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灯台

メサ・ヴェルデ

 メサ・ヴェルデに迷い込んだ

 何かが動  く、けれど見えない、

 火に焼けた地図に沿って氷山を喚起する

 ・・・息をひそめていた 《ある感情》の細胞 いつ蒔かれたのだろう

 くちびるが渇いた 黒いものが道をよぎり一瞬 ――目が合った
                             かしわ にれ
   子供の頃から、四本、塔のように突っ立った槲や楡の木の夢をよく見た

   昼も夜も――ことに夜は絶えず想いを打ち明けている《寝室》

   眼が醒  める、けれど叫びは抑えた

   墓から出土した宝石のような部屋の隅の観葉植物。・・葉をいとおしく

   性 器のように親指と人差し指でつまむ

   ・・緑からただの青に変わる ブルー インディゴ・ブルー

 足は覚えている ――いっきに? ・・世紀の洪水、各自の生活

 この頃はやどかりのように、誰知ろう、ひとつの小さな教会にいることを

 そこでは貨幣だって紙幣だって ・・・まばゆい銀の流星になる

 「前に一度来たけど、このあたり、自分はよく知らないから」
    ワイヤー
 燃える鉄線のように赤く

 理髪店へいった客が順じゅんに頭を刈ってもらうというような理屈で

 ──この人、少し変わったわ。ずいぶんとさばけちゃったみたい──

 口からこぼれそうになるのを頬でこらえた。
                     シャドー
 赤い紐が残っているように見えた 陰影

   食べては種を吐き、食べては種を吐き、そうして、心の中で

   極めて不味そうに食べては種を吐き、

 ──いいんじゃない、自由思想も──

 思い出しても何の役にも立たぬことがある、不思議な小箱に入っていた

 夕暮れ ・・・いまは遠慮なく、苛立ちや、

 思い悩みに内部の核へと侵食してゆく
                           フレーム
   場所も場所、時も時、――風景の奥から、刺繍枠を取り出す

   石鹸の泡の溶けるがごとくに、胡桃割りを持たずとも・・・あなた

   胡桃を割ることが出来そうなのに――

   「・・・アンタはおれの一生を暗闇にしてしまった」
     プロフィール
   ――半身像
 つむじかぜ
 旋風のように身を返して去った

 ある恋の歌 ・・・余分な掛け蒲団より毛布の方がいい

   イヤホンからまったく聴いたことのない曲をききながら

   ピンク色のカラフルな雷を思い描いている

   否定するすべての霊の中で、北や西に降る雪・・
              つかのま
 機内食をとりながら――瞬間の睡りを貪りながら

 まったくおなじ疑問に駆られていた

 切手は貼りつかずに滑ってばかりいた
 けむり             
 烟のように消えてしまう波のような模様の台地

   ある人は ジャニーズにはしり――少女マンガにはしり 

   クラブという名の青春活動にはしり ・・・わたしはアメリカ

   海の巨大動物をマッチ箱にして 何百フィートもの高さまで屹立させる

   ――存在すればみな磁力を放つ あたかも塵を集めるように

 いかなる激動期も 待ち合わせの場所に人が来なければ、

 それが目的地だと気づかなければ

 ほんの一瞬の出来事 ・・・《洞窟》《断崖》《涙の谷》

 そして気がつくと私はいてもたってもいられなくなって、人生の帆を畳み

 パスポート 航空券――長期休暇をとって着のみ着のままで

 飛行機に乗っていた ・・もう降りられない

   熱も冷気も、――遠い遠い昔の夢のように霞んでいた
 
   氷が溶けたように、・・・いつの間にか現在へと溶け込んだのだろうか

   つる梯子のあさがおも はす交いに触れるようになったのか

 ・・・子供の頃からわたしはニール・ヤングの虜で

 思春期の間ずうっと聴きつづけていた 
             くだ
 音楽の 音楽の波が摧けあう地点まで

   ──この近くかしら──

   ボールペンを置いたとき、母親がコーヒーを持ってきた

   砂糖とミルクをいれてボールペンで混ぜっかえしたのは何故だろう

   ・・・パントマイムのようにたがいに絶えず心の中で呼びかわしてる

   路上の棒杭のように二階の子供部屋で、説明はつかない人生の劇場
   ぬめり
   粘液という奇妙な味わいへと分け入り

   裸体を見られた女のように時代錯誤に立ちすくんでる
     うぶ
   私は初心で臆病で内向的で――

 今でもニール・ヤングを聴く[残念だわ、もし聴かなかったら、]

 ・・・けれど あの頃ほど熱心には聴かない

   星条旗に人知れぬ想いがあり、けれど、ぼんやりとあてどなく耽っても

   (そうよ、残念ね)――どんな関係があったのだ どこへなりとまつわりつき

   高く空の上へ引き上げられるような[快い疼き、シャワーの音、]

   さてどんな子供だっただろう・・

   「はっきりと心の不平をあらわしてもらった方が、
               
   黙っていられるよりも優し」――手帖に書きとめた、歌詞を見る、観た

   どんな呑み込めぬものを抱いてきた・・・、抱いてきた、

   少女の早い心変わり・・笑い声、すぐにほのかな閃光

 はたせるかな あの人と雑談をしている時

 無意識に迸りでてきたイメージが明かす 《いろんな存在》

 家ごと受け継いだものから電話線をくすねたようなものまである

 ──でも、なにが書いてあるのかしら──

 鳥を列ねた影 滅多にない眼のくらみのようなギア・シフト

 セメントがそこにある。ぽっかり口をあけた穴がある
                フラッシュ
 そこに月の光が当たる ・・・閃光!
                いざな       ホーリー・ハット
   私は古代史のなかへと誘われてゆく 聖なる穴帽
   あこ
   憬がれではなかった キャリアに誇りがあったし
                        まどろみ
   労働には枕を蹴飛ばされる代わり 仮睡という報酬がある

   ドロップアウトするつもりもない ・・・だってすぐにドアが閉まる

   なかばストーヴに向かってるってことも知ってる

   それ以上 見ていられないような気持ちも知ってる

   人生は短い 短くて誰も待っててはくれなくて不条理なのに 

   メサ・ヴェルデ――

 レンタル・カーのアメ車をぶっ飛ばしながら

 咳止めのシロップの甘い味を思い出していた 何エーカーも開拓するように・・

 もう蟻穴のような地下鉄が シネマの溶暗のように揺らぐこともない

 ほんとうに何もない荒野をゆく[そして次に見たものを言おう、]
                 からかわ スモーク
   女のくせにと部長にいつも戯弄れる煙草を喫いながら

   いつも穴を掘って埋めた 葬式の涙のように花と香典をいれた

   ──もうたくさん──

   クロロフィル 発酵していつの日か有毒な瓦斯になろうとも
         かんぬき
   扉の掛け金や貫木をさぐっていればそれでいい
                         わず
 ガイドブックに眼をおとしている私の思考は毫かにも揺るがない
                     
 たとえ電線がヒューズして停電しても(あらい息の

 大きな蛾 虹の帯

 地衣類 ひらかれた地図 大半は

 みさかいもない ひるみ!

 ふらつき!)

 ネィティブ・アメリカンの聖地

   フォー・コーナーズから北東へ約五○マイル

   国によって 言い争いは殴り合いと同じ不快な憎しみとして残る

   バスケット・メーカーII期

   ――バックの中身をぶちまける 鳥が虫を食べる(火の卵だ

   叫んで 高く消えていく鳥だ

   きれいすぎる鷹 ぼやけた南十字星みたい

   じっと脳味噌を観察するように

   鹿、ヤギ、野うさぎ)

   いつのまにか、アナサジ族の視点

 おおよそ一時間の旅を経て

 ――ふいに内奥へひらいて――

 のぞきこんでみる、・・・みつかえしたことのない鏡を

 メサ・ヴェルデのエントランスで地図をもらい

 道ゆくさっぱり要領をえない標識に

 なにかカウボーイらしきアメリカ

   「来てみな、見えるだろ、聞こえるだろ、卵のようにつるんと白く」

   ──訛りのせいかしら──

   カヌーが何艘も何艘も川に浮かぶように

   遡り また思いめぐらすように 下り・・。

 それにしても英語も不得手なくせに

 よくやってきたなと自分でも想う

 頼みの綱は一緒に旅行をしてくれるあの人
   ワックス・ローズ
   蝋細工の薔薇 ・・・愛されては蔑まれることを私は繰り返していた

   「きっと、君の悪い所を引き出すんだよ」――ひと声で 水洗便所

   湿気たマッチ ・・この地上の女たちが思い描く淫らな咽喉の底から
        ガンメタル・ブルー
   飛びだす 砲金の青 ――おびただしい思い出よ、思い出の女よ

   いいから、幸せになりなさい!・・

 クリフ・パレスといわれる岩窟住居で黒山の人だかりをみながら

 愚昧な眼つきで睨みつけながら 彼はぺらぺらとしゃべり続ける

 今まで鎮まっていた群衆の顔はにわかに見上げる

 自然との交歓を音波のように錯綜させる

   崖の下に作られた遺跡 褐色のつよい肌がすり剥ける強い陽射し

   古伊万里の皿に金縛りになるようなデイライト

   岩は時代の凌ぎを削ったあるテンションをもって

   白亜の塔のように白くまぶしいものをつくった

 崖の裂け目にいだかれた日干しレンガ造りの建物は

 ──なんのつもりかしら──

 鍾乳洞のようなイメージのあるキバと呼ばれる穴

 (カメ ワニ

 ザリガニ)

 、あるで魔法の無垢な泥のように

 魚たちの秘密基地のような格好で

   風があたりの木々を揺らす音は鈴 ・・・もう荒んだことを苦にはしない

   硝子のような緊張が破けてからは小鳥のようにぶるぶる震えることもない

   ――でもそのエネルギーはいったい何処へ向かうのだろう

   銃声が轟きわたるように画鋲で拠点を打ち込む人生の地図

   サボテンのような短髪が前後にゆれる、あの人

 まるで起て! 眼を醒ませ!・・と言われている
                             もんごん
 ここに羽根がある かわいそうなほどにさまよえる文言

 サンドペイパー ・・・まっしろな海の絶壁

 何人殺    したか、けれど見えない
                         メス
   暗暗裡にほのめかして言いながら 解剖刀で

   ハエほどの点を みるみる 広げていく

 「むかしはここは二○○室ほどある高級マンションだった、

 いまのマンションの四階分もあるという。けれど、

 僕はどちらかといえば巨人がすんでいたという考古学的妄想を推したい。

 アイヌ神話のコロポックルさながら、インドネシアで発見され、

 1万3000年~3万8000年前の成人と思われる遺骨7体は小人。

 スーツケースに入りきらない巨人もいるさ、特級監獄みたいな、

 ひろい世の中、ひろい海、

 まだまだ入りきらないことは薔薇色に火照っているさ、小人」

   葉叢に光っているものは何?
         なまり
   ――それは砲弾?――

   ちがう、雫だ、自然が処理しきれない汗だ、

   違和感を覚えたのは本当だった。うまくいえないけれど、

 「バスケット・メーカー文化とよばれる独特なかご作りでしられる文化で、

 それがざっと二千年まえ! 五世紀から八世紀にかけて、

 丸太で組んで泥を塗る住居をつくり、弓矢を用い、

 それが八世紀から十二世紀になるとメサ台地上に弓状に、

 家の連なる村をつくり、その近くにトウモロコシなどの畑をつくった。

 そして外敵に備えて崖の大きな岩陰を利用して、

 岩窟住居と呼ばれる石造の集落をつくった」

   くる年もくる年も涎れてみえた壁がある・・涙じゃない、唾じゃない、

   小便、自然の処理できない汗 ――酸性雨

   そして私はベビーベッドで自分という無力さを感じた

   ほっとこうぜ、と彼等は言った・・何処へでもよかった、

   海で大きな船が沈んだ、国家は借金を抱えていた、海は汚れていた

   ・・・でも涙は黒光りしては根を張る草のように皆から忘れられた

 「キヴァという儀式をおこなう施設を伴う日干し煉瓦の壁の古代集落。・・

 知ってるかい煙草も、古代では神様との重要な交信の道具だった。

 シャーマニズムとアニミズム、それぞれの観念や行為にともなう呪文。

 ――いまでは少し聞き分けがない耳うるさいスピリチュアル・メッセージかな。

 どうせ暗示や催眠。・・・でも地面を叩いてるのは、呪術だ!

 ・・・たとえそれが眠りに落ちるための免罪符であろうとも、

 都市生活者は宗教なしに生きてはいけない。無神論者でさえも!」

   見えない糸で吊られている、・・不気味な私たちの飾り窓

   ガラス戸に鍵が掛けてあるその向こうに 悲しく動かない聖書の絵柄

   ・・・・神々の指紋 十字路と十字架。「そして」と「そして、」

 ――そうそう、メサ・ヴェルデはスペイン語で、

 緑のテーブル状の台地、という意味なんだ――

 聖書、祈祷書、神学書 ・・ちがう、一枚のCD

   わたしは時折この人をニール・ヤングだとおもう

   アルバムの背後からつたわってくる時代の軋音みたいなものが

   ニュースをまじえてこもれてくるような気がする
 
   引き潮もきわまれば――海に道ができるようにモーゼの《奇跡》

   ・・・日曜日にとっては早朝の八時か、八時半のTVで

   海の道を見た・・・はるか はるか 頭の芯にしびれ

   自問自答の合わせ鏡に ――いつかこんな瞬間が来ると予感した

   私は船には乗らない、わたしは歩くのだ

   歩くのだ・・・!

 「台地の頂上から真っ逆さまに落ちていくような険しい断崖で、

 ふと思ったの、バンジー・ジャンプしたらどんな気持ち?」

 ――見れば見るほど、古い降誕の場面のような気がしてくる

 天使が舞い降りてくるのだ、そして半びらきの意識の揺らめきのなか、

 吸ってゆく、ふっと風の気配を吸ってゆく、くすくす笑いながら

   「しかしここにいた人々は苦労して作った住居を放棄し、

   忽然と姿を消してしまった! 取り残されるのはいつもロマンさ。
 
   アナサジ族はなぜここを離れたのか君にはわかるだろうか?

   伝染病が蔓延したためとも、気候の変動ともいわれている。もちろん、
   ロブスター・ポット
   海老獲り籠――急に海に行くべき、という神の啓示をうけたのかも知れない。
       タイフーン
   たとえば竜巻がやってきて、色んなものを虹の彼方に――」

 「・・でもどうしてだろう」

 ――どうしてかしら?――

 「そんな時 僕はどうしてかしれないけど、

 ニール・ヤングの“太陽への旅路”の緩ったりとした、

 それもかなり能天気なイメージの歌を思い出してしまう」

   乾いた血のようなものういしみ、ニューメキシコにある国立公園
                                     いろは
   21000ヘクタールの広大な敷地。――いまでもなりわいの雑事は続く

   きっと帰る家なんてありゃしないのさ、と彼

   何処にも故郷なんてねえのさ、そうさ、自分の胸をノックする以外に・・

 崖の向こうからきこえてくるインディアン・ドラムの音

 馬のいななき 蹄のおと ――そしてひっそりとまもられてきた

 谷に流れる・・・風の音や木々の香り、手押し車に、したたる泥に
               コレスポンダンス
   岩肌にたくさんの絵。遣り取り。インディアンたちの風習による壁画

   人の姿やバッファロー、人間の手形、渦巻き模様
                       ダーク ディープ ムーヴィン
   ビジョンクエストの旅――虹色の膜。暗く、深く、揺れる

   自分の人生のビジョンが見つかるまで歩き続け、

   見つかったものをシンボル化して岩に刻んでいくという。

 歳月は幾度も、・・・船を引っ張り上げるように私たちに問い掛けた

 ただよい、くみあげ――幾重にも段をかさねてきた《螺旋階段》

   そこにはその人の生き方や考え方が根付いている
               みつめ
   私は何を見つけに・・・《萌芽》にやって来たのだろう

   しかし答えはずっと前からわかっていたような気がする

   宿泊施設の粗末なベッドのうえで、氷の世界に、無関心の中に

   沈黙を破れずにいる、調和という舌を焼けずにいる私の弱い魂は

   いつまでも一人で泣いている、・・・泣いている、少女だ

   メサ・ヴェルデ―――

 園内にはところどころ焼け野原になっている部分があり

 不思議に思って彼にきくと 過去の落雷や

 自然発火による大規模な自然火災によって

 公園の半分が焼失しているんだと教えられた

   そして気がつくと私の頭の中に

   ニール・ヤングの“孤独の旅路”が流れている

   ――まるで、人が棲めない世界、みたいに――

   美しい装丁に誤魔化され、まだ自由を知らないと海豹は云う

   海豹は私の人生を襤褸きれという、しおれてる花、と云う

 そして空港でわたしはひとりの日本人観光客に声をかけられる

 ねえ あなた いったい誰としゃべっていたの?

   茫然としてる――内なる懸念を暴露する

   私は認めた、信仰の審議を追及する綯い交ぜの顔で

   ・・・そしてそこで初めて、自分自身が誰と旅行をしていたのかも認めた

   振り向いた先にはいつもあの人がいて

   あのひどい事故のあとも彼はいつも背後から見守っていた

   触れ合うと 火花が散ったように恋が燃えたこと

   フェロモンに酔ったように いつも身体の奥底で、掌をかえしたように

   その人のすべてを信じていたこと―――

   彼女は膝をついて泣き崩れる[忘れるな! 涙はボタンに似ている]

 (しかし、)この奇妙な話を僕はどんな風に伝えたらいいのだろう

 彼女がもっていた免許証のこと ならびに英語を流暢にしゃべり

 そして時折り 男性のような喋り方をしていたという事実

 そして聞けば聞くほど 頭がねじれていくような感覚をおぼえる

 ・・・いまにも粉々に罅割れてしまいそうな《緊張》

 それでも 空港で彼女とコーヒー・タイムをとっている間

 僕は彼女のことばの中に一つの符号があることに気付いた

 そう 彼女のいっている相手はどうも青年像ではない

 少年像 いや もしかしたらあどけない赤子同然かもしれない

 そう 彼女はクレヨン画の太い線のようにおそろしく混乱していた

 精神科を悪く言うことで自分に怯えているように・・

 彼女は三十六歳 メサ・ヴェルデにやってくるまで

 そんな妄想に憑り依かれていた

   しかしそう僕が思ったとき、僕は死というおおきな犠牲の場面から

   同時に再生のスクリーンに描かれた彼がいるような気がした

   (ニール・ヤングのあの曲!)・・・セメント固めのヴェランダで

   煙草を喫っていた真っ白な人形みたいな表情が壊れ る

   ――やがて囁く、粉飾だらけの人生の乱れた寝苦しいシーツに

   本当の火を点ける、・・・胸が騒ぐ、感覚が絡む、

 崖の向こうからきこえてくるインディアン・ドラムの音

 馬のいななき 蹄のおと ――そしてひっそりとまもられてきた

 谷に流れる・・・風の音や木々の香り、手押し車に、したたる泥に
               コレスポンダンス
   岩肌にたくさんの絵。遣り取り。インディアンたちの風習による壁画

   人の姿やバッファロー、人間の手形、渦巻き模様
                       ダーク ディープ ムーヴィン
   ビジョンクエストの旅――虹色の膜。暗く、深く、揺れる

 どのみち 言う術はない・・答えは眼のいずれかが語る(おいで、)

 そこに白人の男性が立っていて、気がつくと 彼女もすっくと

 立ち上がっていて! ・・・コーヒーなんかこぼれるのもお構いなしで

 (大理石のようにつるん、と滑った)それでも、眼が据わってる

 恥も外聞もなく、――まるで全身が嘴のように[雛になった、]

 ほとんど夢遊病者のようにそろそろ手さぐりに歩いていく

 息よ――[次の手紙に、お前は何を書いたのか?」

  はたしてこれはどういうスピリチュアルなんだ

  はたしてどんな瀬戸際をすりぬけたボーダー・ラーイン ?

  こういう場面に参加した詩人が可愛そうなのはいうまでもない

    いま彼の耳には“太陽への旅路”

    いま彼女の耳には“孤独の旅路”


 僕は大変ずんぐり体型のおおらかなテノール歌手のように

 ばからしく熊のあの童謡を歌いたい気持ちになったので

 カッ・フェ・オレを ガブ飲みする

 人生なんて いつもこうだ! あんなにきみは真剣に蒼白だったのに

 そしてたぶん僕も僕であんなに 聞き上手に話をまとめていたのに

 たったひとつのサイコロがころがりおちてきただけで

 だれかの人生が雷鳴にうたれたように変わってしまう

  「多分君は今ごろビーチボーイズのとりこになって

  “キャロライン”を歌ってることだろう

  人けのない海辺の道を下りながら

  時代の波に巻き込まれてるんだろう」

 そしてその返答とばかりに彼女も流暢な英語を捲くし立てる

 まるで春の木々がHUKUROUの眼のように光る

 ・・・その瞬間の嬉々とした表情がわすれられない

  「ぼくは生きたい

   ぼくは捧げたい

   ぼくはこれまでずっと

   美しい心を掘りあてようとする鉱夫だった

   口では言い表わせないさまざまな思いが

   ぼくに美しい心を探し求めさせ続ける

   そしてぼくはだんだん歳をとって行く」

 どんな恋愛詩よりもそれはうつくしく、意味がつかめないJOKE

 たとえば片っぽだけの乳 首にピアス、そうして叫びがさざなみをうむ

 彼等にとってそれはどんなワインよりもふかく酔わせた

 そして僕は測れない――彼等は取りにやってきた、人生の地図を

 そして記憶をめぐらし、天からの変化を自らの人生にうっすら重ねあわせた

  「ああ 僕は人生のなかで一つのものを失ってしまった

   彼女をさがして旅をしているけれど・・・、いつまでも見つからない! 

   愛することの終わりを見出そうとするたびに、真夜中タクシーを拾うように、

   いつも誰かが僕にそっとそんな場面を見せる、自分の息にそよぐ、

   ああ、・・それすらも幸福なOne more shadow」

    いま彼の耳には“太陽への旅路”

    いま彼女の耳には“孤独の旅路”


    ――きっと日曜日の午後 ウェディング・ベルが鳴る
                         ワルツ
    時を語るのは時計ではなく、・・月の円舞曲だ

    日曜日には、――太陽の意味がある、次の日、月がやってくる

    ネジ巻きをするうちに、このタイトルを見る

 ・・・神はかくもお見通しだ

 やすやすと神秘の働きを天使よりも悪魔らしく授け

 そして、一言“写真を見よ”だ

   やめろ、と取り押さえるような驚きもある(どうして

   どうしてなの どうして写真を見るの

   からくも 持ちこたえてる

   人生の平衡!)

   いや、僕は知ってた・・知ってたよ!

   その写真の日付は46になる

   僕の一番大嫌いなあの数字になる

   それでもそうさ、まっくらな灰でいっぱいの

   僕の瞳の表紙に 彼女はいまも

   蜥蜴のように張り付いている



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