2024/01/02(火)01:49
週刊 マンガ便 鈴ノ木ユウ「コウノドリ(1)」(講談社)
鈴ノ木ユウ「コウノドリ(1)」(講談社)
十二月に入って、留守中にやって来たヤサイクンの「マンガ宅急便」ですが、なかなか、アタリ!が多かったですね。小林まことの「女子柔道部物語」、原泰久「キングダム」最新号、そして、これ、鈴ノ木ユウ「コウノドリ」と山盛りです。
主人公は産科のお医者さんでジャズ・ピアニスト。2013年に連載開始で、ただ今、28巻、進行中だそうです。この間、テレビドラマにもなって、世間では、世の中のことを何にも知らないとシマクマ君が思っている女子大生でも知っている、当たり前の人気漫画であるらしいのですが、テレビも見ないし世間様との付き合いも、ほぼ、無い徘徊老人は知らなかったというわけです。なにげなく手に取って、ちょっと引きました。
「なんですか、これは?」
「鴻鳥サクラ」、名前がまず、「はてな?」でしょ?絵は微妙なので、イケメンなのかどうかはともかく、ジャズピアニスト「ベイビィ」がアンコールで舞台から突然消えるんですね。病院で緊急出産手術というわけなんです。フツーは、ここで終るのですが、次のページでこんな展開。
「でも未受診なのは母親のせいで、お腹の赤ちゃんは何も悪くないだろ」 これが、最初の「あれっ?」
最近、産婦人科の医師である増崎英明さんに最相葉月さんがインタビューした「胎児のはなし」(ミシマ社)という本を読んで、いたく感動して、あちこちで「付け刃」を振り回しているのですが、その「付け刃」に、このマンガが繰り出してくる「妊娠」と「出産」の話題が次々とジャストミートし始めるんですよね。
こう言っては何ですが、私こと、自称徘徊老人シマクマ君は65歳を越えています。ここからの人生で、誰が考えても、まず、関係のない出来事が、妊娠・出産なんですね。なのにどうして?
「胎児のはなし」を読んだ、一番大きな収穫というか、なるほどそうか!というのが、いま生きている人間にとって、死んだらどうなるかと、これから生まれる赤ちゃんは、どうやってこの世にやってくるのかという二つの領域は、相変わらず神秘の領域として残されているということだったんですよね。
まあ、とはいいながら、死んだらどうなるかは、個人的にはですが、ただの「死にッきり」で結論が出ているわけで、やっぱり、興味がわくのは、「赤ちゃん」の神秘ですね、というわけなのです、きっと。
ページを繰っていくと、下手をすると、きわどいというか、人間のエゴが噴出しかねないこのテーマに対する、マンガ家のスタンスというのでしょうか、構えという方がいいのかな、に、どうも、ちょっとほっておけない独特なものがあるのですね。そこのところに惹かれてしまったようです。止まらなくなりました。
というわけで、たとえば、第1巻の名場面はこれです。
妊娠23週の超早産児と父親との対面のシーンです。
この二人のの出会いまでの経緯が、母親と胎児、妻と夫、そして、担当医師と先輩医師という関係を三本の、少し太い経糸(たていと)にして描かれています。そこに、それぞれの家族、産科病棟職員、患者と医者、医療技術など、様々な横糸が張り巡らされ、破水、切迫流産、帝王切開と畳みかけるように出産へと緊張の展開です。読んでいて息つくひまもない印象です。
そして、このシーンなんですね。ここまで、けっこう緊張しながら読んできた徘徊老人は、マンガの登場人物の涙に、思わずもらい泣きというわけでした。
「胎児のはなし」の中で、増崎先生は出産に立ち会った男性は泣くものだとおっしゃっていましたが、年のせいでしょうか、やたら涙もろくなっていることは認めますが、マンガの対面シーンで泣くとはねえ、困ったものです。
第二巻以降については、おいおい、名場面をご案内しよう目論んでおります。ああ、それから「胎児のはなし」(ミシマ社)・「女子柔道部物語」・「キングダム 56巻」はそれぞれ題名をクリックしてみてください。追記2022・09・24
「コロナ編」を読みました。で、昔の感想を修繕しています。
追記2020・01・23
「コウノドリ19」の感想書きました。クリックしてみてください。
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