オトコ姉ちゃん
少年H(上)( 著者: 妹尾河童 | 出版社: 講談社 )少年H(下)( 著者: 妹尾河童 | 出版社: 講談社 )僕がこの小説で一番すきなのは、「オトコ姉ちゃん」の話です。「オトコ姉ちゃん」は主人公の少年Hが住む町の心優しい青年。そんな彼の所にも赤紙がやってきて、戦争に行かなければならなくなる。しかし、町の人々に見送られ、出征して行ったはずの「オトコ姉ちゃん」は入隊せず逃亡してしまう。そんなある日、今は廃屋となったガソリンスタンドのトイレに駆け込んだ主人公は、トイレで首を吊って死んでいる「オトコ姉ちゃん」を発見する。そして、少年は思う。兵隊に行きたくなかったオトコ姉ちゃんは、死ぬしかなかったんやなあ。戦争で弾に当たって死ぬより、自分で首吊って死ぬほうがよかったんか?「オトコ姉ちゃん」は「平和」を語る資格がある人だと思う。人を「殺す」より自分が「殺される」ことを選んだのだから。「オトコ姉ちゃん」は「自由」を語る資格がある人だと思う。誰かの命令で「死地」へ赴くことより、自ら「死ぬ」ことを選んだのだから。「オトコ姉ちゃん」は死にたくなかった。「オトコ姉ちゃん」は殺したくなかった。「オトコ姉ちゃん」は生きたかった。だから、「オトコ姉ちゃん」はただ死ぬしかなかった。この小説を思い出したのは、最近↓のビデオを見たから。バトルロワイヤル2【鎮魂歌(レクイエム)】この映画で殺し合いへの参加を拒否し、ラグビーボールを抱き締めながら、大泣きしながらも「絶対嫌だ」と言って、最初に殺された少年。彼の姿が僕の中で「オトコ姉ちゃん」に重なった。そして、この映画の中で、僕が只一人感情移入できたのは彼だった。主人公を始めとする他のメインの登場人物はみんなだめ。「自由」「平和」「仲間」そういう大切なもののために、「死」を恐れず戦う。そういう感情、メンタリティこそが「戦争」をいつまでも続けさせるのだと思うから。そして、そういう感情は常に「誰か」に利用されるだけだから。。。一番強いのはカッコ悪く「ただ」死ぬという「断固たる拒絶」だと僕は思うから。。。