1978259 ランダム
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灯台

灯台

俯瞰する町の、タップダンス・・・!


 レッドメーターに突入する。

 BMW。250km/hのリミッター。八トントラックが目の前に来る、

 ブレーキ-精一杯の加速、ホーンが鳴り響く中、すりぬける。

 茶色の髪と髭-ひっくりかえるトラック――。巨大な象の地響き・・。

 かすかに水音が聞こえてくるアンドロメダ星雲が似合いそうな山林地帯。

 衛星写真。GPS画面。周辺の地形が浮かび上がってくる。

 概念は時空を超えた抽象的次元――宇宙的次元の拡張――

 湿った花壇の草や花――墓碑銘のある大理石の緊迫文字――

 それを追跡する、もう一台のBMW。

 間近から排気音が聞こえてくるが、視認は出来ない。

 ヘリコプターがその様子を撮影している。おそろしいほどの緊張感が、

 無理な持続状態を保っている、カー・チェイス。力を失えば、絨毯のように転がる。

 カメラ-冷たく、均質な・・・膨大な・・・情報。

 ビデオの一時停止ボタン。視界の端に歪みでも生まれたように、耽溺-加害者・・・・。

 いくつもの、目、目、目――。
 モールディング
 刳形。カウントダウンをする、遺伝子。照明燈の展示。

 無邪気な顔、荒々しい顔、考え込む顔、その他の顔――。

 偶然を許さないGameの外面変化、不愉快な単語の発色、濃縮する。

 運動法則・・・。生唾を呑みながら、前を走るBMWの男は、

 その時が来るのを待った。緊張は次第に高まりつつあった。

 と、前のBMWが急激にハンドルを切った。思わず力が入った、

 冷や汗が流れ落ちた。均衡が破れた。心臓を刺した。

 灼熱腐敗真っ白な暗闇

 その向こう側は、崖――。帆柱の頭が残っているだけの、崖・・・。

 しかし、ハンドルを切らなければ――。

 道路の数十メートル先には、戦車が待ち受けていた。

 心臓の鼓動第六感深刻な思想家の実践
                      ウィング
 抵抗力を奪われ、逃亡に失敗していただろう。翼部・・・。

 極限の状態に置かれた人間の研ぎ澄まされた神経が、咄嗟に判断した。

 空飛ぶ車、真っ逆さまに、ヒステリックに、落ちる。上空で、稲光。

 スローモーション、ゆっくり引き開けられるドア――。

 男が、車のドアから飛び出て、崖の岩にジャンプする。

 たん、と音が鳴って空気が止まる。
       ハンドグレネード
 ポケットから手榴弾――。
 
 雨に濡れた、平和な町が見える。切り開かれたバウムクーヘンのような平面。

 崖の下には、ガソリンスタンド。奇妙な円盤的視界を有しながら、
                                  スクウェア
 街路樹のあるメインストリートの存在、ファーストフード、開放性のある広場。

 屈託なく、明るく・・・安定した・・・優しい・・・・・・フォルム・・・・・・。

 三方に聳えるビル。コーヒーの入ったポットのふた・・・に――。

 車が突っ込む。かちっ、かちっ、かちっ、爆発音――。

   ――番号のついた部屋、鍵のある部屋、曲がりくねった過去の要求。

 奇数偶数
    
 恐怖のvirusがビロードの暖かな感触を思い出させる。

 数式が宙に浮いている――。減少し続ける時刻が、変化し続けている。

 BMWに仕掛けられた、時限爆弾の音。ちっ、ちっ、ちっ・・・。

 次の瞬間、さらに爆発して大炎上になる。毛孔が開く、地獄の蓋の開いた音。

 パズルがワンピースだけ足りない、完璧な世界の形と色。蟹の吹雪・・・。

 炎に焼かれ身悶えしている人の宗教画的映像のダイナミズム。

 恐竜の形の灰褐色の噴煙。蝋燭の刺激臭-網の目の迷路、サテン・・・。
 、、、、、、、、、、、、
 雨のざわめきが降ってくる――。感慨と息苦しさ・・・。

 「仕留めたか?」

 頭上の、BMWから道路へと出てきた男が言う。

 肩が強張った。蒼ざめた顔を刺したように、目を充血させている。

 からんころんと、足下に手榴弾が転がってくる。飛んだ安全レバー。

 テレピン油のエッセンスの入った小瓶の半睡状態。要警戒-早駆け、到着の兆し。

 雨が服をまだら模様にする、言葉の半狂乱的捜索。運に見放され、お先真っ暗な表情。

 動揺した一瞬のあと、肉体は行動を開始する。breakthrough...

 「――な、わけはねえか!」

 傾斜した瞬間、男は低い積乱雲に向けて、手榴弾を蹴り上げる。

 崖から、Tシャツとジーンズ姿の男が登ってくる。

 雨が降ってくる――。

 唸る筋肉、飛び散る汗・・・。鼻や舌の野獣の如き変貌-瞳孔の拡大――。

 痙攣収縮

 斜め前に踏み込み前の手でパンチを打つ。この時押し込まず、

 当たる瞬間だけ力を入れる。躍動する、胸板の発射エネルギイ。

 まつ毛の奥の鮮やかな碧色の眼。

 <注釈が余程必要そうな、神秘的な瞳

 <唐突に顔を出す、身体に染みついた反射作用

 だった――はず、じゃないか・・・。

 ジャブ・・・ストレート・・・フック・・・・・・。

 ボクサーがパンチング・ボールを殴るよりもはるかに速そうなスピイィド。

 道路にいた男は避けられない-フックガード。が、次の瞬間、

 外側斜め45°前に踏み込み、軸足の踵を上げて回し蹴りを繰り出す。

 どんどん集中力が上がってくる、燈火台の底の未来。鶏の飛行。

 人間の肉体そのものが響きへ鍛え上げられたような、堰の声。

 足の甲ではなく、脛で蹴る-膝は曲げず、ムチがしなるように・・・。

 モロに喰らって吹っ飛ぶ。impact...骨がめりめりと折れる音。

 喚起する慰藉と快楽の匂い。携帯電話が鳴った。メールの着信音がした。

 それを無視したまま、ポケットから拳銃を取り出し、グリップを握りしめる。

 舌を突き出して喘いでいる男――。

 無機質な感触の中、ふうう――ううう・・・と息を吐き出しながら、

 脊髄に這い上がる震えを感じた。指先へのpressure...

 こめかみに直撃した。すぐに、上着や下着を、ジーパンに隠したナイフで切り裂く。

 エサづくり。診察台に向かう白衣の男の気分だ。

 ヘリが飽食でもしたように、急に慌ただしくなる。

 戦車が向かってくるのが見える。乗り捨てられた、もう一台のBMWに乗り込む。

 鍵は点けっぱなしだった。油断したな、と思う。無線機を操作する。

 人びとは会話に餓えていた様子だ。ニューヨークタイムスの記者みたいだ。

 消防車のサイレンがどこか遠くで聞こえてくる。

 切れないハサミで傷付けられたような痛み――。密接な惰性・・・。

 「・・・・・・手厚い歓迎だな。」

 <契約条項・・・

 <支払通達請求書・・・・・・

 なら、わかるが――。

 助手席に、ペットボトルの飲料水があったのっで嚥下する。
 、、、、、、、、 、、、、、
 葉巻があったので、火を点ける。

 緊張を少し解く。感情を抑制した事務的な口調で喋りつづける。

 性衝動をコントロールする自制力のバランスが水平になる。

 暗殺という消極的なGameのルールを説明する・・・!

 乾いた咽喉は、水とシガレットを長い時間求めていた。

   ――雨後の筍のように、ホットパンツ、ビキニの水着、サイケ調のワンピース。

 「――任務は完了した。知っているはずだ。部屋に爆弾を仕掛けたな?

 ノーか。作法に挨拶に通過儀礼か。そして、車にもご丁寧に時限爆弾を仕掛けたな。

 情報を知る者は消せ、か。これがお前等のやり方か? 汚いことをしやがる。」

 さしづめ、テロリストの内通容疑。脳外科医の喜色満面。

 疑惑は加速度的なpressureを湿った砂だらけにする。

 ストップウォッチを誰も止めない・・・!

 「・・・・・・取引しようミルトン君。」

 (眼前の金しか見ない、盲目のギャンブラーと思ってるのか?

 《反-謀略、狡獪そうな顔つき・・が――風船と化して宙を飛ぶ・・・

 「――ヘリと戦車の時間稼ぎのつもりか?」

 次の瞬間、BMWを走らせる。宙に火炎の華が咲いたのが、バックミラー越しに見える。

 火の筋-案の定、ミサイルランチャーが飛んでくる。宙を舞う、地を這う追手。

 道路が木端微塵に砕け散る音がする。

 画廊に展示された古い絵画特有の乾いた気配――。

 「・・・・・・お前等は全員皆殺しだ。首を洗って待ってろ。」

 BMWを曲がり角でキキッと停車する。窓を開けて、ヘリが来るのを待つ。

 拳銃を構える。ヘリが現われた次の瞬間、操縦士目がけて引き金を引く。

 「・・・・・・そんなこと、言えるとは大した度胸だな、ミルトン君。」

 銃火が閃く。しかし距離が遠すぎるので、すぐに命中したかどうかはわからない。

 しかし数秒後、ヘリコプターが大きくバランスを崩し、操縦不可能になって墜落する。

 爆発はしなかったが、降りてきた者たちを消音付きの拳銃で殺した。

 簡単だ。革の手袋をはめているみたいに、

 永遠に不可能な課題のような敵が目の前にいる。

 嗅覚の神経短刀の一撃北風が樅の梢を揺らす

 怯えている・・し――混乱して・・・いる――。
  
 戦車がやって来る。心臓の鼓動が聞こえてきそうな、図体だ。ヘリに装着されていた、

 機関砲を外す。機関砲の脚と車輪を、外す。

 五十連弾倉が、ヘリの内部にあった。エリコンのGAIーBO1型だ。

 木箱に二十ミリ機関砲弾薬五百個と英語でプリントされた木箱が数個ほど置いてある。

 ミサイルランチャーに向けて、撃つ。照準はつけやすい。

 一分間一千発の回転速度を持つ。こんなのを生身の人間が目にしたら、

 吸盤のついた長い触手で雁字搦めにされた印象の無為に身を委ねる。

 サフラン色、エメラルド色の乱舞。暗黒の火柱の球体的停止-雨・・・。

 「・・・・・・何度でも言う。皆殺しだ。」

 そうやって彼は殺す――彼は殺した――

 殺した――何人も何十人も何百人も殺した――

 プールやテニスコート利用者(を、
 
 ハードワーカー(を、

 「――健闘を祈るよ、ミルトン君。叶うはずもないが・・・ハハハ――。

 幻の対戦車ミサイルの君が来ることを、首を洗って待っているよ・・ハハ――。」

 ピュィィィ、と無線ができなくなる。
 タイムオーヴァー
 時間切れ。あとには、火の燃える音と、黒い煙だけだ。

 奴等は馬鹿だと思っている――。だが、装甲が一番薄い戦車の上部は別だ。

 あるいはエンジンルームがある後部に手榴弾を投げ、機関砲を撃てばどうなるか?

 ヘリには、面白いくらいに手榴弾が見つかった。

 蛸の食物的反応軟体動物的巻き舌音慓悍な魚

 「さて、問題です――どうして、こんな手の込んだことをしたでしょう?」

 ニヤニヤする、男。

 欺瞞-irony...

 のびやかに写し取られるリアリズムの質。

 耳元に絡みつくようなキャタピラの動く音。

 可視の世界の異質な秩序天使の哄笑のこぎり状の低い山

 「闘いをより円滑に処理にするため? それとも、――」

 戦車が来るまでに仕掛けておいた、数十個の手榴弾入りの木箱が、

 戦車の上に落ちてくる。山間では、ちょっとしたことで、がけ崩れが起きる。

 幹の下の方で樹が裂ける音。縞模様のゴールへと向かって、その視界が消える。

 がけ崩れが起きやすいような場所。地形を見るのは得意だ。

 なにせ、そういう修羅場を潜り抜けてきている。
 ホール ハザード
 穴と障害物が新鮮な魚介類にする。

 「性格が悪いから?」

 それから、エリコン機関砲に五十連弾倉を砲に装填し、撃ちまくる。

 炎上。大爆発――。外部APU行動不能もやってみたかったが、それこそ・・・。
 
 ホモ・サピエンスの蒸し焼きの出来上がり。作戦行動のような場違いな嫌悪感。

   ――電熱器的凝視、コルク栓の開く音、削った氷片の波打ち。

 「叶うはずもない、か・・・。」

 本当だな、と男は思う。

 賭け事はいつでも一か八かだ。対戦車ミサイルがなくても戦車を撃墜できる。

 BMWに乗り込む。構造-detaiは胸の奥にしまいこまれながら、

 アクセルを踏み込む。向かう場所はもちろん、ペンダゴン!

 夢が頭の中に迷い込んできた蝶のような一瞬の、虎、孔雀、犬!

 俯瞰する町の、タップダンス・・・!


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