562808 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

小市民の一日

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

2007年03月27日
XML

<まず最初に> 

 先のエントリーでコメントくださった皆様,ありがとうございました。皆様のようなあたたかい読者の方々がおられる限り,いかに忙しくなろうとも更新は続けて参りたいと考えておりますので,今後ともよろしくお願いいたします。

 本来ならば,お一人お一人にお返事申し上げるべきところですが,新しいエントリーの冒頭にてお礼を申し上げた方が目立つと考えましたので,このご挨拶をもちましてお返事とさせていただきます。

 

<西山氏,第一審は敗訴>

YOMIURI ONLINEより←記事を追跡しやすくするため,今回より「ウェブ魚拓」を使用してます

 1971年に調印された沖縄返還協定を巡り、日米交渉の外交機密を外務省職員に漏えいさせたとして、国家公務員法違反の罪に問われ、有罪判決を受けた元毎日新聞記者・西山太吉さん(75)が、「不当な起訴で名誉を傷付けられた」などとして国に3300万円の損害賠償と謝罪を求めた訴訟の判決が27日、東京地裁であった。

 加藤謙一裁判長は「起訴から20年以上が経過した後の提訴で、原告の損害賠償請求権は消滅している」と、民法の時効の規定(除斥期間)を適用し、請求を棄却した。

 西山さんは1971年、「日本政府が米国に対し、米軍基地の原状回復補償費400万ドルを肩代わりする」という「密約」を記した文書を外務省の女性職員から入手して報道したが、72年に同法違反で起訴され、78年に最高裁で懲役4月、執行猶予1年の有罪判決が確定した。

 この日の判決では「密約」の存在が認められるかどうかが注目されていたが、この点には一切、言及しなかった。

 訴状によると、西山氏は2000年と02年に公開された米国の公文書から、日本国憲法に違反する密約の存在が明らかになったと主張。「密約を報道した記者の活動を阻止するための不当な起訴で、名誉を傷つけられた」として、05年4月に提訴した。密約については、沖縄返還協定の対米交渉責任者だった元外務省高官も認めたが、日本政府は一貫して否定している。

(2007年3月27日15時57分  読売新聞)

 

 たびたびマスコミに取り上げられる事件なので,ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。あるいはこの事件と同時代を生きた方もおられるかもしれません。あるいは凡例を勉強していて,この事件を知ることになった方もおられることでしょう。

 この事件は,一般に『西山記者事件』あるいは『外務省機密電文漏洩事件』等と呼ばれています。

 事案の概要は,次のようなものです(最高裁昭和51年5月31日決定を参照。本当は地裁・高裁の判例を見てくるべきなのですが,今手元にないので最高裁の是認した事実認定を用います)。

 西山氏は,当時,毎日新聞東京本社編集局政治部に勤務する,外務省担当記者だった。一方,B(女性)は当時外務事務官だった。

 昭和46年5月18日頃,西山氏は,従前それほど親交のあったわけでもなく,また愛情を寄せていたものでもないBをはじめて誘って一夕の酒食を共にしたうえ,かなり強引に同女と肉体関係をもち,さらに,同月22日ホテルに誘って再び肉体関係をもった。

 その直後,「取材に困っている。助けると思ってD審議官のところに来る書類を見せてくれ。君や外務省には絶対に迷惑をかけない。特に沖縄関係の秘密文書を頼む」という趣旨の依頼をして懇願し,一応Bの受諾を得た。(さらに電話でその決断を促したとされている)

 さらに他日,Bに対し「5月28日愛知外務大臣とマイヤー大使とが請求権問題で会談するので,その関係書類を持ち出してもらいたい。」旨申し向け,秘密文書の持出しを依頼して懇願し、同女の一応の受諾を得た。

 その後もBとの関係を継続して,Bが西山氏との肉体関係のため,その依頼を拒み難い心理状態になったのに乗じ,以後十数回にわたり秘密文書の持出しをさせていた。

 ところが,もはや取材の必要がなくなると,Bに対する態度を急変して他人行儀となり,Bとの関係を消滅させた。

 西山氏は,Bに持ち出させた文書のうち第1034号電信文案(昭和46年5月28日に当時の愛知外務大臣と同じく当時駐日大使であったマイヤー大使との間でなされた沖縄返還協定に関する会談の概要が記載されたもの)について,その情報源が外務省内部の特定の者にあることが容易に判明するような写を社会党の議員に交付した。

 

 事案自体はこういう事実でした。西山氏は国家公務員法違反の罪で起訴。最高裁まで争われましたが,西山氏の有罪判決が確定しています。

 西山氏はこの起訴が「不当なものだ」と文句をつけているわけです。上記の事案をごらんいただければわかるように,西山氏はBと半ば強引に肉体関係に及んだ上,彼女を利用して秘密電文を入手。もはや利用価値がないと見るや関係をさっさと断ち切り,「君や外務省には迷惑をかけない」との約束などどこ吹く風,誰が漏らしたかわかるような形で,この情報を社会党の記者に流しました。かかる行為を起訴したことが「記者の活動を阻止するための不当な起訴」だというわけです。

 この点について,最高裁は適切にも以下のように述べています(先述最高裁昭和51年5月31日決定より)。

 「報道機関の国政に関する報道は、民主主義社会において、国民が国政に関するにつき、重要な判断の資料を提供し、いわゆる国民の知る権利に奉仕するものであるから、報道の自由は、憲法二一条が保障する表現の自由のうちでも特に重要なものであり、また、このような報道が正しい内容をもつためには、報道のための取材の自由もまた、憲法二一条の精神に照らし、十分尊重に値するものといわなければならない(最高裁昭和四四年(し)第六八号同年一一月二六日大法廷決定・刑集二三巻一一号一四九〇頁)。そして、報道機関の国政に関する取材行為は、国家秘密の探知という点で公務員の守秘義務と対立拮抗するものであり、時としては誘導・唆誘的性質を伴うものであるから、報道機関が取材の目的で公務員に対し秘密を漏示するようにそそのかしたからといつて、そのことだけで、直ちに当該行為の違法性が推定されるものと解するのは相当ではなく、報道機関が公務員に対し根気強く執拗に説得ないし要請を続けることは、それが真に報道の目的からでたものであり、その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、実質的に違法性を欠き正当な業務行為というべきである。しかしながら、報道機関といえども、取材に関し他人の権利・自由を不当に侵害することのできる特権を有するものでないことはいうまでもなく、取材の手段・方法が贈賄、脅迫、強要等の一般の刑罰法令に触れる行為を伴う場合は勿論、その手段・方法が一般の刑罰法令に触れないものであつても、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する等法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認することのできない態様のものである場合にも、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びるものといわなければならない。」 

 

 ご感想はいろいろとありましょうが,個人的には西山氏は典型的な「記者は特権階級」的意識の固まり,と評価するべき人物ではないかと思います。「報道の自由」や「知る権利」を盾に傍若無人な取材をする卑しむべき報道関係者の一人。それがこいつだと,そう思います。

 報道活動といえども,社会の存在を前提に行われるものである以上,社会秩序や社会通念とかけ離れて活動していいわけがありません。当然そこには,その観点からくる制約が加えられなければなりません。

 自己の職務の目的のために女性をたぶらかし,利用価値がなくなると足蹴にするような行為を取材活動を理由に許すなどと言うことは社会通念に照らして考えられないことです。従って,これを正当な活動ではなく,違法な犯罪行為であるとした最高裁の決定は正しいものと言うべきですし,これを起訴した検察官の判断も当然正しいものと言うべきです。

 

 西山氏はおそらく,もう上記のような取材活動が犯罪にはならないと言うことを争えないので(最高裁までいって確定しているので),今度は起訴自体を問題にし,実質的に自分は無罪であると同様の結論を得ようとしているのかもしれません。

 しかし,先にも述べたように上記のような女性の立場を踏みにじるような態様の取材が許されていいはずはないわけで,これを起訴した検察官の行為は正しいものと言うべきだと思います。

 

 それにしても,普段,「報道の自由」,「国民の知る権利」を錦の御旗に傍若無人な報道活動をなさっておられる報道機関や記者の方々を見ると,「報道機関といえども、取材に関し他人の権利・自由を不当に侵害することのできる特権を有するものでない」という最高裁の一文は未だに報道機関の方々の一部の心には届かないようですね。

 

 






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007年03月27日 18時30分48秒
コメント(10) | コメントを書く
[主に国内時事(政治等)関連] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.