの記録は、村の長老からの過去の記憶の伝授。ちょっとDNAを感じます。
 で、この長老こそ、80年前に火の鳥がすむ祠、火の壷、その中に閉じ込められた二人の夫婦が必死に生きながら子作り子育てに励んだ、その第一子なんですね。彼は、断崖絶壁の火の壷の中から火の鳥の励ましも貰いながら登りきって、大きな広い世界、新たな人生を求めていったタケル本人なんです。
 クマソでは、このタケルという名、代々自分に誠実だった男があとを継いでいるんですね。だから、長老から、川上タケルも。
 ところで、クマソの人間ではない、ヤマトのオグナ。彼は、敵国でありながら、川上タケルを憎めません。それどころか、彼の妹カジカと愛のド壷にはまります。現代でも、国家だけで論じる国の首脳は、こうしたあたりが不能ですね。もちろん、ここでも、同じような取り巻きの態度はありますが、カジカに惚れながらも、カジカからの提案もありながらも、自分自身がヤマトを捨ててクマソになりきれない、ああ、その自らの心の真意よ。
 川上タケルを殺したくないオグナが彼をやむを得ず殺す場面が秀逸です。「ぼく自身を裏切ってクマソの人間になってしまっていた」かもしれない。現代にもありうる民族史観ですよね。もちろん、オグナは、自国ヤマトで王のわがまま故の人身御供、王の墓に生きたままの人柱が入る計画、これを断固反対している彼。この反対論者の様子が、かつての学生運動の匂いも。
 オグナは火の鳥と音楽でうち解けたことで、火の鳥から譲り受ける血を布に浸し、我がふるさとの圧政に苦しむ国民のために。そんなオグナの誠実さに対し、自らが手を下した張本人のオグナに対し、川上タケルは、クマソで代々自分に誠実だった男として「タケル」の名を継がせます。オグナは、ヤマトタケルなんですね。はいはい、その後、あとは読んでからのお楽しみ、です。
 ちょっとしたエピソード的作品でありながら、あちこちで現代に通じる、時代を超えた、人間の生きた証しを残そうなどとしたがる本能的な営みが皮肉たっぷりシニカルに描かれていますよ。ですから、逆に、現代人の悩みが、この作品の中にも見て取れますし、どうして悩みが生まれているのか、その世の中にはびこる原因も実は見やすくなっております。
 そんなかんなで、最後には、今の明日香の石舞台の裏にはこんなん、ありましたかも。そう言われれば、今の時代の歴史も、真に生きた人々の思いはかき消され、見た目をうまく肯定的評価する記録にさせられてるのかもしれませんね。醜い真実が削除され、人間ドラマもカットされ、建前だけの歴史が積み重ねられていく、そう思いませんか。







最終更新日  2007年09月08日 12時35分19秒
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