母に選んだ服を着る 高度な技術の日本製ニット
数年前、2月位の寒い時期に書いた話です。お正月以降、あんまりやる気はなくて同じような組み合わせの数枚の服を洗い替えしながら着続けていました。先日、また同じ服を手に取ろうとした時。隣に母のために選んだ綺麗な色合いのタートルネックが畳んであるのにふと気がつき、ああ、これ、暖かいはずだから着てみようかなと手にとりました。ニットの産地で作られたと思われる国産の二重編みジャージーのタートルネックです。文字で説明するとわかりにくいけど同系色の糸で柄を編み出し、反対色のアクセントを入れたとてもなおしゃれなデザインです。一枚のニットなのに表は数色の色糸で模様を編み出しながら裏はその糸を出さずに一色の糸でメリヤス編みというのは非常に高度な二重編みの技術だからできる技。二重編みというと二枚重なっているようですがそうではなくて、表と裏と違う編み方で一枚になっているという複雑な編み方なんです。日本の繊細な織物編み物技術は素晴らしいと思います。二重編みの利点は見た目の美しさだけではありません。二重になっているので空気を含み薄手の服なのに暖かいのも利点の一つですが、二重編みにすることによって、通常なら模様編みで裏地に出るざらつきを裏側は無地のスムースな編み地にして着心地を良くするという気配りが素晴らしいんです。暖かく、スムースで着やすく高齢者にも似合う華やかさがあるので迷わず母に選んだタートルネックジャージーですが、オレンジ色が入っているのでハロウィーンの時期にも母にデイサービスに着てもらっていました。デイサービスでもハロウィーンのイベントをするので、お店で見つけたネコ耳の可愛らしい髪留めもタートルネックと色合いが合うし軽いので、母につけてもらいました。手鏡で母に見てもらうと顔を動かして、頭全体を見てまんざらではないようでした。母は脳梗塞で失語症になっていて考えた事や複雑な話が口に出せずとっさの短い言葉しか言えなかったので、ネコ耳をどう思ったのかネコ耳というものさえわかったのかどうか何も言わなかったのでわかりませんでしたが、今考えてみると頭を動かして鏡をじっと見ていたので多分わかっていたのだと思います。痛くはないかと聞くと「はい」と言いこれでいい?と聞くとうなずいていたので2回ほどつけて行って、デイサービスの介護士さん達に喜んでもらってました。親切なスタッフさん達に「可愛いですね」と笑顔で言われる事が母への刺激になったはずなので良かったなと思います。そんな思い出がある母の洋服、着たらやはり二重織のせいで軽くて薄手なのに暖かく、着てもらって良かったと思いました。母の服は年配向けのものが多いけれど大事に着ていこうと思います。