谷川俊規のページ

2005/03/12(土)09:56

「WALKABOUT 美しき冒険旅行」3

映画と原作の間(6)

 ようやくDVDで、映画も見直す  ことが出来たので、書きこみます。  木管楽器ディジュリドゥの木霊する  ような独特の音感が響く中、始まる  映画。  自分の記憶に唖然とするのですが、この  ファーストシーンに、重要な独白シーン  で誰が話しているのか、まであれほど10  数年前に真剣に見てたのに、忘れてました。  原作との大きな違いは、異文化に融合が  2週間という期間で出来るか、どうか、  という点です。映画は正確な期間が分る  ようには描いてませんけど。  「クルラ」-アボリジニの言語で、水、を  意味するらしいのですが、「ウォーター」と  この「クルラ」が映画と原作の決定的な違い  で。一言でいうと、原作者のマーシャルは  融合は可能とみており、映画の監督ローグは  不可能と見ている、ということでしょう。  DVD版のカバー裏、紹介文の最後「あの時、  君が望みさえすれば…」、は意味深長です。  映画を見ればすぐ判りますが。思春期の性、  男女、異人種、文化、野生、その他にもあ  りますが、ともかく融合、っていうやつ。  言葉では簡単だけど、現実にはそう簡単には…。  余談ですがDVD版の画質は素晴らしい。見事に  三十年以上前の映画の色を復元してる、と  思います。同時に見れるオリジナルの予告編  の色の抜け方、落ち方を見ると。オーストラ  リアのむき出しの原野が一方の主役なだけに、  これは重要なことで。エリマキトカゲも出て  くるけど、色が落ちてたら興ざめだわな、  確かに。  ジョン・バリーの透明感のある叙情的な音楽  も秀逸で、このアカデミー賞を何度も受賞して  る巨匠さんが、決して金儲け(この映画の  スコアを書いて儲かったとは思えない)ばかり  考えていたのでないのも分ります。  70年ごろのオーストラリア内陸部の風景を  見るだけでも価値あり、と思うし、その後の  例えばピ-ター・ウィア監督の「ラスト・ウェ  ーブ」(これも不遇の一本)などでも使われて  いるデジュリドゥの、ヒーリングだけでない、  本当の使われ方垣間見れる(といっても演奏する  シーンなんて出てこないけどね)のも  ありがたい、という映画。  (下)DVD版のBOXの表とカバー裏。  ブロードウエイとかいうところが出してるんだけど、  こんな高いもん、オレぐらいしか買わん。  おかげで、手に入ったけど(定価・税込みで6090円)

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