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灯台

灯台

青の季節

歩いてきた道の何処かで

  しめり 春ではない
         とくしん          かんば  
   嘘偽りも 涜神の言葉も 花と芳しい春と

  こもり 夏でない ――しいて言えば、断末魔の唇の間から

  渦になり うねったもの ・・・秋でない 冬でない アラベスク
               アクアリフター
   まるで沈没船の 引き揚げ装置
                        しけ
   《三層甲板の巨船! 砲台はもう湿気ってる》

風のまにまに運ばれる種子に似て かぼそい声が 絶えるかに紅梅色 
              とき
揺り籠と柩が用意される刻に似て ふとした折り 髪は消えうせ桜色

      立派な人間は長居しない、憂きことはおびただしい卵で処理される

      じゃあ行こうか――もう何と別れたことにもならない、想いの質が深くとも
                 ピクチャー・モールディング
    感謝し、賞賛しよう、そして額縁製作から始めよう

     モンナ・リーサ、モナリザ

    ・・・何を探しているのか。いつまでも見つからない、見つからない
    
    差出人のメッセージも見つからない、からだのすみずみまで

     軽くなるまで 白くなるまで

 
   ●ビニールシート


 (ビールを)一気に、ぐいっと咽喉に流し込む。

 「その通りです、――認めます」

 嗚咽しながら、更に蚊の鳴くような声で言う、友達のS子さん

 
     もうあなたはわたしを見ることがない

     ご愁傷様! 昨日まではわたしの手も握りあえたのに


 
  ――人生って複雑ですね、百メートル全力疾走した後の酔っ払い

  笑い方を忘れた代わりに泣き方が堂に入っていて、

  花なんかいらない、・・・ドライフラワー! どさっとフラワー!

  しかも安い! 色褪せない! 


     本当かな、いぶかしみ狼狽え、戸惑っている

     いまでも、そうなんですか? 小さなバスケットに、

     ミニチュア・シティー、小さな食器、小さなナイフとフォーク


                    まなじり
   [2分47秒 ひとすじの眼差し 眦]

      ーそ キラキラ と
 
      八方に散らばっていく
                             ボンサンス
        風にさやぐ小枝の下で静かに揺れる 良識の波
                     ボンボワイヤージュ
        松や白樺の木の陰で「よいご旅行を!」

     まだけがれも罪も知らないサテンの襞のような僕は

     マダムタッソーな人達とマタニティーブルー!


   ●ビニールシート 2

               コップ
 (焼酎を)とくとくと、僕の杯の中に注ぐ

 「おう、おまえも飲めや」

 どうしてか、いじめられやすい僕は2歳年上のS子さんに

 ――いつもは、優しくて、メールの相談したり、恋の話をしたりする
      マスオ
 また、僕が主夫さんしたい、もう男性は料理の鉄人にならねば

 まず女性は胃袋から計画の最大の理解者・・ぼく、料理がうまいのだ
                                 などなど
 青菜とベーコンのソテー アスパラガスのミモザサラダ 等々・・

                     ホーネ
     男ってのは箸の先で震えた骨!

     塚元くん、いけないわ、男はもっと狡くなくちゃいけない



  ――それって、じゃが芋の皮を剥いて四つ切りするようなものですか

  それとも、にんじんの皮を剥いて乱切りするようなものですか

  ソースなんかいらない、・・・ドレッシングもいらねえ!!ドレス・ダンシング!

  でもマヨネーズ欲しい! マヨネーズ・パワーが欲しい! 


     みんな、恋して傷付いてる、戦士みたいに討ち死に覚悟で戦ってる、

     先月みまかった友達のN子さんは 病室で永遠の微笑

     母親って強い! 女ってしたたか 男を働かせるため鞭を振るう



       焦らさないで、恋ってもっと ひめやか

       見つめないで、永遠に さまよってしまう

  花の カーテンが 揺れてる! 揺れてる・・!

   風の中 ピヨピヨ ・・・・・・ははっ! ヒトビトノ頭ノ上

         次の春にまた花を咲かせる 次の春まで水の澄みわたる

         次の春にまた花を咲かせる 次の春までその名を忘れて

    「また来ようね、――今度は夜かも知れない。
                  わななき
     夜という夜をつないで“戦慄”が生まれる。・・なんてね」

       ない。 うるんだ黒い翡翠 は

       ない。 すばしこく なにかに憑かれたように

      ―――もぐってゆく、もぐっ て ゆく

   [5分27秒 きわだって目を引く リズムとハーモニー]


   ●ビニールシート 3

                 コップ
 (ウォッカを)とくとくと、僕の杯の中に注ぐ

 「男だったら飲めや、おう・・・五臓六腑まで沁み渡れや」

 そんな無茶振り! いつものカマトト振り

 ――女ってこわいわあ! ベッドの中じゃ眉毛がないデスマスク
     
 僕なんかフクロウ! ほーほーいいながら人生観察、女性を観察

 ぎこちない緊張! 乾杯 地球のひびき 宇宙のぬくもり


     でも平和ですよね、むかしのほのかな恋心、ああ未知の地図

     S子さん、歳をとるって素敵だな、裸足で歩いてきて、

     ある日、靴をえたみたいだな、しあわせだな、僕はしあわせだな



       ――でも気をつけなくちゃ、新聞をたたみ、テレビを切る時は

       ――そう気をつけなくちゃ、本をとじて、木と草と花・・・

      もっと濃い闇に ハイエナがいる、ハゲタカがいる

      もっと濃い闇に ハイエナがいる、ハゲタカがいる

    ふしぎな青のせせらぎと執拗に追い掛ける猟犬と、ケルベロスと

    宇宙のようにたゆたう透かし絵と腹を膨らました猫と、飼育箱と

     ・・・音楽に陶酔しな が ら ! 

    も っ と 陶酔 しなが ら
        

   ●ビニールシート 4

                 
 (屋内プールで)蛍売りみたいだったS子さん

 あのしなやかに伸びた手、切り株からしろい涙がでるような

 あの汗! 結局S子さんは高校時代すばらしい成績は残せなかったけど

 ――いまでも瞼に浮かぶ まぼろしの校歌が浮かぶ
     
 失敗だらけでも汗だくでニッと歯を剥きだし笑ってたS子さんを思う

 でもプールから見えた土手 堤防 あっちの方がずっと明るかった

           モ ト
     ところで塚元、あっちのあれどうなった、上手くいったか

     ・・・いやあ、失敗しちゃいました、でも、恋をする度、思います

     あたふた時間に追われ、毎日わけのわからない仕事をさせられ、

     誰を守ってるのかわからない。どんな夢をかなえたいのかわからない

     ――でもすこしだけ、そういう時、優しくなれる。何か許せる


 しぶき
 飛沫をあげた世界は切り取られ

 はじまりの前の白のまぶしさで 溶ける

 ふいに・・・ あたらしい風

  気まぐれで、こどものように落ち着きがなく

  こころは さまよっている


     仕事を捨てればしがらみがなくなる、五体満足!

     でも、ドロップアウトしちゃいけない、ビジネスじゃない、

     宗教じゃない! ・・・理想主義だけど、少しだけわかる、

     労働者のあるべき姿。社会のかくあるべき姿。生きる目的、

     ――しあわせを求める理由、すこしだけわかる



  そうやって誰かを巻き込んで、誰かを傷つけて・・

  もうもうと埃が舞い上がる、電車にバスに揺られている夕方

  ねえS子さん、虹が欲しいんです、

  いつも生活に海のにおいが欲しいんです――


 ( 小さな花々のように 悲しかった

   うつくしかった どうしても曲にならないものが


     ――花は摘んじゃいけない、よろこびやかなしみも
                アスタマニャーナ
     どうせ散ってしまう さようなら


 ――見えても、見えなくても

 僕に名付けられないものがある

 夜通しのたうち回って、こころが千切れそうなくらい痛かった

 胸が締めつけられ・・・ひからびていった蛇の皮みたいに

 そいつが本心じゃない、本体じゃない、まだ縮まない! まだ捻じれない
              しげ
  まだあおあおと葉は繁茂る、まだ、瞳がうるんでる、草いきれと光がある

  だから息をとめて見た、しっかり目を開けて刻みつけていた


      [やがてステージが明るくなってスローモーションに見えだす。

       そしたらハリウッド式に! 気障に手を振るかも知れないわけだけれど]


     いまは それと同じくらい もんもんしんしんゆきがつもる

     いまは それと同じくらい 牛がうろつき山羊がさまよう

  
    恋のときめきのように、遊園地をつくりたい

    花園をつくりたい、お菓子屋さんをつくりたい

    みんなが忘れたものを取り戻す、月の大きさで、夕闇のあかるさで

      ―――夏の陽射しがとぐろを巻くまで



       話しかけよう、肯き返そう、みんな! みんな怯えていた
 
       もしかしたら彼女! 僕のことを愛していないんじゃないか

       不安な胸の内に、・・・愛されたい、いつも包まれたいと願った


   ●S子さん生ゴミの掃除をはじめる


この気障野郎め! このいい男め!

(おまえも叫べ!と促す)おお我らがはるかなマンゴー

・・・支離滅裂だけど、恋愛や死や生活というものは押し寄せてくる。
   
日を趨うごとに、風刺や揶揄がうまくなりそうな魂を光り輝かせようと願う。

銀行員もビジネスマンも土方もタクシー運転手もホームレスも

きっと古代文明の人達も、――あるかはわからないけれど、
                             マイナー
どこかの惑星の宇宙人も、みんな、長く尾を引く短音階を

通奏低音を、光を色を、無限の生命を、息吹きを、自由を探した


       いま ぼくの身体じゅうに 世界が淡く宇宙が濃くあらわれる

       いま ぼくの身体じゅうに ぼくが淡くきみが濃くあらわれる


     そして僕は祈ってた、いままで堪え忍び、企て、つい押し黙ったこと

     それらが、ありふれた風景のかなたに、いま人の眼に固定される日を
                                           リバー
     熱い生命の昂ぶりを! ・・・お前が生きた証、お前が焔のような河
                                        ひびき
     さまざまな旅をしよう、たび重なる試練を、思い出を鮮やかな韻に載せよう

     ――厭人家の僕が愛した人たち! 何万遍も思い出せ・・・

     僕が愛した意味、その言葉の感度と不思議、こみあがる七色のさみしさ

     僕は愛を歌う、想念よ、すさまじい残骸よ、殺し合いの連鎖よ

     人類が何億になろうとも、涙を流し続ける兄よ! 弟よ! 妹よ! 姉よ

     そして父よ! 母よ! ・・・僕等は夢と魅力に満ちた愛の旅人

     これから滅亡へと向かう地球を見つめ直す、最初の人びと!





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