2006/07/13(木)01:38
ポストミシンの軌跡-その2
ポストミシンが世界で靴製造のスタンダード機になっているところ
まで、前回書きましたが、今回は別の角度から話してみましょう。
先ず、一言でポストミシンと言っても実にたくさんの種類があります。
釜の大小、送りの方式、1本針、2本針、右釜、左釜、自動糸切付き、
サライメス付き、返し縫の有無などそれぞれに説明する気にもならない
ほど、多岐に渡ります。面白半分にメーカーが作ったわけでもなく
それぞれが縫製物とベストマッチするためにこうなったわけです。
靴以外で使われるポストミシンではいわゆるハイポストとという
筒のながーい物があります。アタッシュケースのような鞄のマチを
ぐるりと縫うのに445mmもあるポスト部のものです。
また、ポスト部が倒れたり、回転して箱状の奥まで縫うことのできる
手品のようなものまであります。詳しくは省きますが、
とにかくいろいろあるのです。
話を靴用ポストミシンに戻しますが、昔は18種信者の職人さんから
見れば邪道でミシン目も劣るとされていたポストですが、
量産体制となると18種と比べ、下糸が多く巻ける、スピードが出る、
高速で振動が少ない、ブーツのような長尺物が縫いやすい。
などの理由から工場向けとしては合理的でベターな選択となった
のであります。
厚物ミシンにも関わらず高速でしかも糊や芯が入ったり張り込み、
重なりも多く、薄いところから急に厚くなったりする条件が悪い
環境下で更にできるだけ細い針で縫製しなければならないのです。
ここにミシン屋さんとしては泣きが入るのであります。
高級婦人靴などは#40の糸で#9の針があたりまえの世界で
アパレルのミシン屋さんから見れば調子が悪くて当然です
と笑われそうなのが現実です。
スピードを出せば複雑で連結部の多いポストミシンは
あちこちでガタが出たり磨耗が起こります。
縫製の現場ではポストミシンのメリット生かし合理的生産のため
ミシンの性能に作業を合わすのではなく、作業にミシンの調子を
合わせなければなりません。その為に私もどれだけ場数を踏み、
苦悩したことか‥‥。
ところがこの量産のニーズが、ミシン屋の技術を高め、現在の
メンテに対する自分の自信になってきたのです。
つまり、18種に変わってのポストミシンの台頭は
ミシン屋の私から見れば‥、
厳しい環境に打ち勝つ力を身に付けさせてくれたミシンと
いえるのです。