1979531 ランダム
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灯台

灯台

折りたたまれる夏の日の頁 1



    「唯物論」は、あなたが思っているものとは大きく異って、

    もちろん、そんなものが、・・それがちゃんと存在しているのなら、ということだが、
 
    たとえばペンを三つ持っているようなことだ。禁煙が肉体疲労を生むように、

        果報と因果の関係。もはや曝す以外に手はないんだ。猫のくせに虎の皮・・

        暗部に光をまわして、回顧的な雰囲気・・見て、そして認識する。
       
        ――脚を木に吊されて、啼いている獣だ・・

         ・・・そう、そしてこれは鶏だ――

   アカシック・レコードという架空の霊的世界。
 
   でもそれは淡く溶けていて――浮かびあがるまでに時間がかかる・・

     「それは過去から現在、そして未来のすべての出来事や、

     人の行動、思想、感情が記録されている・・」

         さようなら

               ――さようなら・・

       クラゲの花園のように? ああ――砂浜のあの様相のように

        美しい血を何処に流そう・・うつつを何処に流そう――

          (空がいつもより早く暗くなったと思ったら、空気は水が絞れそうなほど、

          嫌な気配になってる――バーの隅っこの席が、濡れてる・・
       
          このやりきれない呻き、やり場のない嘆き・・)

               また繰り返すくらいなら・・

        さようなら

              ――さようなら・・
        
            「ほら授業の始まりだ。イエスやソクラテス、クレオパトラは黒人だった。

            ブラックアフリカの奴隷貿易はユダヤ人が始めた。」

              ・・・痛みに耐えたうぶ声が、あたらしい差別でもいいさ、

      非常に賢明かつ論理的決定が――静物画的調和。

      まず叩き壊されたもの、踏みにじられた痛みから出発したい・・

      エンドルフィンやエンケファリンのように、

      鎮静作用を持つ化学物質・・何世紀にもわたり重厚な歴史を重ねてきた港。
 
        「ひとりでケーキを購入したことはありますか?」

        ――と、聞かれているような瞬間・・

        何故親切なのか・・滑らないようにと言うのか――

        もっとも必要なのは自主の心なのか、と、一人の人間には、

        一人だけの立場があるのか、と・・考えていた折り、

        咽喉元にふっと上がってきた、安らかな瞬間を呑み込んだ。

        片づけられぬまま置かれた道具に、自然な類似性を感じる。

          (――身近な世界を見る中で・・

          あきらめていたものが、たあいもなく剥きだす・・

          ひとりきりの虚しさも、その戦いも、)

             ・・・・・・大いなる調和。

   たれにでも求めている者には受ける、おお、ネズミよ、この恐ろしい拡散――

   奇跡や神秘までもがいささかブルース調になった、メドゥーサなんでしょ?

   模糊とした、嵐の視界。それでも部屋では退屈な月光さながら、――

         「ここには物があふれている!」

         (そうだ、よく気付いたな・・)

         ――そして、何故その後の言葉をしぶる、

            けたたましいサイレンがきこえるか、

            ・・・掘り出された貝や骨が、ためらわせるか、

         声帯が腫れているのか、それとも臆病なのか?

          ・・・・・・確実に何かが漏れている。

       ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)が、

       共和政の伝統を守ろうとするカシウスやブルータスらによって殺害される。五七歳。

       シーザーの遺言状が公表され、姪の子オクタヴィアヌスが養子、

       相続人に指名され、ローマ市民ひとりひとりに金が贈られることがわかる。

       民衆はシーザーの暗殺者を追い出す。アントニウスが召集した元老院会議で、

       暗殺者の刑事上の罪は言及せず、要職人事はシーザー政治を継承することを決定する。

       シーザーが火葬され、暗殺グループに対する民衆の糾弾の声が高まる。

       元老院が、シーザーの神格化を決議する。

         ――二人の女が微笑んでいる。

         そしてその二人とも・・フェイクだ――

           ・・・・・・これを『政治的微笑』と言う。

      探している者には見いだされ、サンショウウオがものうげに漂う。

      支配的な神さながら、下水管が詰まってる。

      何万冊もの本で――

      そして彼等は多分、もっと別のことを考えてる。

          ・・・臭い出す、野生。

          ――燃え盛る・・
  
          ッ・・・ゥゥッ・・・ウウ――

        爽やかな風に僕は吹かれている・・

        なつかしい人を認めて声をかけるが、

        まぶしそうに顔をしかめただけで気付かない。

        それで――どんどん小さくなってる・・。

        どんどん小さくなっている――

      時には起こることがある気はしつつ、所詮、絵の中の物の形なんでしょ?

      知らないうちに、またここは森の中、たくさんの木々と一緒に揺られてる、

      僕という一枚のTシャツ。

          (――ドロップにはシロップという側面!・・がある――

          嵐の去った海で、暗い呪縛の地が見え――

          ・・・・・・また懲りずに、あたらしい創造。)

        時にののしられ、こわがられ、――優しく激しく、明るく暗く、しかし俺の世界・・

        たたいている者には見透かされ開かれる――さまざまな症状・・

            ――知識を積み上げて大人になったわけじゃない・・

            泡に触れながら、ガラスに触りながら、大人になった――

          (巧みにブラジャーのホックをはずし、ジーンズを下ろし・・
   
          真っ白に振る――降る、雪・・舌や歯が、表情を持ち始める・・・

          そして汗は、すずりのようなところに落ちる。悲しい習性で、焦げる。

                ・・・丁寧に書けば書くほど、水面を浮遊する、蒼白い顔――)

             この時、キリスト教会によって悪魔の仲間に分類されてしまった、

             古代異教の偶像神が、インクプスやスクプスとして復活する・・

             ――技巧を用いたがるものほどデリケートで陰性なふりをするのか、

               (・・・星のない夜だった――

               今日は満ち足りた顔をしていたが・・

               断崖から水底へと墜落てゆくような星のない夜だった。)

           蛾が飛ぶ、油に汚れたようなこの空で、やわらかさをつかむ俺の納屋。

           蛾は饒舌な時代に、明確で意味ありげなぱさついた触感のおしろいさ。


       アーモンドやひまわりの種子が、ろうやにいるのと同じ。「来てくれて、
  
       ――よかった・・」と言う、君は生きていくだろう、雪に包まれた丘や、

           ・・・パステルカラーの街並み。キッチンへのアクセス権、寝室のドイツ的熱狂。

           (とうに消えた――はずなのに・・厚い、
          
           そのスクリーンを通して、)

           橋という陳腐。架けられたがゆえのつながりで、引き戻されたと感じる――  

               ・・・何度も美しい夢と思いながら眠った、

               呪文に等しい、夢に・・

               ――流れながら、
         
               ・・・夢に――

             [地方都市の不況はひどい。閉店店舗がずらりと並べば、

             自殺と犯罪の発生件数が右肩上がりになる・・]

               夢ノ内ノ冥利・・学問ヘヨウコソ――

               それはずっと差し込まれている、棄てられた汚い手袋さ、

               何の価値がある? おもしろ――い組み合わせがある、

               靴の先に手袋をはめる、何故そんなことをする?

            ――潜在意識として生き延びた古代の農耕儀礼や、

            豊穣信仰が、意外に根強いことを、君も知っているだろう。

                (シミュレーションを始めよう・・

                あかるくひびいていた、

                あの古代人たちの明るい笑い声――)

              ・・・・・・形而上学的水準での展開と現実の時間の中での展開には、

              時折一致があるが、それは、その場凌ぎの仮設ではないとする根拠ではない。

              しかしオッカムの剃刀として、 「歴史」とは、

              少なくとも認識可能な出来事の断片が残存していることが必要な条件となり、

              ならべて素朴性と自明性、できうるなら、

              歴史における勝者に不利なものや反省を含んで記述された箇所を多く含み、

              というその制約を地盤的な枠組みとした上で、農耕儀礼や豊穣信仰を、

              ――たとえば、超越論的還元で、地平とし、潜在意識とするならの話だ。

                ・・・歴史はそこに原初的な出来事と、世界の存在を記すことができる。
            
        いまの箱と、前の箱・・そして常につくられつづけてゆく新しい箱の謎・・

        魚がたくさん泳いでいる、なつかしい時間をしみこませるように・・

        生々流転の謎、人類の移動の謎――それでも棄ててゆく、途方もない遡行。

        そして、深く眼をつむって、視覚的イメージを強くしてほしい。その信号は点滅している――

        α波・・優秀であることを熱望している我々は、常にあたらしいことを探し続けてる!

              ――このアスファルト・・
           
                       (には、)

              ――このコンクリイト・・

                         (と、)

              問う間もなく・・たったひとつの我が身、

              こと切れていた。

          「ある人は言ったね、パスッだぜ、サイレンサーをつけた銃。

          あんな音で死ぬんだぜ、ねえ、潜水していたら聴こえない音で死ぬんだぜ」  

            皿を割る音の方が大きいということで――

            元来大きな音で死ぬのは、事故ということが多い・・

            [極端なコントラスト、夕暮れ時の海岸じゃ、

            工場ぐらいしか見えないけど――これが香港なら、

            どんなライトアップ?・・]

      緑の茂みは、ふかい皺と、ねじれと、幾筋もの亀裂をもって、

      インフルエンザみたいに、体内の中で眠っていた――

      痛みがぶり返す、トタン屋根に穴があく・・何だこりゃ、硫酸みたいじゃないか。
 
           ・・・時間が経つと色んなことを考える――考える、その方が好きだからだけど、

           けんもほろろ。公園で何匹も、違う猫を見たようなこと・・

              ――陽のふりそそぐスクリィンが、白日夢となる。

          エイリアンがやってきて人間を誘拐していると信じるカルト集団は増えて――

          憶測や幻想、うそ、それにいかがわしい証拠や証言を不当に引用することで、

          事実を歪曲する・・いまだかつて、エイリアンが人体実験をしたという根拠はない。

          また、地球外生命体が確認されているとしても、それが公になっていない限り、

          ――国家の機密として秘密裏に処理されている案件を、考えなくてはいけない。

            ・・・何故そのようなことを?

            ・・・・・・何故そのようなことをだって!

         コカコーラにハンバーガー。スパゲティーに、カレー。

         君の大好きなものだよ、そして、

         時折にはなにかしらのやさしさをともなわせる小道具だよ。

           ――もう一度言ってみな・・
    
           言ってみな――何故そのようなこと・・を・・・

         時の変化を撮るのが写真で、映像で、それが、文章に、

         意識の流れをもたらしたような気がする。

         それがエンターテイメントとして、ライトなものとして、

         より分かり易い面白さへと流れていった気がするけど、

         どうだろう、川はずっと時の変化を表し続けてる。

             (灰皿で眠っている、百円玉・・

             どうしてか俺はそこに入れたくなって、吸殻と一緒に、

             入れた――んだ・・
            
             ――多分、ゴミになって、消えたんだろう)

                 大人の手にのるくらいの、子供の靴、

                 おばあちゃんが食べていそうな梅干しにはなるのかな。

               ・・・ねえ・・消え・・・てな・・かっ・・・たら・・

               ・・・・・・どう・・・なる・・・・・・んだ・・・い・・・・・・

                宇宙旅行の話をしよう。

                たとえば、地球から一番近い恒星へと、

                四三光年の距離を渡って――

             「三七兆キロの向こうに、旅行するだけで、

            アバウトに計算しても、何百年、何千年もかかるような計算だ。

            ・・・しかも恐ろしいスピードで、そのうえ、事故や仲間内の争い、

            さらには旅行をするうえでの巨額の金銭――」

              これを解決するためにワープ航行が生まれ、

              異次元だのといった、まだ正確に確認もできていないことが、

              いとも容易く、当たり前のものとして表現されるようになった。

                満員電車と空いた電車どちらがいいかということだね、

                仮にワープしなくても、何か特別な方法で、

                ――宇宙旅行が出来る時代が来るかも知れないから・・

               ・・・でも・・消え・・・てな・・かっ・・・たら・・

               ・・・・・・どう・・・なる・・・・・・んだ・・・い・・・・・・

         鈴懸の木が、かすかに淡く光って、そいつは俺の中の睡眠薬になった――

         連中はやっぱり商売したり、煙草吸ったり、ジュース飲んだりしながら、

         あわただしく過ごしてる。相変わらず同じ所で同じ人に会う・・

         永遠の休息を前に、重力が必要ない世界をのぞんでいる自分は、

         ぼんやりと考えだす――受け継がれる・・

         でも、ヘリコプターかなんかの空撮かなんかで、緑の草原とか、芝生とかの、
        
         単彩ってあるだろ――あれと同じなんだ、もともとじつは、
   
         さまざまなもの自体に、じつは、色んな表情がある。

         多分そこは学生や市民の保護区なんだ、ハイライトなんだ、

         夜だけ、ずっと向うの谷なんだ――

        いや、人生なんて分からないふりして考える死の靄のようなものか・・
 
        そうだな、しかし、今それは無くなりかけている。そして、そして・・

        言葉は熱く濡れたほとばしりをやめて、冷たく乾いた哀歌――。

 
   幸せな年に僕の変化球であるカーヴがシュートになったり、フォークになるか?

   という、純粋な言葉は――野球少年であった僕におけるムービングファストボールが解決した。

   だが、それが天才的な発明や発見であったとは、僕にはどうも言い難い。

        さようなら

              ――さようなら・・

   何故なら、日本における監督やコーチが、それを教える確率がおそろしく低いだけだからだ。
 
   ――林檎の枝がとある年、梨という鮮やかな文字を吊るしているか?

            そいつは書きかけの手紙・・ケルビムの居眠り・・

         (こめかみが熱くなった嘲弄の響き、頭痛の前兆・・

         そして時折僕等は罪の意識を自覚する。

         奔放な一日。オホーツク海の流氷みたいな一日・・

         パジャマの上からコートを羽織っているような、変な一日・・・)

              ねえ、白黒写真で、

              物事が単純化されるってことを知ってるかい?

              ・・・あれはすごいぜ、

              原爆ドームも、まるで、いま、出来たばっかりみたい!

            ――端的に言えば、迷妄する信仰の気分。

            解脱も気分。しゃらそうじゅも結局みどりいろ、という気分。

            サラソーシャーは多分ロシアの美少女的な気分・・調和させ、

            統合し――バランスをとって・・

              (消えないでね・・・

              ――わからなくなるよ・・)

               ・・・何度も美しい夢と思いながら眠った、

               呪文に等しい、夢に・・

               ――流れながら、
         
               ・・・夢に――

       ねえ、曙光があった、疑いようがないだろ。そこで、凍った冬枯れの草に、

       もあもあと煙が声になる、――声って、屈折なんだな、光をさえぎる葉なんだな、

       俺は小便をかけた。なんだかまるで、正面の入口を板で塞いだ気分だったな・・

                ――ごくたまに、

                南無阿弥陀仏と唱えることがあるんだけど、

                いっそ、名前だったらよかったな・・
   
                神に近いものがオォロラ色に輝くような時代じゃない・・

                魂を腐らせた詩人が――

                自分のどうしようもなさに溺れてる・・

            「たまに、エレベーターのことを考える・・

           ――アパートをさがしていた折りに、聞かされた、
 
           (あの部屋で死んだ人がいる・・)」

                ――鉄路からは何も聞こえないけど、

                ・・・真夜中でも、その花束は語り掛けては――

                  くれないけど・・・・・・

     ・・・叫んで死ぬ、と思っていたのは、ベルトコンベアのせい? 工場-保護施設-公園。

     でも、音楽の中では寄る辺なさも、やわらかに息づく。裂かれ、ちぎられ、したたかに、

     肉が血にまみれたような、雨の気配に・・じっと感情を押し殺して――低く・・ぼそっと――

     おんぼろの薄汚ねえ家屋が解体されるのを、黙って――見てた・・

     「繰り返され、言わせられたものに、唾を吐いてた!」

         見てた・・

         いや――本当は見てなかった・・・

     そうさあいつは、インパクトのある、波の砕け散る音!

     けたはずれの倒木!・・

     台風の音を聴きながら、特殊効果用フィルターのマジック。

  尿の中で形成されているビアガーデン。渋滞がダンサンブルな音楽・・

  吐き出される魚たち・・腹をさする人たち――

  ・・可能性は限りないが、多分おもしろくもない凶暴な時間、かかしはわらからできている。

         (わら、わら、はは・・ハハハ――いま何時だと思ってるんだ、と、

         父親が言う、僕はパソコンの前で、あてどもない、小説を書き続けてる――)

              ・・・在る。

              ――でも、
    
              近頃では、エヴァという女性に、

              記憶の林檎の木を揺さぶられ・・

            ――本って、絵があって、文字があって、数字があって、記号がある。
  
            ほかには、信じることがあって、信じられないようなことがあって・・

            ここに表皮がある、鳥の卵のようなものがある。

                 ・・・でも、記号化された社会は、

                 あたりをすっかり闇に染めていて――

                 手・・手だよね、これ・・

                 ねえ、手だよね――これ・・

              (だから気分だと言っているじゃないですか!

              気分なんだよ! キ・ブ・ン、わっかりーますかー!

              マッサーカー、真っ倒様のキ・ブ・ン、えりまきとかげも、

              運がわるけりゃ、マフラアトカゲ!)

                ・・・隠れた太陽!

                ――雷雨の到来!

       ――わらのなかで、チューリップの首が切られ、啄木鳥が死ぬ。

       自然破壊が進んで――る・・
 
       そして窓ガラスの奥で、こんちくしょうと、謎の叫び声がきこえる違いない―― 

     一種の反動作用。夏から春が来るような、右の足が左の足になってしまうような、

     錯覚にまごついて、あるいはナポレオンも自分のスタイルへの劣等感をデフォルメさせ、

     でもあてがわれたまま、結局何も起こらなかった。・・

     昨日の葉っぱが残ってる――

     それがネッシーなんだよ、錬金術なんだよ、ということは出来る。

        でも、隅々まで、熟れてゆかない――

        だまるとそこで、濃い時間にはなるが――

        揺さぶったり、もう、熱くなったりすることがない・・

           (言葉よ・・

           いつか終わりの方のページから、
 
           君が甦って来るんだろう――)

     だが再びめぐってきた彗星周期のような機会であると解釈することは出来ても、

     本当に無駄骨ばかり折っている人間にとって、それが千載一遇かはわからない。

   過剰な熱で、教科書やノートが散らばっていた。性の暴走・・数珠の爪繰り。

   いつだってそうさ、傷つき、血を流し、震え・・さみしそうな瞳で、

   電灯の消えたような部屋で、明るい表情をすぐ暗くしそうになりながら、それでも、

   心と身体は、しかし魂のヤナギの枝のような深い思慮を知ってゆく。


         ・・・きっと僕等――

         その、ひとしずくなんだと思う――

       やけっぱちになりながら、弱い膝や、靴があわないとすぐに痛みだす踵、

       そのくせ、妙にがっしりとした肩幅・・血液の循環、神経機能、ホルモン、

           ・・・清潔で非常に高価な生活というブランド。互いに優しくいたわり合うという、
 
           消えゆく自我の世界――あなたも同じでしょ、同じなんだろと考えていた時期・・

             (路上に戦車がごろごろしていたら、

             ――みんな、戦争が嫌だって本気で思うだろうな、と考えてた・・)
 
               もう遠くへ行っちゃ駄目だ――

               どうしてこんなに遠くまで来たのかはわからないけど、
  
               きっと・・もう、離れちゃ駄目だ、土が匂う、

               みずみずしい花が、心をほぐす・・・

             [とある日、迷惑駐車が消えたとおりがある――

            でも自動販売機は消えないのな、と舌うちした僕。]

                 さようなら

                       ――さようなら・・

               ・・・芸はどうだろう、自然はどうだろう、

               危機の中で英雄は何度も生まれ、恨みもなく、

               銃を持つことを覚えるのかも知れない――

               シルエットの中で虹は見えるか?

                  ――見えない、

                  ・・この、もののかたちの中で、

               広い視野が、ドラマチックな構図をつくるか?

               終わりがない愛、また始まってゆく恋――

               見渡せば、世界は生まれ変わるだろうか、

               自然はふたたび、あの日みたいに、

               再生してゆくだろうか――夜は朝をきちんと迎えるだろうか、

               どうだろう・・そいつはいったいどうなんだろう――

                 ・・・何度も美しい夢と思いながら眠った、

                           呪文に等しい、夢に・・

                        ――流れながら、
         
                                ・・・夢に――

         口の中に積まれた涙の味とか、やくざな鱗の味とか、つぶれた目玉の味とか・・

         そう多分愚かすぎるゲテモノ。けれど、僕等のアウトサイダー的興味はこの界隈へ来た。

                ――鉄路からは何も聞こえないけど、

                ・・・真夜中でも、その花束は語り掛けては――

                  くれないけど・・・・・・

            でもみんな同じことを言うんだぜ、辛い時代だった。いやいや素晴らしい時代だった。

            ある人は花盛り。ある人はサーカス・・でも、暗くて、かさぶた剥がすような時代だったって、

            言う人もいる。世はいつの時代も濁ってる――敵意を持つ前の時代、

            誰でも完璧に人生をコントロールできるような気持ちになることがあるのさ、

            それで、じっとしていられない。だから狭い、けど、どんどん片づけてゆく。

            いつだってそうさ――ねえ、考えていたんだが、この時代・・

            果てしない壁紙のクリーム色・・それが剥がされ、むきだしになった、この時代、
  
            百年後には、なんて呼ばれてると思う、あたらしい始まり、それとも、

            最悪の終わり?・・何を言いやがる――奥底じゃ、どっちでもあったのさ。

         ――マーケットやメカニズムが政治的意図と切り離されたような、

         カタストロフの限界で、君は遅れてきたんだ・・

         気の毒だけど、すでにもうそういう革命的な情熱の時代は終わったんだ。

            ・・・乱暴だな――

            そんなことできないって言うけど、

            お前本当にそこまでやったのか、

            ――ちゃんと向かい合ったのかって、
 
            ・・・思う。

      だったら、それでもいいさ、器官のレイアウトをくれないか、

      俺はそいつを最初から最後まで、不覚にも涙がこぼれるまで、
 
      まったく別のものに置き換えたいんだ。ルネッサンス絵画にはもう憧れない、

      夢見るたびに、胸しめつけられるようなものが、美しいものとは限らない!

      でも恋人同士の気楽なおしゃべりの方が価値があると思えるから、

      中国四千年の不思議を刷って俺にくれないか、満天の星――

      キス? 兎と鹿のいた、あの森のことかい、

      ――あの真夏の宝石を俺に預けた・・

      夜の夜のことかい? ・・犬の墓場がある、山のことかい、

          と、やめてくれ、パニック、トラウマ――金融業者。投資信託に年金。

          おお、文明の砂よ、さらさらとこぼれ――こぼれてゆく・・

          真面目で、単純な俺が、愚直で複雑になりそうだと気付いちまう、

          四角くなって、ほらまた、ふぞろいな形ばっかりになって――

          俺というぼこぼこの丸太が異様だ。でも映画館のスクリイィンには、

          ちゃんと映ってたんだ・・波に喰われた、俺という船――

          ランボーが社会混迷に醒覚の鐘を打ち鳴らした!・・知性が、
   
          いま、パッと燃え上がって、苦悩の華麗なオォケストラ。

             (ッ・・ッ・・チッ――真夜中の口の中。

             わずらわしいことが、たくさんある。

             ッ・・ッ・・チッ――真夜中の口の中。

             方向音痴の、束縛や狂気が――

             のたうちまわって、時間を気にしないで、ただ、

             目的地を目指してる・・・)

                ・・・デカダンス、美しい人身御供・・

                ――ダダ、不自由な無味・・

                たえず語り掛けてくる、言葉は、

                静かな泣き声みたいに、

                大人になれないけど、

                子供でもいられない、溺れ・・・

             「でもさ、誠実さだよ、真心だよ――勇気だよ、

             クロススクリーンフィルターを使って、

             街をきらきら輝かせるのさ!」
   
        ――燃えていたものが、赤ん坊であったと、幻視が言い始める・・

        すばらしかった、でも痩せていた言葉が頭の中にいっぱいだった――
  
       そこにいて憶えているよ絶滅の危機、いままでにないような共感。

       子供のまま帰れた奴もいるって言うしさ――

       しっかり噛み砕いて考えれば、そういう生き方しかできないしさ・・

       無言の中の同意。弱さに潜む、

       それを越えてゆく悲しみの本質的な体験。


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