週刊 読書案内 岸政彦「調査する人生」(岩波書店)
岸政彦「調査する人生」(岩波書店) 三宮の古書店の棚で見つけました。岸政彦という社会学者に、一時ハマっていましたが、この本の表紙に並んでいるお名前に「面白そう!」 並んでいるのは打越正行、齋藤直子、丸山里美、石岡丈昇、上間陽子、朴沙羅の6人です。面白そうでしょ(笑)。 読んだのは、岸政彦がホストとして、この6人の学者さんたちと対談した内容を書籍化した「調査する人生」(岩波書店)です。所謂、対談集ですね。面白かったです(笑)。最年長の岸政彦が1967年生まれで、59歳でしょうか、1984年生まれの朴 沙羅が最年少、42歳ですね。 読み終えて、書名を見直して、ナルホドそうか、でした。腰巻に「人生をかけて、相手の人生を聞く」 こうあります。 この本に登場するのは7人の社会学者です。それぞれ大学とかの先生だったりです。彼らの学問の方法は聞き取り調査です。そこでは、学者による「研究・調査」の対象として出会う、それぞれの人が生活の実感を語っています。まさに、それぞれの人の人生が語られるわけですね。でも、この対談集を読み続けることがやめられなくなる理由は、人々の人生を聞いてきて、今、対談をしているた人の言葉に、聞いている人のがわの、だから、学者さんたち自身の人生が聞こえてくると感じさせてくれるところですね。 たとえば打越正行であれば、「ヤンキーと地元――解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち」(ちくま文庫)という代表作がありますが、沖縄のヤンキーの青年たちとヤンキー生活をする中で、心を許してくれたヤンキーのニーチャンたちに直接話を聴くという方法で徹底しています。参与観察というそうですが、一緒にヤンキー生活をするという聞き取り方です。 斎藤直子であれば「結婚差別の社会学」(勁草書房)にまとめられている、差別の体験者。丸山里美は女性ホームレス。石岡丈昇はフィリピンのボクサー。上間陽子であれば「裸足で逃げる――沖縄の夜の街の少女たち」(太田出版)、「海をあげる」(筑摩書房)が有名ですが、沖縄の子供たち。朴沙羅は「家(チベ)の歴史を書く」(ちくま文庫)にまとめられている、在日コリアン一世の、オジサン、オバサン。 皆さん、それぞれの人たちと出会って、それを記録し、その体験で考えたことを本にしている人たちです。もちろん、学者さんたちですから学問として整理されている本ばかりです。でも、この対談で語られていることは、本にする前に、それぞれの学者さんたちが見つけた、彼ら自身の人生ですね。皆さん、真摯に自分と向き合っていらっしゃるのにボクは感心しました。引用はしませんが、登場する学者さんたちのプロフィールを貼っておきます。司会をしている岸政彦の著作をはじめ、面白い本山盛りです。 岸 政彦(1967年)京都大学大学院文学研究科教授。社会学。 沖縄社会研究、生活史、社会調査方法論。著作 『同化と他者化――戦後沖縄の本土就職者たち』(ナカニシヤ出版)、『街の人生』(勁草書房)、『断片的なものの社会学』(朝日出版社)、『質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学』(石岡丈昇・丸山里美と共著、有斐閣ストゥディア)、『はじめての沖縄』(新曜社)、『マンゴーと手榴弾――生活史の理論』(勁草書房)、『社会学はどこから来てどこへ行くのか』(北田暁大・筒井淳也・稲葉振一郎と共著、有斐閣)、『100分de名著ブルデュー「ディスタンクシオン」』(NHK出版)、『地元を生きる――沖縄的共同性の社会学』(打越正行・上原健太郎・上間陽子と共著、ナカニシヤ出版)、『生活史論集』(編著、ナカニシヤ出版)、『東京の生活史』(編著、筑摩書房)、『沖縄の生活史』(石原昌家と共同監修、沖縄タイムス社編みすず書房)、『大阪の生活史』(編著、筑摩書房)。「岩波講座社会学」編集委員。 打越正行(1979年~2024年)和光大学現代人間学部講師。社会学。 沖縄、参与観察法。著書 『ヤンキーと地元――解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち』(ちくま文庫)、『最強の社会調査入門――これから質的調査をはじめる人のために』(前田拓也ほか編、ナカニシヤ出版)、『地元を生きる――沖縄的共同性の社会学』(岸 政彦・上原健太郎・上間陽子と共著、ナカニシヤ出版)、『〈生活―文脈〉理解のすすめ――他者と生きる日常生活に向けて』(宮内洋・松宮朝・新藤慶と共著、北大路書房)。 齋藤直子(1973年)大阪教育大学総合教育系特任准教授。社会学。 部落問題研究、家族社会学。著書『結婚差別の社会学』(勁草書房)、『入門家族社会学』(共著、新泉社)、Educaciones y Racismos, Reflexiones y casos(共著、el Centro Universitario del Norte en Universidad de Guadalajara y Universidad Pedagógica Nacional,)、『恋愛社会学――多様化する親密な関係に接近する』(共著、ナカニシヤ出版) 丸山里美(1976年)京都大学大学院文学研究科准教授。社会学。 ホームレス、貧困、ジェンダー研究、福祉社会学。著書 『女性ホームレスとして生きる――貧困と排除の社会学』(世界思想社増補新装版)、『質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学』(岸 政彦・石岡丈昇と共著、有斐閣ストゥディア)、『貧困問題の新地平――〈もやい〉の相談活動の軌跡』(編著、旬報社)、『Living on the Streets in Japan: Homeless Women Break their Silence』(Trans Pacific Press)、『女性たちで子を産み育てるということ――精子提供による家族づくり』(牟田和恵・岡野八代と共著、白澤社)「岩波講座 社会学」編集委員 石岡丈昇(1977年)日本大学文理学部教授。社会学。 身体文化論、都市エスノグラフィー研究。著書 『ローカルボクサーと貧困世界――マニラのボクシングジムにみる身体文化』(世界思想社・増補新装版)『Southern Hemisphere Ethnographies of Space, Place, and Time』(共著、R. Rinehart eds., Peter Lang)、『タイミングの社会学――ディテールを書くエスノグラフィー』(青土社)、『エスノグラフィ入門』(ちくま新書)上間陽子(1972年)琉球大学教育学研究科教授。 教育学。著書 『裸足で逃げる――沖縄の夜の街の少女たち』(太田出版)、『海をあげる』(筑摩書房)、『沖縄子どもの貧困白書』(加藤彰彦・鎌田佐多子・金城隆一・小田切忠人と共編、かもがわ出版)、『誰も置き去りにしない社会へ――貧困・格差の現場から』(平松知子ほかと共著、新日本出版社)、『地元を生きる――沖縄的共同性の社会学』(岸政彦・打越正行・上原健太郎と共著、ナカニシヤ出版)、『復帰50年沖縄子ども白書2022』(川武啓介・北上田源・島村聡・二宮千賀子・山野良一・横江崇と共編、かもがわ出版) 朴 沙羅(1984年)ヘルシンキ大学文学部講師。社会学。 ナショナリズム研究、社会調査方法論。著作『外国人をつくりだす――戦後日本における「密航」と入国管理制度の運用』(ナカニシヤ出版)、『家の歴史を書く』(ちくま文庫)、『ヘルシンキ 生活の練習』(ちくま文庫)、『ヘルシンキ 生活の練習は続く』(筑摩書房)、『記憶を語る、歴史を書く――オーラルヒストリーと社会調査』(有斐閣) 2026-no077-1292追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)