憬月庵雑記

2004/09/01(水)22:20

鋸谷式間伐法と自然農

私が鋸谷式間伐法を初めて知ったのは、新田さんの「自然の暮らしがわかる本」をとおしてでした。 昨日「図解これならできる山づくり」という本を買ってこれを詳しく知りました。 そこで、この間伐法の根底に、自然農の基本理念とまったく同じ考え方があることを知って驚くとともにうれしくなりました。 要約すれば、ヒノキやスギを採るためにヒノキやスギだけ育ててそれ以外の下草や広葉樹を排除する従来の(通常の)施行法は手間がかかりすぎるばかりか、結局は森や山の健康にも良くない、という考えの上に成り立っています。 少し引用してみましょう。 「それは一言でいうなら「木の畑」のようになった人工林を「環境保全型の長伐期の森」に変えて行く新しい森づくりの手法である。(中略)作業もいたって省力。伐った木の搬出を前提とせず(中略)伐り倒したらそのままなのだ。」 「伐倒木が地面をマルチして草が生えるまで表土の流出を防ぐ。」 「倒木は地面に陰影に富んだ空間をつくり、多様な動植物を呼び込みます。」 「この広葉樹の侵入こそが重要なポイントになる。広葉樹があることでスギ・ヒノキの養分が確保され、治山治水に大きな働きをしてくれるからだ。」 「実はこれらの天然林は針葉樹林とはいいながら、上層のスギやヒノキに混じって広葉樹が繁り、中・下層にも多種類の広葉樹とスギ・ヒノキの幼樹が育っている。また、林床にはシダ類やコケ類が繁茂するなど、多様な植生が混在した森になっている。(中略)動物や昆虫、微生物・菌類などが共生し、お互いに養分を与え合いながら物質循環を機能させている。ここでは森はそれだけで自立し、高度な公益的機能も発揮できるのである。」 「いうなればこれまでのスギやヒノキの人工林は、この畑の大根つくりと同じだった。それぞれの苗木を植えると、畑でやる除草と同じ下刈や除伐を行い、木が生長して込んできたら間引いて密度を調整し、太くて、長さの揃った木材を伐り出す。場合によっては肥料を施されることもあり、人工林はまるで木の「畑」といってもよかった。」 「伐倒木」、「広葉樹」、「下草」を雑草に置き換え、「スギやヒノキ」を野菜に置き換えれば、そのまま自然農の説明になってしまいます。 自然農で野菜を作り、鋸谷式間伐で人工林をよみがえらせれば、少ない労力で「里山生活系」を再生し、そこで暮らすことができるという見通しがたちました。 過疎化の進む農山村を再生する極めて現実的な方法は、すでに用意されていたのです。

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