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2014.05.26
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カテゴリ:元気が出る話
 豪華絢爛な船上パーティを想像してみてください。
 すぐに思い浮かばないという方は、『タイタニック』の船上パーティシーンで結構です。




 ロシア政府関係者も多数参加するパーティで、そこに私は通訳者として同席するという段取りでした。
 とある契約を締結するためです。


 その日の早朝、迎えのタクシーに乗ると、どういうわけかそのタクシーは所定の場所に向かわず、東京近郊をグルグル回り続け、結局自宅に戻ってきてしまいました。
 マネージャーもだんだんと神経を尖らせ、遅刻が決定的となるとタクシーの運転手に文句をぶつけたり、関係者に電話をかけ始めたりしていました。


 しぶしぶ自宅に入ると、突然家の電話が鳴り響きました。


「もしもし」

「本日の撮影からは降りてもらう。」


 間髪入れず、電話の主からそう一言告げられました。
 恐ろしく低い男の声でした。


「困ります。この撮影はもう決まってるんです。遅れても今すぐ向かわないと……。」

「あの船は沈む。君には他にやってもらいたいことがあるので、また連絡する。」


 一方的に通話は切れました。
 受話器を置くと、私はマネージャーとともに A スタジオに急ぎました。


 船上の映像を地上の A スタジオに生送信することによって、フィルムの搬送トラブル防止、および撮影時の矛盾点の指摘と船上シーンの撮り溜め計画に対応できるようになっていました。

 A スタジオには助監督が控えており、スタジオから船内の監督に指示やコメントを送るようになっていたため、助監督にコンタクトを取ればまず間違いないだろうと思ったのです。


「いくら主役を張れなかったからといって、撮影をすっぽかすとは何事だ!」

「大変なんです!今すぐに船上のスタッフを全員船から降ろしてください!」


 私の必死の訴えも、怒り心頭の助監督の耳には届きません。
 モニタには、私抜きで撮影が進む様子が淡々と映し出されています。


「船が沈むという電話があったんです!」

「最近そういうニュースがあったから、誰かがいたずら電話をかけてきたんだろう。」


 撮影は滞りなく進行していきます。
 私は仏頂面の助監督とともにモニタを見守りました。


 スーツ姿の二人の男が契約書を交わし、署名が済み、いよいよシャンパンで祝杯です。
 左の男がテーブルの上に置かれたシャンパンのボトルを持ち上げた瞬間、爆音が鳴り響き、そして一瞬にして画面は真っ黒に……。




 そこで目が覚めました。
 トム・クランシータッチかと思いきや、シドニー・シェルダンばりの展開になっていたのには少々がっかりしましたが、私にやってもらいたいことが何だったのかが気になってどうしようもないので、このまま一日中寝てやろうかと思いましたね(しっかり起きて仕事に行きましたが)。


 ここまで書いておいて何ですが、シドニー・シェルダン作品はあまり印象に残っていません。





 いつかその続きが見たくなってしまいそうな夢のおすそ分けでした。



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最終更新日  2014.05.26 12:42:01


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