1978932 ランダム
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灯台

灯台

想像の森 3

  5 灯台はひとつの神話であるか?


      縹緲たる海にある夜営、・・しめ、湿り気、しめしめ

       それを注連縄のように扱える男の連想力と、古い伝統の象徴的な姿は、

        ――「ヒヒ、しめしめ」

       ひそめられた、砒素、水銀、その他人を死に至らしめるもの

        ――「狒狒、始祖始祖」

         ・・・灯台は、おそらく夜の臨港のようにひろがっている。


  5-1 だが、しんじつ、あてどない真昼のおやみない微顫音


            ・・・いつもは気さくで、やさしいわたしのようにそれは在る。



                      ・・・無意味に分岐する氾濫の底で 

       競争を擬態的につくりだし

              
                      ・・・有るはずのない硬い彫刻線


   5-2 唖


唖レグロ

                 唖羅ベスク 唖レルギー

             唖ルファ


   唖ソシエーション

       唖津斑・ツー・デート


      唖イ 唖キ  

        唖ク      唖メ  唖徒


唖クロバット

     唖斑ター

        唖・羅・モード

          唖ンダー羅イン

               唖ヌス

           
唖ナログ         

唖イ           唖ク 

唖メ          唖徒

 
     唖ンサン斑ル  

        唖徒・羅ンダム 唖ナル


 +


 まず「唖」――それは鍵括弧という牢獄のなかにある

 そして「唖」は

 (あるいは「唖」と呼ぶ者がいれば)

 そこにノミネートされる 唖げ足を取る 唖ごがおちる

 寺山修司は「唖」について歌ったか

 黙示録を読め旧約も読め「唖」


 唖なたは幸福ですか「唖・・・!」


 しかし「唖」とはあなた様のことではない

 (ノック・ダウン。炎上。―――アップ・ダウン)

 されるのを嫌がっている訳ではない

 パーソナル・コミュニケーション「唖」

 そもそも「唖」とは誰だ

 「唖」とは・・・


 「唖」はド唖・ノブのなかにもすみついている


 だが、・・・わたしは「唖」を知らない

 それは永久に「青」をしらない悲しみに似ている

 それは中国語・広東語のひびきだノレッジ・インダストリー

 (クスクス 唖 ハ 唖 ハ・・・)
         さま
 様にならない醜状をさらしながら

 はばかりさま! 唖 ハ 唖 ハ 

 「唖」を笑い者にするわけ


     「唖」は波のようにかえってくるかもしれない唖シンメトリー

    「唖」は波のようにかえってくるかもしれない唖イディアー

   「唖」は波のようにかえってくるかもしれない唖メエバア


「「唖」なたはきっと「唖」なのね、裸足でかけてくる


唖・・・唖唖・・! 亞亜?―――! 

それは息のなかにもある

ハ 唖 ハ 唖


    5-3 もたり


     BLUE あなたはどうして荒唐無稽、

いっさいすべてを見透かすような色なのに、

どうして傲慢不遜、

かたむく陽射しのうちにあらわれだす、

あふれだす、

グラスのいろさえもあなたでそめてしまう

ひらひらひらひらGood Day 

すこし飽きたの



    うるおいにほてりに

I love Blue I love Blue 

黒いマホガニーの草、黒曜石のような葡萄酒、

靴下の色、トランプの色、

―――音楽のために気がどうかしていたのだ、

ぽろぽろ ときどき、

こころをうしなったりするよう



    一日の終わりなんてくるの?

ウフフ、お酒に酔いながら

襞がたがいにからみあっているくちびるの炎と息の産物が

オリュンポスの林檎だっていってくれた

あなた/スローモーションかけたダンスのスタイルね

「海それは膿とも呼ぶのね、ウフフ、

グラスをかたむけて、氷のとける音

がききたいわ/ア・・ン・・・



    思いっきりかわいくしてね

I love Blue I love Blue 

どこか遠い世界で、いま、こころまっくらなヒィと

ウフフ、水の面を駆け巡る火・

テーブルに置いたトマトみたいに

はじけて消えて心臓


     5-4 あなた、街路樹を泳いでゆく


    気がつかないみたいだ

    気がつかないぼくの歌は

    蒸発した

    叔父に捧ぐ


  ひつじ雲とひつじとひつじをかぞえるぼく


車が駐車場のバーを越えて

トンネルの中へ

吸いこまれて・・・・・・


  メエメエメエ もしそんなこえでなけたら

 しろいコートを買いに行くしろいコートを

売っているショーウィンドーに釘付け


    気がつかない

    さ

    スケートリンクでほんの百回転

    してきみのむねにとびこみたい 


  ありがとうありがとうお嬢さん、

   ――みんな、ふんづけていってしまう


 落ち葉を――また、落ち葉といいながら

  きっと大切なものなくしてしまう


・・・ラベンダー色の街では・・・

    ・・・ささやきのヴァイオレット・・・


      5-5 三島のことを紀島、と書くような感じ


 モヤモヤとしたキモイがキマイラする

   あああああああ ・・うお?

 レゲエやラップする。嗚咽、ウェップ

  ジャップ! タップ・ダアンス

    めくるめくる床(る)

   る、は由香、美香、祥子!

      ・・・そんで、キメエラ


       5-6 良心の責めとも、後悔ともつかぬ感覚


        ねえ、人は誰だって、「ここにいる」・・ことができる

         でも、・・誰だって「もうここにはいなかった」

         ネオンサインを香水のように思っていた、僕も「いない」し

         いつか雪が目にしみる鮮やかな黒をー黒い土瀝青・・・

          (に、)なって!・・なったような気がして――


        5-7 人間の心は微妙な複雑な動き方をするものである


 たくさんの襞やポケットや留め金やボタンがつき、バンドもついている、故郷・・・

   「ははは」とか

   「やれやれ」とか

   「戻れ、エレベーターに乗れ」――

  (惑星間移動――静止衛星――星が光る――星が飛ぶ――星が好い)
  
 彼はこの星の船が、名門の種として(だが、わからぬ)生きた心は様々のモチーフやモメ

ント(ここはどこだろう)・・神の子なのが悪魔に誘惑せられて(・・・

 ・・・からかっているのか、真面目にそう言っているのか

  (不規則な彗星――星が多い夜――)

    ・・・ほら、人が喋っている、何か叫んでいる。

    ・・・ほら、鴉が鳴いている、夜が明けようとしている。

 何処までも平らで、一生をかけても外縁に行きつけないもののように、太陽や月などの円

盤状に見える天体の外縁が炎症している(まるで 足がないもののように)天国と地獄とが

造り主(もう見ることかなわぬ遠いはるかな断崖に
 、、、  えびすまい
 思えた。夷舞が笑いを振り撒いて去ったあとのように。

  灯器は、あった。この転回区域の縁にありながら、転回経路を示すことができる位置に

設置せしめた、十二因縁を観じて覚った、変遷する。構造線が貫いている。・・磁気による、

泡の山々。風と疲労。そして(手をねじれさせるように)から生じる、記憶
 、、、、、、
 転回開始位置を通り滑走路中心線に平行な直線上で転回開始位置から進入区域側へ。

   ははあ、と熱狂して、拍手した。

   うまいうまい、とくちびるが濡れた。舌鼓を打った。

   (大小・美醜・善悪等の差別による、気違いじみた、)

 あらゆるシステムには癖があり、障害がある。

   甲状腺障害

     (識別可能な障害・・・・・欲望と理性の相関関係)
 、、、、
 堕落誘意。情念駆動機械。(情念や超自然的な力によってコントロールされている)それ

によって象徴的リハーサルを必要とする(嗜虐趣味や屈折した情念ほとばしるほどの悲哀や

憎悪
)あらゆるものは経験や訓練によって達成しえる(思想・感情・情念・背景などを勝手

に想像してしまう仕掛け


  ・・・アナタハ座ッテイタ

  ジェームズ・ボンド映画風のタッチ

     ・・・アナタハ引キ離サレテイタ

  「逆風料理風って何のことですか?」
                  、、、、、
  「これは素晴らしい料理・・荒れ狂う風」

 (星を食べている巨人――茎や花びらの所が美味しいという料理研究家――)

 あらゆるものは精神衝撃に端を発する(属性のシルエットがさらなる境界線があることを

教えます
)科学技術をぬきにして人間生活は考えられない(無人島の風景画を破る)公害、

環境破壊、そして新しい戦争兵器がおびやかす(ほら、君は忘れてない

   ・・・科学技術の震源地ニンゲン・コク。

   ・・・ニンゲン・コクにはカルサとオモサがある。

  (でも、一度だって、大虚言の如き虹、と評したことがない)

       ――泳者のキックによる波紋が彼の後ろに残った

     ――キックオフやパントやインターセプトやファンブルの後のランニングバックの動き

 さながらフランスやノルウェーの森林のような制御機構よ、記憶装置よ(エゴイスティッ

シュな歴史を因習として肯定
)皇帝、いまわれわれはその大きくて逞しい姿を、おそらくそ

れまで生きながらえることで培われてきた理想とする(或日の夕方、東京から電報が届く)

  ・・・真っ青なほどに真っ赤になり真っ白になり

  ・・・強烈にわれわれを魅することがないとばかり、倦厭して、唾棄し去る風景と言った。

 (戦争はみんなを不幸せにする。)

 (戦争はみんなを幸せにする。)

 ・・・戦争なんて特定の人たちのイメージ言語にすぎない(金で幸せを買うことはできない。

⇔できる
)だから旅行の準備をしている(芸術と音楽の森、クリスマスの雰囲気)世界が創

り上げられたという絆が断ち切られる瞬間(彼はセスナ機のように着陸していた

   何が幸せになるかわからない(なおもふるえる酒・・)

   何が幸せだっていいと思う(長く震え、ふるえながら混乱をひきずる腕・・)

 生命の力が不足している、と森のはずれの陽が影たちの交差、接触の中で軋む青ざめ、硬

くなる蛹(だからわたしは存在しない)・・ああ、激しかった頭痛(瞬間にのみ君臨す

る斜陽は果物、一体誰の舌にお前は溺れる
)体内には自分では気づいていない荒れた海の波

機能とはめまぐるしい一日を最終列車のあとのレールとの距離

  ――わずかな時間で、目に見えて一つ一つと続いて拡がっている漣。

  ――小波は細波、空中をのろのろと進んで来る、支援。

 ――細い細い糸のように細い眼。(星への旅・・


         5-8 幻を信じていることを、流氷とは言わないのか?

               、、、、
      詩の韻をダンスレッサンというところのデッサン

       いつしかやがて、他愛なく覆されることを知る、たわしなんだ。

       スパイスの抜けた料理のように思えるチバユウスケの歌詞があって、

       でもROCKで、攻撃的で、ダダで、しぶきをあげる熱波で、

       不規則なシナリオを重ね合うところの歌詞が、黴のようにこびりつく僕は、

       ・・・現代詩って何だろうと考えていたりする。


          5-9 朝


 それでもまだ生きていて朝を迎えた
 からかね
 青銅のふたが火をふくような今朝

 一滴の水の声 

 またその感触に


 解析学の教科書にはっきりと甦る

 風車の夢はもう見ない

 寒い手紙に何回目の夏を知っているかと聞くくらい

 一本すぎの下


 宝石の角度をはしる鎖された朝

 トランクが足にぶつかって犬の鼻のように敏感な脳は

 すべてのまぶたのうえで

 また別のこと・・・まったく別のこと・・・・・・


 踏切のむこうの水蒸気を考えてる

 そこで色彩に戦慄する

 それからやわらかい魂なんかに

 死んだ葡萄酒のことを教えているのさ


 あたりまえの子宮という斜面に太陽の到来

 それで舌や眼が特別だっていうんならエロスは蛇さ

 ふやけきった耳のために

 栓がみつかって


 いまもひじょうな疲労にむじゃきにエキサイトして

 アルミニウムを新しいみず色にかえる

 そんな勲章なんかに メトロノーム

 あと僅かだぞって教えてやるのさ


 どうして生きているんだろうと問い掛ける

 光が鞭撻する 埃が金銭する

 ゴムの樹がほぐし・・・鉄道は星の夜・・・・・・

 とりあえず生きていてラムネのビンの青さだ


 死んだ奴のまま非常に熱烈にたばこを吸う

 見飽きても見飽きないものがないっていうのは

 嘘だと知ってしまった あの日から

 ホモサピエンスは仮面


 ああ でも うたがいなくそんな朝が好きさ

 混沌は・・・汚染なのか・・・・・・

 そんなことを問い掛けながら

 もっとも美しい黎明にもぐりこむ夜さ


           5-10 所詮人だ!
 

 ――しろい日光が背柱骨、

 いや尾?骨[すわれない、あるけない]

  ・・・ただ、くだける 

    レコードの盤面、永遠の相の下で

  固い殻の鎧が――止揚

   ・・・暴力的な音(が、)マストをひびかせるとき、

  (それは、)錆びた塗料罐だ。いや、おそら

 くそれが塗料罐であろうと思うだけで、何に使

 われるのかわからない罐である。(ゆえに、

 (ゆえに、・・・断定)すぐにわたしはそれで鍵をつくった。

 格納庫、下界。神の依代(空白値以外の省略値、)

  ・・この脆弱なからだはいつも、

 巨きな煙突を知っていた。

 鯨のようにつかまえきれない

 煙のことを知っていた。


            5-11 明らかな形を成していないが、確かに存在する非詩



 木々や草花は何の為にあるのだろう。

  あるのだろう、ひとりぼっちで、裸で、武器を持たない理由は。

  あるのだろう、小石の間に取り残された泥に漂流する薄暗いランプがあたる理由は。


 この海闊くという偉大な景物を添えている、

  ここにアダムスミスや、ミケランジェロや、人類子孫を増やす法則が

  ここにあてどない視線、野原エジプト人、曠野バビロニア人 
 

 平沙渺漠として人煙を絶す、原風景の手をしっかりと握りしめてやまない

  精神の根は何故なのだろう。(思考の実体を表現する。)

  それは一つのあなたの暗い息吹(巨大な空っぽの箱が見えるよ。)


             5-12 欲望は青い光だろうか・・・?


 
         巨大な装置は自己描写に 説得力をもたせ

           「魔法としての牽引力を与える、」

            ・・・心の深淵みよ

         コロンブス航海誌さながら 総身、濤

           「波が打ち込まれた釘である、」

          「いわば花から花へと飛び廻わる蜂さながら、」

             話が謎のように一向に要領をえな

           ・・い。ぼかしているのか、それとも暗いのか

             ・・・・・・暗いのか?

            近代的自我の萌芽・・機械化――合成物質

              ・・ハイ・テクノロジー

            「欲望は青い光だろうか・・・?」



  6 心の底には炎が眠ってる

 
 剥き出しの岩肌を見るたびに、あをざめて冷たい。頭上は深いインディアンレッドで星は

なく、彩も失せ、香も儚く、幾百年かの昔に運び去ると同時に、どこからともなく田舎の空
           フアイアプレース
気が画面から流れ出て、暖炉・・神経質なかわいい男・・・女のような男が「闘争に勝利するぞ!

」と口にしていた。バスの声はバリトンの声より低い。

 心のなかの小さな声は言う――日、月、星晨の運行に至るまで、その小さな声の不思議な

ぬくみが続くといい。火曜日は月曜日に常に続く。・・

 「そうだ!・・神よ、我が声を聞き給え。」
                     いまし
   ・・コマドリの液体化する鳴き声。縛めたこめかみ。

   ・・梢から梢へと柔らかに移り変っている。空に連れ去る、そが宮殿。

   ・・コバルトの空、玉子色の綿雲。厳かなれども、逼らぬ、万斛の風を呼吸し。
 、、、、、、、、、、、、、
 時代的ないい回しじゃないが!「・・生き方、生き方ってやつはさ、もう諦めてしまったの

かも知れない。目をくらませ、背丈をちぢめてしまったのかも知れない。終末は来ない。」

  ・・・花や木の葉や小鳥や雲や。その風姿せまらざるものあり。聞く、連想ははや、左右の

     翼のごとく飜り、

  ・・・ほかには?(他に何かあったろうか?)

  ・・・「週末は来た」・・こみあった電車の隅で

   (あの屋根の上に、アカシアの木の枝が見え)

   (あの屋根の向こうに、風があの枝を揺するのが見え)

 しなびた革袋のような自分、霜降り肉のような顔、うすのろな煙突から吹き出る真赤な焔

よりも軽い煙、感情のあふれた狂気じみた返事と蝦蟇のような泡の想い、・・全身を向こうの

手中に託し、前科の坩堝たる曙よりも前に、ああそうだ、あの婆さんさんはいつもだらだら

と他愛のないことを喋っている。しかしその実 少しずつ減ってゆく人生を切り抜けるため

の慰め。自分はビート派 さらには荒地さながら・・黄金の雲の上、飛び翔けり舞う純真。

  ・・・他には、・・ずっと見渡すことができた。

  ・・・そうだ、ずっと見渡すことができた。

 時代相への痛切な関心と、鋭邁な批判と、燃ゆるが如き本能的な熱愛とをもって・・あえぐ

胸の動悸が静まるのを待ちながら、仏陀の金言も色を失うたようだ。輝かしい空気をつき切

って空に滑走する燕のように南東部はだんだん明るくなっていった。重い靴音が天井の上を

歩いていた。悪寒を覚えた。軽いめまいを怯えた、時の洋々たる流れに乗っている自分を、

動きの中心に寄せて、それと同じ程に、軽い息をゆっくりと押し出していた。薔薇、椿、・・・

まばゆい深紅となり、そこで地平線に分断される形で、太陽の巨大な輪郭がじっとしている

・・見知らぬ人にじっと見つめられていることを意識し、ベッドの上で眠りにじっと見つめら

れ、揺れ動く心理、・・分かち難い氷河、人を呑みこみ・・・

 太陽は氷を溶かした――飴のようにどろどろとした――水溜まり――

  「天地の果てまで金色の光にそめて、静かな入日・・」
        こだま
  「山脈に谷谺をかえせしその響は漸く遠ざかれり・・」

  「そして思った、石鹸を、糸を、線香を、蠅取紙を、・・・」

 そんな時には、数輪の薔薇の花が壜にさしてあり、少し青みがかった部屋のある絵画に向

かって、誰かがしゃべる姿を思い描いた。自分で覚えるまで四足で匐わせたように、日向

の蜥蜴みたいにうっとりとしていた。盛りあがり繁り競う草木の緑、ジキルじゃないハイド

の声だ!・・たとえばそれが地球上の無に等しい高層建築物と、電流と、鋼鐵の機械へと腕や

手をあらわすものだとして、ピアノの前に立ち止まり、蓋を開き、楽譜を繰り広げ、鍵盤に

手を触れても、蝶々は飛ばない。まだ、蝶は飛ばない。固い蝶番。・・眼も耳も鼻も、あらゆ

る官能をふさいでしまった後では、しだいに磨り減らされ、その一枚の絵が痩せた拳となり

、卵も腐ったろう。舌という、釘抜き。一定の批判を下すに困難な中間的局面の一つであっ

た。若い彼等には、もう政治家の嘘が見破れる。

  (一つの壇前にたたずんだ、と自分は思った)

  (花壇のバラは良い香りがする。)

  (そうだ、その花壇は水をやる必要がある。)

 マツチ箱を積重ねたように、点、線、平面の構成美を誇示して、ポール・ゴーギャンの

様式で「何処へ」と言い、ヴィクトル・ユーゴーの様式で「?」・・瞋恚肝に入り、終生とけ
                            モノマニア
ない怨恨を結んだ、塵の世のわづらひより避れ、偏執狂的な態度でありながら、明麗なる夏

の夕の感慨。最期の日こそは飾ろう・・!

  「飾ろう、ニイチェ的な暗示」
                   さしはさ
  「飾ろう、歳月の悠久なる概念を挟めるがごとき海岸かな」

 ――彼にとっての無垢の天国、旅の最終目的地は、何と遠いのだろう。甘い果実を採るよ

うにいかない、大型で極彩色の蝶、空中生物、黄昏に袖の無い愉快なあの感じ。しかし彼の

眼にさえ、ひろがりながら荒れ果ててゆく推移はとまらない、死という農夫が見つけたのは

、虫取り網でも籠でもなく、心臓が高い音を立てて踊っていた森の鮮やかな記憶・・森は遠く

なっていた。議論の無益さを知って激昂の時期と銷沈の時期とが、急激な勢いで交互にいつ

も襲う臆病さと発展を認めながら、森は、踏み込めない森、・・勤勉な蜜蜂の巣がある、森。

  「大都会での無為で浮ついた生活、恋人への行動規範、ケーブル上の信号・・」

  「印字するドキュメントの縦方向・・」

  「わき出づる朝のコーラス!」

 機械の心臓は間斷なく鼓動し、電信し、際限なく耳障りなノイズでメスした。それがキャ

ンバスを破ったのだ。・・いま、見ているのは飲食店などにおける価格表示。広告。それらが

、そらぞらしいものに思える。心をむやみに騒がせる悲しい旋律、商人の呼び声。追福のた

めに刻んだ運命共同体の根本結紐。ビジネス。資本主義。文化。

  (違う、と思った。違うはずだ、まったく違う、まるで違う、まるっきり違う)

  (違う、道行く女性も、男性も違う・・刻一刻滅亡へのコース、バベルへのコース)

 ・・・もっと違うのを見たかった。たとえば、新しく、とらわれずに真理を求めようとする年

少の求道者のように、ラバはロバとは違う。たとえ気が違う、筋が違うとしても、猛烈な勉

強心を起こして、思索し、研学した。社会的集団、文明の地層、重畳し粘着せる権利関係の

強固な団結。・・野球はクリケットとは違う。野球とソフトボールは違う。過ぎ来し谷間をふ

り返り見、紺碧の道なき海に航路をひらいて、種々の考えがぐるぐる回っていた。堪えがた

い種類の懶うさが静かに頬を膨らませる。アメリカ、ロシア、近東。

  「すると、行く手の遠い地平線をうちながむべき・・」

  「うちながむべき・・地平線の上の実体のない蜃気楼」

 雲が地平線に沿ってたなびいているように、埃が塔に昇るように、腐敗されてる思想にた

いして、反抗して起ちたかった彼等の願いが旗のように捲れる。北極の氷が溶けるように・・

眠る。眼をとじて。星を見上げる。・・森は鳥でにぎやかだ。
 
  (かれらの魂をやさしく抱くヴアムパイアよ、君は言う――

    月には森もない、でも森には月が射す・・)

  (おお悲しきアムパイアよ、)

 執拗に仕事のうちに没頭し、汗にまみれた穢らしい行列に敬意を表する。数分間たつと、

頭がぼんやりしてくるカメラ、時計と違う。意味、理由と違う。我々の・・・というより、彼の

感傷。冷水の盥に頭をつっ込むように、醒むれば、霑える色は淀める水の面となる。羞恥を

覚えて、内心の夢想に微笑みかける。森は何処へ行ったのだろう・・

  (森は、一片のパンが自由を我等に、と言うだろうか。)

  (森は、不毛な土地で、最も大きなもの、最も広いものに接すると言えるだろうか。)

 怒涛狂號する太洋のイメージを、千里向こうへと埋めて、遠くなった刺戟、噴射式洗眼器

、ああ・・森は深海のように沈んだ。沈没した古い神話国のように、妖精も、あのロマンとい

うものも今は少しも感じない。食糧がなくなっているから。というより、自分は滝のように

長い影を曳摺り、牡牛の鳴き声が聞こえる、あのLabyrinthにいるから。・・森は鳥でにぎやか

だ。でもここに鳥はいない。鳥はもう、駝鳥になったし、鶏になったのだ。

  「緑の沃野を求める魂の植物は、宇宙は生命ある有機物の住みかと思う・・」

  「無限の過去以来存在している、美しい言葉や念想が殆ど絶え間なく流れてゆく・・」

  「観念の中に安堵を感じている。そして自分は自分自身を憐れんだ・・」

 ああ、空はオーケストラ。発足と建設、次いで衝突と淘汰。これから先も、彼の監視者が

、神という決定事項、あるシナリオに沿って幸運に恵まれるだろう。鞏固な思想と信仰と意

思とを守り、たまにハンマーに打たれながら、研究に倦んじたいと気高き希望に、自分は、

しかし時たま安心できる。そして、そこはいつか、朽ちた花の種子で花園になっている。蝶

はキャベツを澄ませる。でもキャベツは蝶を棲ませる。

  ・・・しかしこうも思わないか、最後に到達した形態と位置が、

  ・・・さらに不完全な世界を混乱へと導き、次第により鮮明に、

  ・・・ああ存在を無にしながら、自然を傷つけていくことになりはしないか。

  ・・・知性は常に追求する、旅の糧を得ることこそが人生の目的かも知れないから。


  6-1 それが神性というものだ


  それが神性というものだ

  それが石段というものだ。ひとつひとつのまばゆい、

  ゆうえつ感というものをうむ。鉱石の不老不死をもうんだ、

  あやしき石の和睦だ。それはちょうどがけ崩れのときの大合唱である

  そしてそれが骨のように摧け、結晶のひとつであると思えたとき、

  こころはぬくんでくる。魂は濃縮する。つぎの時代へと姿かたちを変え、

  涕は落つにあたはず。はっきりと焼き付けられた

  一ばん鶏のなくころに、わたしは生き生きしたちん黙が、

  冰のようにひややかなほこ尖をもって

  驚愕のいろをみせながら眠るのをみる。ああ、生命よ、
       
  いまお歔きになったのはあなたですね?



   6-2 ギタリスト


 woo…俺がギタリスト志望だったら、

 バンドに入りたい。ばんだナ・・ヲ・・巻いて(駒、独楽)・・巻イテ

 一晩中演奏・・デンシ・・詩?

 感覚がうおうんうおんギターでやってるエクトプラズム。

 騎乗する揮発!

  ・・蚕食してる下賤な奴らの息吹。オー・ノー

  ・・・ノウハウ・ライセンス等または意図的に特許等に出願していない。

 俺ギターの形の体をした、海底にすむ原始熱帯性のエイ

 コードをおよ・・ぐ(愚)・・

  ――いつまでたってもスカウト現われないわあ

  W.A.ホワイト・・俺の名前

   ウェアーにホワイ

 NOTHINGな人並み、オオイヤア人波(は、)とほうもなく悲しい距離

  ――人ゴミさぐってもいないショー・ビジネスのスカウトなら

      販売枚数という経済的指標最優先を明かす・・・PEACE

 でもMOTHER

 真っ白になる頭、もう死んじゃいそうな魂、

  物質に宿った魂! 

 ヘイ ロック・ミュージック!ポップ・ミュージック!

 最終電車の音がしたぜ、・・爆発する 瞳(LOVE

 カエルの赤ん坊みたく親切に話すことが命令の範囲ってことなら、

 鳴らすぜ、高鳴るリズムのビート

  ――次第にその位置を変えていくための重力計、

   ティーヴィーは嘘、ドリィーマーたちの嘘

     ブラザアエンドシスタアたちの始祖 セクス・シンボル。

 ただ、やりたいだけ・・突っ走るウィルス

 バラしてしまえばいい突然音楽がやんだ時のコック

 ひねるべき抑揚、さまようべきブルース魂のこもった感覚

  ・・システムとシンクロしたい、音・光

  ・・・薬・電気ショック!

 魂の悲鳴に載ったPDFソフト!

 ガール! もう結構イケてるの、それともそうじゃないの?

  君はお釈迦になる前に、お洒落するの!

 思うわけ 

 エアロ、レッチリ、・・神 ジョンレノン!

  思うわけ F UCK(もうじきだろね、)

 そしたらこいつら、マッシュルームカットより始末に負えない、パンク

 みんな下手糞なR APE、とっても、やってられないわポール!

  キュッキュッキュッ、と擦り合わせる弦の上の指。

  間違え――てイル・・ズレ・・と魔・・トマ・・止まる

    (ねえ、・・超高層ビルで蒸発的なラヴしない?)

 「歌手デビューしろ!」COLORFULな心臓のボオル

   ・・弾け出す瞬間のヒョウジョウ(は、)家庭教師

 「スターダムに登れ!ビッグになれ!」

   ・・葉、波・・ゼロ地点からの距離!

   (男ってそうだ・・よ・・・ね、やりたい、ああ!ン!やりたい・・・)

   ・・そうかな、マルチチャンネル!

   ヤクドーす・・る(留、流、)・・アセリー

 でもMOTHER 

  ・・ジンセイ・・って(手、)こんなナチュラーな感じ

 アメリカへとステイして、

 アップダウンな路地裏で、技術を磨きたい。

 ぎこちない俺の指もページ指定

   ・・クロもシロもないイエロオな音楽

   ・・・ノー・ミュウジ/ノオ・ライフ

 だからでっかい舞台に半裸で乳首にピアスして出てみたい、

 素っ頓狂な声・・de・・膝・・ガクガクしてみたい・・井・・

 世界的ギタリストと共(狂)演して・・・・・・

 アウワー 東京!大阪!福岡!北海道!

 ヘイ ロック・ミュージック!ポップ・ミュージック!

  わあ・ホワイ――わあ・ホワイ・・


    6-3 あわてて胸の扉を開いて、覗いてみると、二匹の蜥蜴がいた

      
      鳥に目がつ ていなかった 「い」・・「井戸」

       ・・分散する 木の葉のざわめき 版画のようなもの想いに沈んだとき

        「ついていなかった、」

       ぶよぶよとした小指のリングを眺めながら、

          籠や旗竿があらわすものとして、

        「つきっきりだった、」

         蜷局を巻いているのも、巻かれているのも、
              こま
          ・・・独楽のようだ。



     6-4 柔らかにすべりこむためのナイフ


 目の前の物が見えず、はっきりしない様子だ。

  雲はカーテンをおろす――

   雲は口や鼻を通して空気を吸ったり吐いたりする――

 漆塗の黒い煙突から渦巻いた煙が、人びとだ。古障子のようにひっそりと暮している、影

はとろとろとして、指を唾で濡らして、蝋燭を切った。こもったトンネルの声によってもた

らされる心理的な不安のように、ドラクロワは夢幻の境に遊んだり、幻想におちいったりす

るし、しばしば奇怪なものを見たりすると僕に信じさせる。

  高速移動粒子に数百万電子ボルトのエネルギーを与える加速器、

   あるいは高速移動粒子に数百万電子ボルトのエネルギーを与える加速器・・

 砂は仄白く、踏めばサラサラと微かに音を立てる。
                れんじまど
 向い側の家と同じような二階の櫺子窓から、テレビの音が聞こえてくる。

  燦めきて 遠くに、あざらしの手がある。

   鳥の飛翔を読んだように、突然の素晴らしい理解。

 このフィルムを現像して以下の形態で機能を構築し、無理なく生まれて来る、スケッチ・

ブック。四、五人ほど、いずれも浴衣の女たちが歩いている。別の次元へ、別の秩序界へ、

持って行く。考え抜いた配列で、一冊のスクラップ・ブックの全ページに貼ってあった。

 ・・・虚空にかかる階段、家並は暗く歪んだ軒を連ね・・

 「しばらく車を運転していないと、アクセルとブレーキがごっちゃになることない?」

 (娘の胸がふくらみ始めた・・)

 若い女性の体だけが可能性を秘めているように思えていた。時折さも分別あり気な顰め面

をしてみせたりするけれど、その実まだほんの我ままな子供の時分なので、のろくさくて、

尻重。背中なんかはまるで、梯子があるような具合だ。静けさを破るのは車だ、こだまとな

って尾をひき、怒ったように鳴りひびく。

 (he loaded a cartridge of fresh tape into the tape deck)

 ・・・・・・彼はテープデッキに新しいテープのカートリッジを入れた・・・・・・

 「これから山へ行くのだ」
 
 ・・・女はゆっくりと歩いている。
 、、、、、、、、、、
 二つの道に岐れていた。

 持ち上げられた素足の踵や足の裏などが、文句なしに伝わった。髪の一部分が風を受け、

軽くうしろへとなびいていた。波止場にでもついたかのようにゆるやかに渦巻いていた、さ

ざなみの変形である風は、天使の純潔、高嶺に憩う夜の予兆だ。

 認識理論のスケールを著しく縮小した美がそこにある。

 思いもかけず鏡の中に、あかくなった妹の顔を見出すように。

  風が新聞紙を運ぶのか、ライラックがメロンソーダを運ぶのか――

   夜が女の匂いを運ぶのか、求婚者が花に爪を立てるのか――
 、、、、、、
 想像していて、泣きたいほどの感激が押し寄せてきた。

 動けなかった、と思う。僕は、広い肩、円い項、丈夫な手、ふっくらして日に焼けた頬を

くぼませながら、その中に動かないで立っていた。

  一間先も見えない程のひどい雨脚が、濡らした。

   輝かしいが心の狭い裁判官の少年時代のうまい趣向だ。
 、、、、、、、、、、、
 細い流れが闇にまぎれて、時たま思い出したような鈍い水音を立てている。川にかかる橋

を渡った。幅が五メートルほどの、橋をゆくと、さらさらと白紙の頁が崩れてゆく。夢は半

ばとじた眼の前にゆれ、滑るように流れるそのせせらぎは人を眠りにいざない、虫籠、絵団

扇、蚊帳、青簾、風鈴、葭簀、燈籠、・・光り輝くシャンデリア、華麗なタペストリー・・・、と

きたま鶉が鳴いたり、啄木鳥の木を叩く音が聞えた。

  あをい木 あをい草――

 古綿を千切って捨てたも同然の薄汚れた姿を無気力に曝していた、このアパートのバルコ
             あんぜん
ニーには洗濯物があり、晏然と目に浮かんだ。池州に生えた葦のように小さく揺らぎ出し、

やがてそれは消えた。空との境が何ともつかない色でぼんやりとにじんでゐる夜、病人は治

癒のために体力を浪費しない、運動を極度に制限している。夕暮れの残光とともに浮かびあ

がる横顔の時間。庭さきの松の梢にはもう夕風が何処かへと行ってしまった。代わりに、く

ちなしの甘い香りがし、どことなく巴旦杏の形をおもわせる中洲には?せ細ったポピュラー

ではない楡や榊、そこはかとなくツンとする妙な匂いの花が咲いていた。妖氣、邪氣、瘴氣

。あたりの農家には廃屋や、農業機械や、リヤカーや、軽トラなどがあった。

 まるで風見の鶏が、眠気をさそう病的な冷たい観察の眼をそそぐこんな夏のひと時には、

驟雨のあとの街は輝いて見える。水の入ったグラスと引き換えにしたように、ランニングシ

ャツは濡れている。女はもういない。誰かがその肩に手を載せ、そしてまたその背後に見な

れない車の姿を認めると、僕は口をつぐんでいた。細い首のうえにとまっている蚊は、風の
              、、、、
吹く方向を告げている。おそらく、吸血鬼の彼ならそうだろう。

 土地を耕している百姓たちのむさくるしい納屋。喪中の家の沈黙。金のほしい時の無心。

しかし感情よりも理性に従わなければならなかった食事。田野の泥にまみれている、豚に嗅

ぎまわされている、禽どもに塒を奪われている――非常に多くのネガが、周囲の眼を伏せた

。僕はいない。影だから――ねぇ、僕はいない・・・

 ――機械に挟まれて死にました、とか、餅を咽喉に詰まらせて死にました、というナレー
                        さっき
ションが入る。両足をぶらぶらさせながら、先刻とは打って変った賑やかな様子で、彼は、

とても奇妙な病気に陥り、うまくいっていたものがうまくいかなくなる、ある感じのもと、

成行きに任せていた。

 「ガス爆発しそうな会話がそこでとりおこなわれることを知っているね」

 「たかだか野菜泥棒の分際で!」
       はやがけ
 それは疾駈で来る。

 ――頻りに泥をはねかえす音と足掻く音――

 うすもやが降りていて窓のあかりがほんのりと浮んで見え、冷たくゆらいでいるイメージ

の世界では、もう灰色に染まっている。その時、頭髪は焔となつて闇に靡いたかも知れない

。孤独に窶れ、時に嘯いた彼の心は雪のように結晶する。目醒めた像が歩み出るまで、彼は

滑り落ちていく、ビー玉が一瞬滲み、鮮やかで混じり気のない紫青色の異彩・・


      6-5 空は吸い込まれる、空は複雑で単純で、同じ色である。


 
 初雪のような朝、未完の出会いを・・列車が来るまで、

  「まばゆい光の中に溶けた松火は、コスモスが一むら揺れるようなトンネルの向こうの

   景色」(ひとつのコンタクトレンズが必要だ、)

 その一枚一枚が鱗、フィルムの中におさめられた無数の瞬間展翅。

 列車は二頭のキツネのように思えた。

 蟷螂が馬車であり、犬が海という機械じかけの不自然に仕組まれた足の裏で・・
                                      アクセサリ
  枝は物体のある高みに風船をつけ、皮膚を付け替え、風船という装飾品をつけた。

 ノスタルジックなノイズの監視カメラ。

 淡い肌色の球体が、ことさら甘みの薄く残る色合いで酸を上昇させる、人の姿。

 存在の中心に何を置くか、固有性なき無名の街燈は非人格に――

 空中に身体をあずけるように芝生がある・・遠のかず、くらくさみしい気持ちが、それをシ

ャツやサンダルのように思わせる。カタストロフのあとに、物語は声や波を思わせる。言わ

なくてよかった天皇や、長い歳月の中の、親しく言葉を交わしたもの、夢や、この世を離れ

て久しいものたちが段々近づいてくるのを見る。想いながら、呼び醒ますのを「踊っている

、」という形容をした、花に、その砂に、また自分の影に、日常を超えるものを見た。
      うね
  (地は蜿った。)・・「安かれ!」と悲しみを投げ出すように

  ・・・どうして雪が降る、草をなよやかにすべりおり腹這ういつのまにかまた眠り

 防波堤がえんえんんと続き、自分がどんな心の闇の横糸を時間の波という縦糸に・・・

   ――いま、この身に拡がる満足感がおどけた仕草をする。

 天に立ち昇っていくようだ、美しい自然が、冷房から暖房に切り替えられたように、

 「明るかった・・」

  ・・・おぼつかない、どのような祈りも。

   ・・・予兆のように、日々、新鮮に思い出す、風は優しく。

 根が生えていた、そこに水が落ちていた、

 震える細い脚、牛蒡のような色、紫色の花びらが散っていくような気分、

 ぴちゃぴちゃと床の上にひろがり、・・眠りの中では、きっと眠りの中では

  ――暗紫色の絞め痕になる。(みるみる内に、綻びてゆく・・引き攣りの中で)

   ときどきは白、橙・・ときどきは黒、赤。電灯なら癇癪をあらわす人格を肯定する

    夜――感覚がない 痛み。この深さ、塗料によって見える錯覚としか思えない。 
 やかしらやつを
 八頭八尾のつきあかりをたよりに、何故今になって思い出すか、我・・

 生涯悩ませ続けた、夜はビルのように一瞬ののちに儚くも崩れた・・

 喧騒から離れたように森閑とした。あたりがさらなる深みへと、幻へとゆく、それゆえ

 子守唄の声は聞こえない、冷気はいま白濁する、もっとも原理的な問いのうちに・・
  、、 、、、 、、、
  頭部、胴回り、尻っ尾へと先細りしていく獣道、また峠道。

 雨上がりの林に、まばゆいばかりの年齢を加えて、どこかに躑躅が丘があり、鎮守の森が

あると信じていた。金管楽器が爆発した、磔刑の釘を打ち込まれたように、いま、僕を取り

囲むセロファン、うっとうしいブロック塀も、その低木に隠れている蛇も、いまは神々の膝

の上にいる震えるような胸だけが青い猶予を、光の薄くなる、ああ山頂の冷えた空気を背負

い切れないと認めた、まだ何も視えていないという認識を与えた。頒けがたい神話は、押し

込んでいった下界の人間などというちっぽけな存在の月を有頂天にさせる。蓋の下、沼の中

、やわらかく濁る他愛ない記憶の一齣・・ほどけるような水・・・

 ソラを運んでいます、はじめての鳴き声で、軽い光を粉々にうちくだきながら

  yuraされて、yuraーyuraとゆら され て・・

 心の底から感動することが、解体すること、自らをかろうじて記憶の途絶える本当に一歩

手前まで、花は咲き涸れる、その羽化のような虹のなかで、僕が僕でいられるために昆虫に

なること、小さくなる、大きくなる蝙蝠が耳についている象になること・・必要だ、自分の身

体に心というものが付き合っている間は、爆けて燃える、誰もいない公園、それどころか自

分さえもいない公園が必要なんだ。振り返るのは、音がしない、内臓感覚をさらけだした、

澱のようにこどもがゆめ見ている夜をもとに遠くなる音のない天体が必要なんだ。

 植木屋は、立派な仕事をする。造園計画はありますか、と聞く。

 人々が息を殺し、固唾を呑み、何事が起るかと思って動悸を速めている様子を、余所に、

彼は傷付いた郊外の神社の手水舎。(赤い森の奥にある塔と、どちらが淋しいだろう。)

  大きな木の中に溶け込むイメージで、夢のあとさき、爪先は木の根、・・ピーナッツを食

べるバーのやや内面的な定型みたいに止まらない村。ビーフ・ジャーキーが欲しい!・・でも

、終わらない物語。独自の宇宙が、人間の堤防をうちくずさない限りはそこにあるもの。

 ここらへんには花屋という概念がない。(あなたは危うい月の色を知っているか?)

 ・・・花屋は大抵リヤカーで、露天商、御座を敷いて商売している。都会の花屋とはもちろん

格も規模もちがう。御座、段ボールの上に、ふとしも思う採れたての雰囲気をそこはかとな

くただよわせ、ガードレールの献花に如何ですか?・・夜明けが優しいなら、樹海も優しい。

混沌も、地獄も、もも、も、桃、ブードゥー、梨、無果木、枇杷ッ子、檸檬、林檎、パイナ

ップル。柿、・・こうやって、ただ、こうやって――

 峠のガレージみたいな場所は何故あるのだろう、何故そこで売らねばならぬのだろう、ス

ーパーの前で売ったりするのだろう。

 へそ曲がりが多いからです! 変化、・・電話鳴ってるよ! 

 ただし、その信憑性はかなり薄い。もしもし! 目前・・サハラ

 醤油のようにきわめて薄い可能性。煮詰める前に、書くこと、存在することの習慣。コイ

ン・ランドリーに、また風呂もないアパートに住んでいた銭湯に、そしてフォーク風ジョー

クとして、キャベツをばりぼりかじっていた。たいして面白くない。

 ばりぼりかじっていた! 父を、母を。愛していたって面白くもない。

 ばりぼりかじっていた!・・アパートのシロアリのように、ある共用の手洗い場で、スイカ

をひやし、同居人のだれかが臙脂色のマフラーをさせ、園児がかぶっている黄色い帽子を冠

らせて擬人化をすすめていた。幼稚園児スイカ。たいして面白くもない。

 ・・・というか、よくわからない洞窟や木々が、パラソルを回すように、時間があふれだし、

きれいに光る回り舞台のように、アンテナはその都度ぼうっと暗号を受信し、あるいは傍受

し、情報という水を吸う、その石の根において解析をすすめる。

 「無用の時間だ・・」

 幾時間もじっとしている、両腕というそれを垂らし、椅子の上にぐったりして、悲しい考

えにぼんやり我を忘れている。廃人のように、頭痛も肉体的苦痛もわすれて、あまいかおり

に恋い焦がれている、は・・はなの馥りだ。それは一瞬かぎりなく人に近づき、折り紙でつく

った紙飛行機のように、一瞬ぷわんとひろがる。とうめいなあかい実だ。おどけてわらうき

みよ、I love you oh love you・・・眩しい顔の、君が見えない――すべては平面的か

も知れない、それもいい、ただ、雨があがった、雨がふたたび遠く離れたのだ・・

 「明るい・・」

 その時だけ、同じ色になる。

 その時の適応力に、テーブルも、ガラス瓶も、しなびた僕の血も、同じ色になる。

  ――みんなみんな、眠る町と同じように張り巡らされた神経で、

     同じ色になる――ぎっぢち狭まった壁に、壊れた僕が、

     通り過ぎてた町の顔が。やっぱり空を見上げてる・・・。


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