宮の独り言

2009/03/21(土)18:48

運命の少女7(帝国の兄弟 番外編)

コードギアス(75)

ルルーシュはこの決起に参加する街の者を中央を広場に集めさせた。 徐々に集まり始める人々、おそらくは街のほとんどの者が参加しているのだろう。 そしてこれはルルーシュでさえも予想外の事ではあったが、集団の中に武器職人の者や傭兵の者も数名混じっていた。 傭兵とロロ、ヴィレッタ以外は誰も手に武器を持っていない。 無抵抗の姿勢である。 この状態に危機感を抱く者も少なくはないが、集団の先頭で堂々と腕を組みながら立っているルルーシュの姿が彼等の中から恐怖を打ち消してくれた。 皆無言で領主館を睨んでいた。 やがて領主館の門が開き、十数名の馬に跨った者が広場に駆け込んでくる。 彼等は集まった者の人数を目にして一瞬ギョッと目を見開くが、すぐに威張り切った態度で声を張り上げた。 「これは何だ!すぐ解散せよ!」 先頭のルルーシュは彼等の視線を物もとせずに不敵な笑みを浮かべて言い放つ。 「これは君達への我々の気持ちだ。もはや我々は不正を重ね、私腹を肥やし、他者を貶め、貴族の地位と名誉を汚した君達には従わない」 「な、何だとッ!」 数人のメイジがルルーシュに杖を向けるが、ルルーシュは武器を持たない腕を広げた。 「私を殺しても意味はない。それともここにいる全員を殺すか?無駄だな!この抵抗を止めたければ君達がこの街を出て行けば良い」 「そうだ!出て行け!!」 「ここは俺達の街だ!」 次々に飛び出していく無数の言葉の槍がメイジ達を突き刺していく。 その影でロロは小さく詠唱を続け、ポケットの中に入れた短刀を模した杖で魔法を行使する。 馬の眼前で空気の刃が唸る。 メイジ達はこの集団の中にヴィレッタ以外のメイジがいるとは思っていない。 ゆえに自分達が魔法で攻撃されたとは思わないだろう。 突然幾つかの馬が嘶きながら前足を上げ、数人のメイジが何が起きたのかも分からないまま馬上から振り落とされる。 その現象が彼等に何か異様なものを感じさせ、身動きを取る事を妨げさせた。 ルルーシュはそれ見てほくそ笑む。 後は役者が揃うのを待つだけだ。 「何をやっておる!」 傭兵を引き連れた貴族がやってくる。 毛並みの良い馬に乗った貴族が二人、一人は先ほど追い返したコルチャック男爵である。 もう一人はやや腹の出た恰幅の良い男、豪奢な衣装に身を包み、幾つもの指に宝石の付いた指輪をはめた悪趣味な貴族。 おそらくこれが領主代行の貴族なのだろう。 ルルーシュが一番嫌う、己の権威を必要以上に誇示するタイプの貴族であった。 「ハルトグレン卿!奴がそうです。奴が貴族である私を、あまつさえあなたをも侮辱したのですよ!」 「うむ」 仰々しく頷いて、ハルトグレン卿と呼ばれた男がルルーシュを見た。 「平民ごときが第三皇子殿下からこの領地の管理を任されている儂を侮辱するとは」 「任されている?違うだろう。お前は独断専行を行い不正を重ねているだけだ」 「何ッ!?」 「お前はその第三皇子に会った事があるのか?果たすべき義務を怠り、そこの男爵と共に盗賊と手を組んで私腹を肥やすとは、なかなか大した貴族じゃないか」 「貴様ぁ!あくまでもこの儂を侮辱する気か!」 ハルトグレン卿が勢いよく手を上げ、傭兵と部下のメイジ達に命じる。 「奴を捕えろ!」 だがルルーシュは自分に迫りくる者達を見据えて冷やかに言い放った。 「止めておけ、今こいつ等の命令に従えばお前達も同罪だ。不正は必ず正される。既に盗賊団は一網打尽にされた」 それを聞いてコルチャックが顔色を変え、慌てて顔を手で隠す。 ブラフかもしれない言葉に反応した、既にそれ自体が肯定したも同然だ。 「そんな事があるものか!貴様ら金を払って雇っているのだぞ!働かんか!」 躊躇いお互い顔を見合わせている傭兵とメイジ達。 そこに雇い主への不信感がある事は明らかであった。 その反応に苛立ったハルトグレン卿は自ら杖を手に握ってルルーシュへと向ける。 そろそろ潮時か、そんな事を考えながらルルーシュは決定的な言葉を吐かせる為に口を開いた。 「最後に聞こう、ハルトグレン卿。貴様にとって民とは何だ?貴族である事を何だと思っている?」 「ははッ!平民など我々貴族の奴隷に過ぎん!貴様らは儂らに大人しく金を払っていれば良いのだ!儂らは貴族だぞ!選ばれた特権階級なのだ!」 何とも素晴らしい言葉だ。 それを聞いてルルーシュは笑い出した。 広場に響き渡るルルーシュの哄笑、苛烈な光を宿した瞳がハルトグレン卿を射抜く。 彼の手にいつの間にか細長い杖が握られていた。 それをルルーシュは上空へと向ける。 先端から放たれた魔力の塊が上空で弾け閃光を上げた。 昼間であったが、その光は街の傍で合図を待ち受けていた者達の目にもはっきりと見えた。 彼等は一斉に動き始める。 ある者は飛竜に飛び乗り、またある者は馬に騎乗して街の入り口を目指した。 無数の馬の蹄が奏でる轟音が広場にいる者達の耳に届いて来る。 その騎馬の部隊は瞬く間に広場を囲い込む。 不意に広場に巨大な影が落ちた。 それと同時にやってくる熱風、火竜の咆哮が空に響き渡る。 火竜の背から人影が飛び降りた。 その人影は広場の中央、ルルーシュとハルトグレン卿の間に割って入る形で着地する。 壮麗な騎士服を纏ったその人影がゆっくりと体を起こした。 その顔を見て、ハルトグレン卿が勝ち誇った様にルルーシュを見た。 そして興奮した口調で言う。 「ジェレミア卿!奴らは第三皇子殿下の統治に反逆する者共です!」 流石に数々の武勲を打ち立てたジェレミア・ゴットバルトの顔は知っているらしい。 公然と刃向かう者達を処罰する口実ができたとばかりに、彼はルルーシュの不遜な態度を咎める言い分を次々に口にする。 集まっていた者達の中にもジェレミアの事を知る者はいた。 第三皇子の専任騎士、『烈火のジェレミア』 怯えた空気が漂う。 だがジェレミアはそんな周囲の様子に気を止める様子もなく、己の主へと振り返った。 「と、言っておりますが、私にも分かり易く説明して頂きたいのですが、殿下」 「後でな」 ルルーシュとジェレミアの間で交わされたやり取り。 それを聞いた瞬間に場は凍りつく。 先ほどから煩いほどに叫んでいたハルトグレン卿は顔色を無くして黙り込み、コルチャックは口をパクパクと動かして言葉では無く空気を吐き出している。 街の者は目を見開いてジッとルルーシュを見つめていた。 一人の騎士が差し出したものを受取ってルルーシュはそれを勢いよく広げる。 ふわりとなびく漆黒のマント。 ルルーシュの身を包み込んだ艶やかな布地に銀糸で刺繍された紋章は紛れもなくゲルマニア皇家のもので、 「さて、改めて自己紹介でもしようか?ゲルマニア帝国第三皇子ルルーシュ・ヴィ・ゲルマニアだ」 この瞬間にヴァイレの街を支配していた悪政と、それを貪っていた貴族達の運命が終わりを告げた。 ※どうしても一話に収まりきらず、二話に分割・・・><  このブログの場合は文字数制限が厳しいねw  長い話を書くのも結構難しいんですが、分量を減らすのはもっと難しいという・・・  次で一応ひと段落つく感じです。

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