カテゴリ:カテゴリ未分類
「いいよいいいよ、タルタルなしの人生も」
言いながら益夫はストックの引き出しからタルタルソースの小袋を三つ取ってきて、皿の隅にドーム状に搾りだしていく。 「俺。カキフライ大好き」 「あたしはそんなに・・・・・」 「なんで?超うまいじゃん」 「あの中のぐしゅぐしゅしたところが、ちょっと」 「あああれな。うまいけど、確かに得体がしれないな」 益夫は衣が見えなくなるほどタルタルソースをたっぷりつけたカキフライを半分かじった。そして短いまつ毛にふれそうな近さで断面を見つめた。 「ここ、なんなんだろうな。脳みそか?」 「脳みそ?」 「この質感は、脳みそじゃないか?」 「脳みそ?だったら、カキの体って八割以上脳みそじゃない?そしたらカキ、すごい頭いいことになっちゃわない?」 「カキが!?アハハッ、そりゃないな!そんなわけなかった!!」 爆発的に笑いがとまらない益夫を横目に、テンテンはタルタルソースなしでカキフライを半分かじった。そして飲みこまないうちにもう半分を口に入れて、中身をみえなくした。 鮎太朗が恋しかった。 (青山七恵さん「わたしの彼氏」P204) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011年12月19日 19時51分30秒
コメント(0) | コメントを書く |
|