札幌の賃貸【逍遙館】の軌跡

「あじさいお好きなのね」とご近所さんから声を掛けられました。

彼女は【逍遙館】の建設の間、二匹のわんこと二匹のにゃんこ共々間借りしたアパートに暮らすおばあちゃま。
都会の片隅、小さなアパートが群れを成しているわが町内ですが、わずかに暮らすお年寄りの心遣いが、味も素っ気も無い風景にやさしい色を添えているのです。

たとえば、ゴミステーションの脇に花壇を作ってお花を育てることで、不法投棄がなくなりました。
風でどこからともなく飛んでくるゴミを「暇だから」と言いながら、こまめに拾ってくれます。



そんなおばあちゃまのおひとりが、エントランスの花の植え替え作業を見に来られました。
「あら～、お花全部自分で育てているの？」
「はい」
「いつも見に来てるのよ。きれいにしているから、庭師が来ているのかと思っていたわ」
「いえいえ、すぐ枯らしてしまうので、試行錯誤しています。」
「中も見せてもらっていい?」
「どうぞ」



というわけで【逍遙館】のパティオまでご案内しました。
「あじさいお好きなのね」

【逍遙館】で紫陽花を育て始めたのは、2010年のオープンのときから。
どの町にも必ずと言って良いほど紫陽花を育てているご家庭があります。
お家の庭だけじゃなく道路わきや公園や学校でもあたりまえのように目にする花。
鉢植えでも地植えでも、わりと簡単に育てることができる花だと思っていました。



ところが2010年にパティオに植えた柏葉紫陽花と白とピンクの紫陽花、丈は年々大きくなれども葉だけがワサワサとおがり、少しも花株を持ちません。
三年目には、パティオで育てるのをやめてエントランスの脇に鉢植えを並べ育てることにしました。
場所を移したことで紫陽花は毎年たくさん花を持つようになりました。
そこで昨年は新たな試みとして、鉢で大きく育てた紫陽花の株を秋のうちにたっぷり肥料を混ぜ込んだパティオの庭土に直接植えてみることにしました。
その目論見は大成功！はじめて40以上花株を付けました！！



「また見に来ていい？道路でうろうろしていても怪しまないでね」と言っておばあちゃまは去って行きました。
「いつでも見に来てくださいね」
わたしが育てた花を楽しみにしてくれる人がいる。
しあわせってこういうことなんですね。

あっ、いつも道路をきれいにしてくれていること、きちんとお礼を言っていなかった。
今度はちゃんと感謝を声にしなくちゃ。

｜逍遙館俱楽部代表｜

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