ここ数年来物騒になった京に、二百何十年だかぶりに江戸から将軍様が天子様にお会いするために、上洛なさる。
その警護のために、やはり江戸からはるばる浪士達が集まってやってきたのは、二年前の二月下旬あたりだった。
ところが何かいざこざがあったらしく、彼らの大半は将軍警護などせぬ間にまた江戸へとんぼ返りしてしまった。
この時、京に残った浪士達がいる。
彼らは、島原からほど近い壬生村の郷士宅を屯所とし、壬生浪士組を名乗って、京の治安維持と称して町中を毎日練り歩き始めた。
なんでも、京都守護職の会津藩のお預かりになったとか。
そのうち、彼らはこの官許の遊廓である島原を訪れるようになった。
その中に、山南もいたのである。
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