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カテゴリ:金曜…国井咲也
国井咲也の満巻全席 第376席


「監督に自作を語らせるものではないよ」

国井の映画歴代ベストイレブンに
20年以上レギュラ登板している
『ABYSS(完全版)』の監督/脚本である
J・キャメロン監督が
特別版LD(レーザ・ディスク。
ブルーレイの二世代前のメディア)で自作の
企画意図や映像制作の「目論み」などを語っていた
インタビューの締めくくりにあった言葉だ。

自虐的なコメントというよりも、
読者に気遣ったユーモアとしての
発言もあるだろう。
その「語り」があまりにも長かったからだ。

国井にしてみれば
特別版なるメディアを購入している時点で
「いえ、
 監督の『そういう話』も聞きたいのです」
ということであるから、
文字数が多ければ多いほど
商品としての『特別版』の意味が
しっかりしたものになるわけだけれど、
確かに。

客観すれば、
そういった自作について語るというのは
「監督の言い訳」になってしまうのだという
危惧もあったのだろうと、推察できる。

   kaguya.jpg
で、何の話なのかと言うと
高畑勲監督による
『かぐや姫の物語』な訳であるが、
この作品のパンフレットの冒頭からして
興味深い。

スタジオジブリのリリースとして
「二巨匠新作同時公開」という目論みからか、
宮崎駿監督による『風立ちぬ』の
パンフレット同様にまず、
監督の「企画書」的なものが
掲載されている。
ここでまず宮崎監督との対比の
コントラストが見えて、実に面白い。

極端な言い方をすると
「内側の人」と「外側の人」という印象だ。
もちろんこれは、作品世界/キャラクタに対する
二大巨頭のアプローチの差異。

原作ものであると言うことも無視できないが、
高畑氏のそれはとにかく
「外側から俯瞰している」というものが
核にあるようにみえるからだ。

とはいえ、
フィションとしての『物語』は
一旦横に置いておいて、
作品背景を物語として
読み解こうとするものではない。
『竹取物語』も原作者自体が
謎につつまれており
(紀貫之という見方が大方?)、
『物語』で溢れかえった現代ではよほど
こちらのほうが
「いちげんの客」を想定したとき、
興味を引くのではないかと思えるが、
氏はそうはしていない。
これまた氾濫しているかに見える
お手軽歴史ミステリィではない。

作品で描かれていたのは
女性の「生き様」だ。
当然、時代考証としての視点もある。
当時は現代人の感覚では理解すら難しい
『階級』の社会。
「女性は男に対して意見など言えない」
社会だ。
「言わない」のではない。
「言えない」だ。
正確には
「言うことが許されていない」
社会構造であるということだ。

原作である『竹取物語』自体からして、
貴族をとことん愚弄する構造になっている。

山に入って竹を取っている夫婦の娘が
貴族の申し出に条件をつけたり、
社会の頂点である帝の要望を断るなど、
当時の身分階級社会ではありえない。
断った時点で、即皆殺しだ。(いや、本当に)

さすがに『ジブリ』ワークスだけあって、
そちらの方向に舵を切っている訳ではないから、
物語はあくまで
一人の少女(個人)が思い描いた幸福と
周囲(主に社会的地位にある男性)が考える
幸福との温度差が描かれる。

ここがすごい。
しかもその「幸福」とは
野山で少女がはしゃいで走り回るという
ジブリ印なイメージでもあるわけだがしかし、
本作ではさらにこれを破壊するのだ!

「全速力だけど、逃げるため」
「楽しく走っていたのに、突然やめる」

ここがすごい!
高畑監督すごいことをやっている!

よくよく考えてみると、
この作品自体も『竹取物語』よろしく、
紡がれた当時の背景が
明確に「隠されている」と
見えないだろうか。

「誰もが知っている原作」のアニメ化。
美少女がいきなり現れる、
いわゆる「落ちモノ」。
舞台は自然が残る「山村と地方都市」。
(一応は、だが)お金の心配なく、
「風光明媚な山村でぐだぐだと一日中遊ぶ」

ほら、これだけでもう、
立派な
『現代萌えアニメ』なのである。

ここに
自分の中に真っ先に浮かんだ
「なぜいま『竹取物語』なんですか、
 高畑監督?!」という
疑問の雲は
きれいさっぱり消えたのである。

エンターティメントという言葉が
生まれる前に書かれた古典というのは、
ややもすると「分析」「研究」だけの
視点になりがちだ。

本作は「一人の少女の眼」に
拘ることでいたってシンプルな
成長譚として見る事ができる。
『ノイタミナ』枠にあっても
おかしくない位だ(そうか?)

けれども、『かぐや姫の物語』の
かぐやは成長しない。
することを「許されていない」。
そのニュアンスがラストシーンでも
はっきり読め、確信を得た。

「見たことがないような映像」も
さることながら、
国井視点での
『萌え(燃え)アニメ』としては、
やっぱりそこに痺れてしまう。

いや−、良い物を見た。
年の瀬も迫った時期、
こんなにも凄い物をみてしまったら、
他の作品の印象がすべて
すっとんでしまうのではないか。
少なくとも国井はそう。
すっとんで消えてしまった。

本作の最大の罪は、ここかも。
  higan.jpg


それと、
既に告知されているとおり、
2006年から始まったこのブログは
本年12月31日を持って終了します。
ただ、先方の厚意により
掲示板機能はそのまま残ります。

これはどういう事かというと、
仕事として受注を受けて
「毎日書いてほしい」
「毎日書きます」という事では
無くなるということ。

つまり、「仕事として必ず書く必要はない」
ブログになるという事になる。

メンバーによってどのようにこの
掲示板を利用するのかわからないので
更新頻度もまちまちだ。今まで通りに
更新してゆくメンバもいれば
まったく書かない人もあるだろう。

国井は後者かと思うが、
仕事ではないから、気楽なものなら
あげるかもしれないが…どうだろう(笑)












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最終更新日  2013.12.07 00:03:37


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